雨飾山への旅 その1
ご無沙汰である。前回の八甲田から一年が経ってしまった。もちろんちょこちょこ山は行っている。
7月末にはオットと八甲田山再訪もした。一度登った山は多少気楽に登れて、前回とは違う楽しさがあった。
その翌日に行った奥入瀬渓流が素晴らしかった。
奥入瀬渓流は高校の修学旅行で来て、団体で歩きながら"あぁここはもう一度ゆっくり歩きたいなぁ"と思ったのを覚えている。大体がぼんやりとした学生時代だったのだけど、この時の印象はなんだか強く残っていた。そこをもう何十年も経ってオットとのんびり歩くのは、かなり感慨深いものがあった。
あの未来の事など何も思い描けていない、それでいて夢見がちな目立たないただの高校生の私が、かつてすぐそこを歩いていたのだ。そうしてその後も川はほぼ変わらず流れ続けていたのだ。さらにもう何十年か先には、きっともう私はいない。それでも川は流れていく。願わくはこのまま綺麗なままでいてほしいと、歩きながら考えていた。
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さて雨飾山である。ロマンチックな名前だ。雨を飾る山。百名山の一覧で見かけた時から気になっていた。長野県と新潟県の境にある。
久しぶりに山登り友達Kちゃんと、どこか登ろうーという話になった時、この山が浮かんだ。日程は、8月12日前泊して13日登山となった。土日なのでなかなか宿がなく、なんとか麓の山田旅館という宿が取れた。
東京から車で片道4時間以上かかる。のんびり交代でやればいいかーと当初考えていたのだけど、ふと気付くとお盆ではないか。それでなくても中央道の週末の混み具合は相当なのに、これは殺人的な渋滞になるに違いない(おおげさ)、とふんだのは、出かける10日前の事。もっと早く気づけよという話だけど、2人とも基本のんびりしてるので、仕方ない。
急遽新幹線とレンタカーを予約する。そこそこ大変であったが、時間とお金に物を言わして(おお)、往復豪華シートのグランクロスというオソロシイことになった。それしか無いと言うのだもの・・。乗ってみたかったのだもの・・・。
12日東京駅北陸新幹線改札前で10時、待ち合わせした。すごい人。現れたKちゃん、荷物は私の2割増し+パンのいっばい入った紙袋。一体いつ食べるんだ。
素敵シートに収まって、しばらくしたらフルーツサンドの片割れが手渡される。これは断らなかったが、このあと"これ食べない?""いらない""これは?""いらない"という会話が旅の間繰り広げられた。山の非常食という名のおやつも、大きな袋にひとつ、縦走するんですか?というくらいあった。
豪華シートに包まれて、うふふとなっているうち、あっという間に飯山駅に着く。長野駅と糸魚川駅の間にある小さな新しい駅だ。ここでしかレンタカー借りられなかったのだ。宿まで2時間くらいかかってしまうが、観光しながら向かう事にする。
まずはヒスイ海岸を目指してみる。小一時間北に走るときれいな海が見えてきた。海岸に降り立つと日差しが厳しい。Kちゃんはヒスイ探しに余念がない。
あまりの暑さに早々に引き上げ、途中の看板で見かけた「フォッサマグナミュージアム」という所に行ってみる。Kちゃんは、これはかなりショボい施設ではないかと大いに懸念を示すが、火山・地殻変動などに目がない私は、行ってみなければわからないではないか!と主張し、たまたまハンドルを握っていたので強制連行する。
こじんまりとはしているが、ここはなかなか楽しかった。なにせ石が多い。石好きにはたまらないだろう。Kちゃんも楽しんでいたようで良かった。親に強制連行されたらしい小学生低学年の子供は、"つまんないよー、帰ろうよー"と連呼していたが。
盛り上がったのは、この後だ。では宿へーと車を走らせていたら、"フォッサマグナパーク"の旗が路肩にはためいていたのだ。ミュージアムの次はパーク?ちょっと寄ってみようかーと整備された駐車場に車を止め、西日のキツイ中しばし林道を歩いてみる。と、そこにこんな崖が。
ここはこんなところで、きれいな断層が目の前にくっきりと見えているのだ。ゆっくりと地層は動き、先ほどのミュージアムで見た様々な石を生み出し、地形を作り出してきた。私たちの登る山は、この地層の何万年何億年という長い大きな動きによって作られたものなのだー。2人で、んふーーっと鼻息も荒く興奮しつつ、本日の宿に向かったのだった。
この宿がまた趣きありまくりで素敵だった。「妙高戸隠連山国立公園 環境省指定 国民保養温泉地 山田旅館」。古い建物だったけれど、宿の人たちが親切で居心地良かった。食堂で美味しいご飯を食べている間中、後ろでおじさんが宿の人と、山の遭難話をずっとしているのが不穏だったけど。ひと風呂浴びて、早々にお布団にもぐったのだった。