台湾で日本統治時代を生きてきた、相撲好きのTおじいちゃんの話。
今月17〜20日に訪れた台湾のこと、何回かに分けて書いていこうと思います。感じたことが、たくさんあるの。
まず、今回台湾に行ったのは、ある目的があった。それは「株式会社 縁」主催の台湾ツアーに参加するため。で、なんでそのツアーに申し込んだのかというと、日本統治時代から生きてきた方々との交流という、貴重な機会が含まれているツアーだったからなんです。
2年ほど前、日本で活動しているある台湾人の方から「台湾のお年寄りの方々は『台湾は祖国、日本は母国』という程に日本を愛し尊敬している」という話を聞いたことがあって。
以前から「台湾は親日らしい」ということは知っていたものの、それ程に日本を愛していたなんて…とそのとき衝撃を受け、それ以来、日本と台湾の関係について知りたいと思っていました。
だから、このツアーを知って、すぐ行こうと決めた。
今年は戦後70年。日本統治時代から生きている方々はもうかなりのご高齢。私たちは、大東亜戦争を経験した方から直接お話が聞ける、最後の世代。だから、この貴重の機会を逃したくなかったの。
まるで日本人のような、
かわいくてカッコイイおじいちゃんおばあちゃん。
その方々と会食したのは、台南にある中華飯店。戦中・戦後と大変な時代を生きてきた方…どんな方なんだろう?だいいち交流するって、通訳を通すのかな?と思ってドキドキしていました。
そんな私の目の前に現れたのは、ニコニコしたおじいちゃん・おばあちゃん。私たちが来たことを、まるで孫のように嬉しそうに迎えてくれました。
なんかね、もう会った瞬間に、涙が溢れそうになった。
実際に日本統治下に生きてきた方々が、今、目の前にいる。それだけで、歴史の重みというか、あぁ、本当にこういう時代があって、こうして台湾で生きている方がいるんだ、ということが実感として胸に迫ってきた。
そして、驚いたことに、日本語は母国語のようにペラペラで、通訳なんてまるで必要なく。
大変な経験をされているのに、それを感じさせない笑顔と穏やかな雰囲気の、かわいらしいおじいちゃんおばあちゃんでした。と同時に、80~90代にも関わらず、矍鑠として、今でも台湾独立のために活動している、格好よく素敵なおじいちゃんおばあちゃんでした。
私は、91歳のTおじいちゃんの隣に座って、たくさんお話をうかがいました。台湾の歴史云々の前に、このおじいちゃんのことをお伝えしたいなと思います。
相撲が大好きなTおじいちゃん
Tさんは、91歳。笑顔がとってもにこやかで、穏やかな話し方をされます。
日本が台湾を統治していたのは、日清戦争後の1895年から、大東亜戦争終戦の1945年まで。Tさんは日本統治時代に生まれ、小学校から日本語教育を受け、小学校を卒業する頃には日本語が話せるようになっていたそうです。
だから日本語は母国語レベルに話すことができて、国民党時代になってから北京語になったのが大変だったそう。
「日本の先生は、厳しいときもあったけど、思いやりをもって教えてくれた、感謝している」とおっしゃっていました。
そんなTおじいちゃんは、相撲が大好き。
「双葉山はすごかった、69連勝したんだ」「今のモンゴル人の…誰だっけ。そうそう、朝青龍。朝青龍の相撲は品がよくなくて好きじゃないね。あんなに張り手をするなんて」と、相撲になるととても嬉しそうに、熱く語っていました。日本から新聞の切り抜きを送ってもらっている程だって。
家では毎日NHKを見ていて(台湾でも見ることができるそう)、日本から「文芸春秋」などの冊子を送ってもらい、本棚には日本語の本がたくさん並んでいるそうです。有名な日本の小説作家の名前、何人も知っていました。
日本の都道府県の位置と名前もほとんど全て覚えていて、「◯◯県出身なんです」と言ったら「わかるよ、行ったことある」とか「◯◯(小説家)はそこの出身だね」とか、話してくれました。
私よりよほど日本について詳しくて、台湾の方というより、日本人のおじいちゃんとお話しているみたいだった。聞き取れない部分もあったけど、嬉しそうに、一生懸命話してくれて、すごく嬉しかった。
お耳が悪く補聴器をつけていらっしゃるのと、少し膝が悪く杖を使っていらっしゃいましたが、とても91歳には見えないほどお元気で、とてもチャーミングでかわいいおじいちゃんでした。
トランシーバー事件
陳おじいちゃんがお話してくれたエピソードで、印象深かった「トランシーバー事件」。
Tさんが若い頃、トランシーバーが日本で流行っているというのを聞いて、それは便利だ、と日本から送ってもらったそうです。そして、こっそりと使ってみるため、友人と山の中に行き、使ったんだそうです。ところが不運なことに、実はその山には蒋介石の別荘があったとのこと。そのおじいちゃんの友人が、スパイだと思われ、警察に捕まってしまったんだそうです。
責任を感じたTおじいちゃんは、なんとかしなければと、あの手この手を使って、なんとかその友人を釈放してもらったのだそう。具体的にどのようにしたのかはわかりませんが「世界一周できるくらいのお金を使った」とおっしゃっていました。
なんだかすごい話だ。。。
でも、それを穏やかな口調でさらっと話すTおじいちゃん。
Tおじいちゃんのお話は、ほとんどが相撲とか剣道など日本に関する楽しいお話だったけれど、弟さんを亡くしたり、私からは計り知れない様々な経験をされています。時に「拷問」だったり「虐殺」だったり、そんな話が出ることもあり、涙が止まりませんでした。
ただ、今まで生きていてくれて、こうして話してくれてありがとう、と、最後にハグしました。
なんかね、歴史がどうとか政治がどうとか、そういうことの前に、このおじいちゃんのことを書きたかったの。
日本統治下に生まれた、ある1人の男性が、91歳の今、どんな表情で、どんなお話をしてくれたのか。私がお話できたのは、ほんの2時間くらいで、その人生までは、わからないけれど。
でも、あたたかい人柄だけでも、なんか、ここに書いておきたいなって思ったの。
今回来てくださった台湾のおじいちゃんおばあちゃんは、全部で5人の方でした。一番若い方でも、81歳。本当に、今、お会いできてよかったなって思いました。
なんとか、また会えるうちに、台湾に行きたいなって思ってます。
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《私の今後の予定》
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