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【写真解説】水面に舞う 後編

OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO

前回の記事

の続きになります。

個体密度と川幅

カワトンボの縄張り争いを撮影するためには、縄張り争いが発生しやすい条件を知ることが重要になります。
まずは場所選びですが、個体数が多くて川幅が広すぎない場所が適しています。要するに個体密度が高いことがひとつのポイントになります。
しかしここで注意したいのが、細流で水面の高低差があると、個体数が多くても縄張りが地形によって区切られてしまってオス同士の干渉が起こりにくくなっていることがあるという点です。
あちこちにオスはいるけど、それぞれ独立した水面に縄張りを張っているパターンでは、なかなか争いは見られません。

メスと産卵床

続いて重要なのはメスが産卵する場所があり、実際に産卵が行われていることです。
トンボ観察の基本ですね。
ニホンカワトンボの場合、産卵床周辺で縄張りを張っているオスは他よりも活性が高めで、侵入者が現れなくとも時々産卵床周辺を探雌飛翔する様子が観察できます。
実際に産卵中のメスがいるとさらに活性が上がり、頻繁に飛び立つので他のオスとの接触が増えてシャッターチャンスにつながります。

時間帯による活性の変化

私が観察しているポイントでは、朝9時前後ぐらいから水面近くで活動する活性の高い個体が増え始め、10時〜13時くらいが最も活動的になります。
活性が上がる時間帯は地域やその日の天気、日当たりなどによって変わります。
その時間帯を知っておくことはかなり重要だと思います。

撮りやすい個体を見つける

これが最重要かもしれません。産卵床周辺の水面近くで活動しているオスをよく観察して、縄張りの範囲や、飛び出す方向、よく静止する場所などを覚えて、「こっちのこの個体が探雌飛翔を始めたらこっち側に飛んで、この個体が反応して飛び出すからこのあたりでカチ合うだろう」といった感じで脳内でシミュレートし、カメラの高さやアングル、ピント位置を事前に決めておくと成功率が格段に上がります。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
前編では主に撮り方、後編では撮るまでの下準備的な内容になりましたが、いかがだったでしょうか。
私の経験則ですが、野生生物を上手く撮る上での最重要事項は、よく観察することだと思います。
トンボは種ごとに異なる行動パターンがあり、それを熟知しているかどうかが、写真の出来に直結します。


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