年金の控除額が10万円引き下げられた? 税制改正!
はじめに
2018年の税制改正により、公的年金等控除額が一律10万円引き下げられることとなりました。
この改正内容については2021年より適用されていますが、同様にほかの控除についても調整がなされています。
今回は2021年より適用開始されている税制改正の内容について解説します。
給与所得控除および公的年金等控除の引き下げ
2018年の税制改正では、給与所得控除と公的年金等控除額が一律10万円引き下げられることになりました。
しかし、その引き下げられた10万円分については、基礎控除に振り替えられ、基礎控除額が一律10万円引き上げられたことから、実質の税負担には影響がないといえます。
■公的年金等控除の改正内容
公的年金等控除は、公的年金等の収入が1000万円を超える場合において、控除額に上限を設定します。その上限額は195万5000円となっています。
また、年金以外の所得がある場合は、その額が1000万円を超える場合、そして2000万円を超える場合においてはそれぞれ控除額が引き下げられることになっています。
基礎控除の引き上げ
公的年金等控除額が10万円引き下げられましたが、その分基礎控除に振り替えられ、10万円の引き上げとなりました。
しかし、所得金額が2400万円を超えた時点から段階的に控除額を縮小することとなり、2500万円以上の所得がある場合は基礎控除の適用は受けられません。
給与所得控除の見直し
給与所得控除については、まず、給与収入が850万円を超える場合の控除額について195万円に引き下げることとなりました。
ただし、この改正では子育て世帯への配慮を行い、23歳未満の扶養親族がいる人、もしくは特別障害者控除の対象である扶養親族などがいる人に対しては、負担の増減がないように調整されています。
通常、給与収入が850万円を超える場合の給与所得控除の上限を195万円とし、その後1000万円までの給与収入がある人に対しては、段階的に負担額が増加する仕組みとなっています。
しかし、子育て世帯であれば、給与収入が1000万円を超える場合の給与所得控除の上限を195万円とされており、最終的な影響はありません。
所得金額調整控除の創設
前述した子育て世帯に対する特例は「所得金額調整控除」といわれるもので、以下のような仕組みとなっています。
<対象となる人>
●本人が特別障害者
●23歳未満の扶養親族がいる人
●特別障害者控除の対象である扶養親族などがいる人
<計算方法>
上記に該当する人の所得については、給与所得から控除額である「(給与収入(上限1000万円)-850万円)×10%」を差し引いて計算します。
適用を受けるためには、年末調整の際に、年末調整の用紙の中にある「所得金額調整控除申告書」欄に記入する必要がありますので、忘れずに記入するようにしましょう。
また、この控除は共働き世帯で、夫婦ともに給与収入が850万を超える場合には、夫と妻両方が適用を受けることができる点も覚えておきましょう。
所得金額調整控除は年金受給者にも適用がある
所得金額調整控除については、子育て世帯だけではなく、公的年金と給与収入がある人に対しても用意されています。
基本的に収入が公的年金のみであれば公的年金等控除が10万円引き下げられたとしても、基礎控除が10万円引き上げられているので、実質的な影響はありません。
しかし、公的年金と給与収入がある人の場合、公的年金等控除と給与所得控除両方で10万円ずつ引き下げられるため、基礎控除が10万円引き上げられたとしても、実質10万円の引き下げとなるため、最終的には増税となってしまいます。
このような問題を解消するために、所得金額調整控除(年金等)が設けられ、税制改正による影響が出ないような仕組みとなっています。
■所得金額調整控除(年金等)とは?
この控除を受けることができる人は以下に該当する人です。
○「給与所得控除後の給与額+公的年金等控除後の公的年金等の金額」が10万円を超える人
そして所得金額調整控除額は以下の計算によって算出されます。
(給与所得控除後の給与額+公的年金等控除後の公的年金等の金額)-10万円