チョコレートとカカオの歴史
チョコレートの歴史を調べ始めて、まず驚いたのがチョコレートやチョコレートの原料であるカカオの起源です。歴史が3000年以上あり、日本の縄文時代からチョコレートは利用されていました。そして、カカオの使用で最も古い歴史があるのがメキシコです。メキシコ湾岸沿いに中南米最古の文明を築いたオルメカ族が、自生していたカカオを栽培し、その苦く滋養のある実を「KAKAWA(カカワ)」と名付けました。その後、マヤ族、トルテカ族、アステカ族もカカオの利用を受け継ぎ、様々な加工法が生み出されました。
カカオの3つの使い道
カカオは主に飲み物、儀式、通貨の3つの用途で使われていました。マヤ族が初めてカカオを使用し、スパイスが効いた苦味のある飲み物を作り、その飲み物を神への捧げものとして儀式で使うようになりました。その次に現れたトルテカ族とアステカ族にもこの飲み物は受け継がれ「xocoatl(ショコアトル)」(xoco=苦い、atl=水)と名付けれました。
※古代マヤ文明の都市カラクムルから見つかった絵。カカオ飲料を作って飲む様子が描かれている。(PHOTOGRAPH BY KENNETH GARRET, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
また、神に捧げるだけでなく、上流階級の人たちは、このカカオの豆をすりつぶして粉状にしたものに水を加えた、冷たいチョコレートドリンクを飲んでいました。スペインに植民地化されるため砂糖がなかったため、苦い飲み物でしたが、滋養に富んでいるということで尊ばれていました。また、彼らはバニラやハチミツ、花やアガベなどの様々なスパイスや味を試しており、そのメニューが今でも残っています。
また、カカオは通貨としても使われていました。例えば、七面鳥一匹が100粒のカカオ豆、アボガド1個が3粒のカカオ豆で取引されていたとのことです。カカオ豆のクオリティによっても取引できるアイテムが違ったらしいです。
メキシコ人の生活に必要不可欠なカカオ
3000年以上の歴史があるカカオは、メキシコ人の生活や人生、文化、伝統と切っても切れない大切な存在です。メキシコ人の主食であり長い歴史を持つコーン(トウモロコシ)とカカオは、両方とも日常生活で食されるのはもちろん、現代でも出産のお祝いや結婚式など多くの儀式で使われています。日光の下で育つコーンと日陰で育つカカオは、二つで一つの相補的な関係で、まさに陰陽関係にあります。日本人にとってのお米や大豆ぐらい、もしくはそれ以上に深い繋がりのある食べ物なのです。
メキシコ人、特に先住民族の人にとって、カカオは単なる食べ物ではなく神聖な食べ物であり、自分と神様や祖先、大地、そしてコミュニティを繋ぐための、とても大切なツールでもあります。メキシコのチョコレートプロジェクトのパートナーであるEdiは、カカオ講座の中でこう言っていました。
"For us, cacao is a sacred seed that has accompanied us thought our history. We don't consider it as a commodity. For us, for indigenous people, food is a social fabric of relationship of mutual support and reciprocity."
「私たちにとってカカオは、歴史を共にしてきた神聖な種なので、ただの商品として扱うことはしません。私たち先住民にとって、(カカオを含むすべての)食べ物は、お互いの関係を支え合うための社会の中の大切な要素の一つなのです。」