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#27 調布 どうなる〝三者協議〟(1)~主催は「市」か「事業者」か

「調布市主催で事業者・調布市・住民の三者協議の定期的開催を求める御要望をいただきましたが,一方で地域の住民の方から,事業者が主催し, 補償対象地域住民と意見交換の場を設けるべきという御意見も上がっており, まずは事業者が責任をもって地域住民の方から御意見を伺う場として意見交 換の場を設ける方向で事業者と調整を進めております」

「外環事業に関する事業者・調布市・住民による三者協議継続の要望への回答について」
(2月17日 調布市長 長友貴樹)

これは、外環被害住民連絡会・調布が調布市にあてた〝三者協議〟の継続要望に対する市の回答の一部だ。「調布市主催で」という連絡会からの要望に対し「まずは事業者」との回答。要望ははじかれた形になった。

連絡会側は、昨年7月を最後に開かれていない、調布市、NEXCO東日本、住民連絡会の〝三者協議〟の再開・継続を求め、2月はじめ、市あてに要望書を提出した。

1.調布市主催で事業者・調布市・住民の三者協議を定期的に開催してください
2.転居を余儀なくされた元住民もこの協議に参加させてください
3.今後の掘進再開に向け、市内のトンネル沿線住民やこの問題に関心を寄せる市民の参加も認めてください

「外環事業に関する事業者・調布市・住民による三者協議継続の要望」より
(外環被害住民連絡会・調布  2月3日)

これまで〝三者協議〟は、市と連絡会との定例の協議の場に事業者を呼ぶという形で、おととし1月以降、おおむね月に1回の頻度で開催されてきた。去年7月まで14回(注①)を数え、工事に伴う周辺影響や補償など、様々な課題について話し合われてきた。すべてが住民が満足する結果とはなっていないものの、この場が一定貢献したとみる住民もいる。

住宅街を縫う管路。安全性や騒音への対策が講じられている(おととし8月)

しかし、去年6月、事業者が主催する「オープンハウス」とあわせて開かれた意見交換会の場で、連絡会以外の住民から「市や事業者が、特定の団体=連絡会と協議の場をもつ」ことへの否定的な意見が出された。実はこの時、オープンハウスと意見交換会はおよそ1年ぶりだったが「期間があいたのは事業者が特定の団体との協議にかまけて、地域全体を軽視したゆえんではないか」との声もあったという。
連絡会にとっては「特定の団体」と呼ばれることは本意ではなかった。発足当初から一貫して広く住民に参加を呼びかけ、門戸を狭めたことはない。ただ、街を去る住民が少なくない中、新たなメンバーもなく顔ぶれが固定化していることは否めない。市の担当者は「連絡会は地域住民を代表していると理解していたが、実はそうではなかったようだ」などとして、三者協議のあり方を見直すことを表明した。

調布市外環・交通担当部長「(NEXCO東日本が開く)意見交換の場みたいなものを、もう少しスパンを短く、定期的にやれるような場を持った方がいいと感じている」

連絡会の住民「調布市がもっと宣伝をして、 市がもっと主導してやってくれればいい」

調布市外環・交通担当部長「やるとしたら、そういう形になろうかという風に思う。主催は市なのかNEXCOなのか相談をしなくちゃいけないが」

住民「(主催は)市でしょう」

調布市 NEXCO東日本 外環被害住民連絡会・調布の三者協議より ’24年7月25日

市側の提案を、当初、連絡会側では好意的に受け止める向きもあった。これまでの頻度を維持しつつ、市が広報することでさらに多くの住民が参加できるのでは、市がより主体的にかかわることで、住民が担ってきた議題の集約や司会といった実務の負担感も軽減されるのではとの期待もあった。
しかし、それから5か月をへて去年12月、事業者主催の意見交換会に出席した市の担当部長は「事業者主催」の形を検討していることを明らかにした。

調布市外環・交通担当部長「意見交換の場については、 私ども、できれば今日と同じようにですね、事業者が主体で今、今もやってますけれども、そういう形態で開催ができないかという風に考えています」

「地盤補修の施工状況等に関するオープンハウス 意見交換の場」より(’24年12月21日)

連絡会では「住民の要望をちゃんと聞いてくれるのであれば、主催はどちらでも良いのではないか」との意見もあったが、「あくまで市が主催で開催すべき」との意見も根強い。

「(当初)市に頼ったという私たちの経緯を考えても、NEXCOとのやり取りはらちがあかないないから頼ったわけなので」

被害住民連絡会の会合での発言(1月7日)

「連絡会が過去に取ったアンケートでも、『ネクスコ主催のオープンハウスで何を言っても埒があかないので行くのをやめた』という声が複数ありました。市が主催する意見交換会であれば、住民の受け止めも大きく違ってくると思います」

「外環事業に関する事業者・調布市・住民による三者協議継続の要望」より
(外環被害住民連絡会・調布 2月3日)

以前、筆者はやや強引に三者協議の取材を試みたことがあった。
その際、当時の市の担当者は「この場は市が主催している。苦労して事業者の出席を実現させ、時に踏み込んだ内容も出ている。この場が維持できなくなったらどうするんだ」と強い口調で抗議した。取材対応のありかたに反発はしたものの、同時に自らの責任で協議の場を守ろうとした担当者の気概も感じた。

今回、いったん事業者側に下駄を預けてしまうと、以後、開催の可否や頻度、対象とする住民の範囲、公開の度合いなども事業者の思い通りとなり、市はまた「伝える伝えた」を繰り返す「伝書鳩」に戻る懸念はないか。

去年6月のオープンハウス。およそ1年ぶりの開催の理由を問うた筆者に、
NEXCOの担当者から返ってきた答えは「しばらく開催していなかったから」

市はどう考えてるのか。
次回は、見直しを切り出した当事者である調布市の担当部長に「事業者主体」の真意や今後の三者協議の方向性を質す。(続く)

注① 調布市と連絡会の協議は16回を数えるが、NEXCO東日本は3回目から参加。「三者協議」としては14回となる。
※記事は不定期で追加、更新していきます。
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