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谷川俊太郎を読んで

Kindleで公開されていた谷川俊太郎の詩集を読み世界観に浸った。
詩集を読むのは初めてだったが短い言葉の中に人間や宇宙の本質が凝縮されていて、言葉の深さに引き込まれた。この詩集で心打たれたのが「万有引力」、「四千の日と夜」、そして「生きる」

「万有引力」は、冒頭から圧倒的な言葉の力で私を惹きつけた。

万有引力とは ひき合う孤独の力である
宇宙はひずんでいる それ故みんなはもとめ合う
二十億光年の孤独に 僕は思わずくしゃみをした

「万有引力とは ひき合う孤独の力である」という一節、孤独がただの痛みや悲しみではなく、誰かを求め、つながりを欲する力と深く共感した。詩集の31頁でこの言葉に出会った時、「万有引力」とは、まさにこの詩そのものだった。
私の心は、宇宙の法則、重力のように自然と惹かれたのだ。
宇宙規模の孤独を描きながら、そこに希望やユーモアを忍ばせた結末
「僕は思わずくしゃみをした」には壮大さの中に潜む人間らしく儚さを感じる。

一方、「四千の日と夜」は、全く異なる形で心に響く詩だった。

四千の日と夜が
君を抱いて僕を苦しめた
君を待ち僕をあきらめさせた

時間と愛の重さが直球で描かれている。四千の日と夜という数字が、愛を追い続ける中で積み上がる日々の孤独や感情を圧倒的な実感として感じられる。読みながら、自分の過去の恋愛や待ち続ける時間の苦しさが鮮明に重なった。

そして「生きる」では、言葉数の少なさが生きることの根源的な意味を鮮明に問いかけている。

生きているということ
今生きているということ
それは喉がかわくということ


「喉がかわく」という、何気ない日常に、生きる実感が凝縮されている。この詩を読んで、ただ毎日をこなすような日常に埋もれそうになっていた自分が馬鹿馬鹿しく思えた。
谷川俊太郎は、日常の平凡さの中に普遍的な真理を見出したのだと思う。


全体を通じて、谷川俊太郎の詩は「普遍性」と「身近さ」を併せ持っていることに気づいた。壮大な宇宙の話をしているようで、人間の心の中の孤独や愛、生きることの意味を語っている。読んでいると、自分が広い宇宙の中にぽつんと浮かんでいるような感覚と、そっと寄り添われているような感覚が同時に押し寄せてくる。

詩や言葉の魅力は、その言葉が読者によって異なる形になる事だと思う。
この詩集に触れることで、私自身も孤独や愛、そして日常の尊さを考え想像した。谷川俊太郎の言葉はまさに「ひき合う力」を持っている。
現代人は多忙で文字に向き合う時間が減っているけれど、詩集は短い中に感動を詰め込んでいる。是非一度歌集を読んで見て欲しい。

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