【写真解説】水面に舞う 前編
5月の小川にて、ニホンカワトンボの縄張り争いを撮影しました。
カワトンボの飛翔
カワトンボの仲間は基本的には決まった場所に静止しながら縄張りを見張るタイプのトンボで、時折飛び立って縄張り内にメスや侵入者がいないか見回りをして、また定位置に戻って静止します。
ヤンマのように長時間飛び続けるわけでもなく、ホバリングをするわけでもないため、どのタイミングで撮ればいいのかよくわからないトンボですが、観察しているとあることに気づきました。
それは、オス同士が出会い、縄張り争いが起きたときは、普段のパトロールよりもはるかに長い時間飛び続けるということです。
観察して、動きを予測する
ホバリングをしないタイプのトンボの飛翔を撮影するときは、基本的に待ち伏せスタイルでの撮影になります。
あらかじめマニュアルフォーカスでピント位置を決めておいて、トンボが射程内に入ったらフレームに入れて撮影するというやり方です。
探雌中のオニヤンマやコヤマトンボなど、ほぼ決まったルートを往復飛翔するタイプのトンボに使える撮り方ですが、カワトンボの場合は往復飛翔しているわけではないので、その時の状況に応じて、トンボの動きを予測する必要があります。
私のやり方は、縄張り形成中のオスと侵入者がかち合う位置を予測するやり方です。
カワトンボのオス同士が出会うと、必ずお互い正面から近づいて睨み合う瞬間があります。
この瞬間は一瞬ですがホバリングに近い飛び方になり、シャッターチャンスになります。
私はオスの縄張りを見ながら侵入者がやってくるのを待ち、侵入者が縄張りに近づいてきたら、どのタイミングでオスが気付いて飛び出すかを予測しつつ、両者が出会うであろう場所にカメラを向けて待ちます。
両者がフレームに入ったと思ったらファインダーを覗いてMFでピント位置を調整し、最終的にはAF-ONボタンを押します。
オニヤンマやコヤマトンボなどは、飛翔速度が速く、フレームに入ってからファインダーを覗く余裕はありません。
これらのトンボを撮る際は、レンズから何cmぐらいの位置にピントがきているかを覚えておいて、トンボがきたらカメラを向けて、ピントの位置にトンボがきたと思ったらノーファインダーでシャッターを切ります。
一方カワトンボの場合は飛翔速度自体はそれほど速くないため、フレーミングの確認と、最終的なピント合わせの余裕があります。
om-1はピントの移動距離が短いときはかなりの速さでピントを合わせてくれます。
なので手動のMFでは間に合わない分をAFに任せています。
ピントがきたと思ったら、トンボがフレームから外れないように追いかけつつ、後はひたすら連写します。
トンボの向きとカメラの向き
今回の写真を見てもらうとわかるように、2頭のトンボが争う様子を撮るには両方のトンボがカメラに対して横向きに並ぶようにカメラを構えなければなりません。
カワトンボの場合、川の流れを基準に構えると上手くいくことが多いです。
要するに、カワトンボは川の流れに対して垂直または並行を向いていることが多いため、カメラもそれに合わせて構えるということです。
今回は背景に緑を入れたかったということもあり、流れに対して垂直に構えて撮りました。
ピントを面で理解する
今回のように、2頭のトンボにピントを合わせたい場合、被写界深度について理解する必要があります。
被写界深度(ピントが合っている範囲)はレンズ面に対して並行に存在しているため、2頭のトンボがレンズに対して並行に存在している時でなければ両方にピントをもってくることはできません。
そのため、マニュアルフォーカスでピントを追い込む時は、トンボに対するカメラの角度も微調整する必要があります。
この時は絞り値が開放値のf2.8だったこともあり、2頭両方に完全にピントが来ているカットは残念ながらありませんでしたが、今回の記事の採用カットを含む4カットは一頭には完全にピントが来て、もう一頭にも大体ピントが来ているような写真を撮ることができました。
カメラの設定
このときはシャッタースピード優先モードを使っていましたが、マニュアルモードでもいいと思います。
飛んでいるトンボを撮る時のシャッタースピードの基準値は1/1000秒だと以前の記事で書きましたが、カワトンボは例外になります。
カワトンボは色鮮やかな翅をしっかりと止めて撮りたいので、可能な限りシャッタースピードは速くします。
絞りを開放にして、あとはISO感度との相談になります。
この時は1/2000秒くらいが限界で、見て分かる通り翅は完全に止まっていません。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
カワトンボの飛翔撮影について書きたいことはまだまだたくさんあります。
続きは後編をお待ちください。
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