
#28 調布 どうなる〝三者協議〟(2)~調布市担当部長に聞く※長文
最初の陥没から2年以上をへてようやく実現し、月1回、14回を重ねた調布市、NEXCO東日本、外環被害住民連絡会・調布による、いわゆる三者協議。これまで協議の場を主催してきた調布市は、「事業者主催」に変更する方針を打ち出している。連絡会側からは地元自治体の関与が薄れることへの懸念の声も上がり、これまで通り調布市主催とすることや、転居を余儀なくされた元住民や、この問題に関心を寄せる市民の参加も認めるよう求めている。
市は見直しの理由を「特定団体と協議を行うことへの批判の声があった」としているが、ではなぜ、市がこれまで通り主催して、参加を広く呼び掛ける方向ではできないのか。事故の加害者である事業者の恣意的な運用がされる懸念はないのか。見直し案を表明した調布市の代田敏彦 外環・交通担当部長に質した。

住民(右)が、市が主導して事業者との話し合いの場を設けるよう強い口調で迫った。
(画像は一部加工)
電話での取材は2月20日、30分以上にわたった。
住民にとって現に関心が高い内容であることから、既出の内容や繰り返し等を割愛し、理解のため話の順番を一部入れ替える程度でほぼそのまま記す。このため長文になることをご容赦いただきたい。
・「事業者主催は地域が求めている」
ー これまで14回、月1回程度の頻度を守ってこられたのは、市がある種の「重し」となっていたことも貢献していると思う。市の主催を守った上で事業者を呼ぶというこれまでのやり方を継承したうえで、対象を広げることも可能ではないか。市が主催できない何か格別の事情があるのか。
代田担当部長:地域の方から話があったというのが多分一番ポイントだと思う。
ー 連絡会に入っていない方から、市の主催ではなく事業者主催でやってほしいという要望があったということか。
代田担当部長:そうです。
ー それはどういう趣旨で。
代田担当部長:そこは私たちもはっきり、じゃあそれはどうだっていうことを明確に把握ができてるかっていうと、それはそれぞれお考えが多分あると思う。
ー 理由について市は把握していないということか。
代田担当部長:実際に何か対応ができるものとしては、事業者が対応せざるを得ないもの、市が何かできるかっていうと、例えば振動騒音があるからなんとかしてくれだとか、補償についてこれも補償の対象にしてくれとかって言われても、私たちも資料もなければ、どうしても事業者でないとできない内容があるので、そこは事業者の責任を持ってやるためにも事業者でっていうような、そういう意味ではないかなという風に思っている。

入間川から気泡が発生したことについて事業者側(中央奥)から説明を受ける
ー 会を主催するということと、実際に市が動くのか、事業者が実際に動くのかっていうこととは違う。会合自体は市が主催しても、そこに事業者がいて、そこで色々な要望を聞いて対処するという形をこれまででもやってこられたと思う。その協議の間口を広げるという方法で、なぜ具合が悪いのか。
代田担当部長:地域の方が求めてるものは、事業者主体でということを求められてるところもある。実現をしていくっていうのが私たちが今やろうとしている内容。
ー Aのグループは市が主催でやってくれと言っている。Bのグループは事業者が主催でやってくれと。今の説明だとBのグループの意向があるから、それにのっとって実現をするんだという風に聞こえている。片方の意見を聞いて、そこに乗っかりますという風に聞こえる。
代田担当部長:片方のグループというか、地域住民の声を聞いて今動いているということ。
ー 地域住民は要望書を出した。
代田担当部長:連絡会としてですね。
ー 連絡会は地域住民だ。
代田担当部長:私たちはどこの会とかっていうのに関わらず、地域の住民の声を受けていま動いている。
ー 何人かわからないが、複数というのは、2人か3人かわからないが、その方々の意を受けて、事業者主体でやろうという風に動いているということ。
代田担当部長:そうですね、そこは。
ー 事業者主催でやってくれとの意向は、何人に聞いたのか。
代田担当部長:それは色々個人のお考えもあるので、私の方から何人とお答えはしない。
・「2,3か月に1回」「市は広報しない」
代田担当部長:頻度については1年に1回とか、そんなレベルで私たちも考えてるわけではなく、2,3か月に1回っていうようなお話をいただいている。そういった頻度をちゃんと定期的に開催できる、そこは事業者に求めていくつもり。今までの1か月に1回ということはおそらくないと思うが。
ー 市が主催から外れると2,3か月に1回と後退してしまうということか。
代田担当部長:陥没が起こって4年が経過し、地盤補修があって、だいぶ状況も変わってきている。そういった中で、地域の方からのご意見ご要望の内容が、ある程度しぼられてきているのかなと思う。あと(事業者側の)個別相談の窓口も、新たに場所が変わって、これまで1組しかできなかったところが同時に複数の相談を受けるような体制になったりしてきている。何か困ったことがあった時に相談できるような間口は以前よりは広がってきている。そうした状況もあわせて、意見交換の場についても、頻度が1ヶ月に1回ないとダメなのかといったところは、まずやってみて、やっぱりもうちょっとピッチあげてやってよっていう話があるんだったら、改善していけばいいと思う。
ー 開催を市報に載せるなど、市としての広報はするのか。
代田担当部長:市はしない。
・「事業者主催は市から求めた」「前と変わらない」
ー 例えば市が主催して広く呼びかけるということになると、ある程度公開性、透明性などが前提になると思う。それを、これまで説明会などをクローズな形でやってきた事業者が嫌がるなどの事情があったのか。
代田担当部長:全くそういう話はない。
ー 市が主催するか、事業者が主催するかということに関して、事業者側の何らかの姿勢は聞いているか。
代田担当部長:特にどうというのは自分は少なくとも把握はしていない。ただ、市からはそういう求めをしたっていうこと。
ー 事業者が主体でやってくれということを市から求めたのか。
代田担当部長:そうです。
ー そうすると、調布市が「事業者主体でこれからは進めていく、これまでやってきた市が主催するという形はやめる」というのは、何人かわからない、理由もわからないが、複数の市民がそう言っているからそれに乗っかる、簡単に言えばそういうことになるということか。
代田担当部長:理由は、先ほどお伝えをしたような、事業者がちゃんと責任持ってやるために事業者でということ。私はそう受け止めをしている。
代田担当部長:地域住民の方がどなたでも来られるようにする、そのためには、事業者主催の意見交換の場の方が、おそらく地域の方が来やすいと思う。
ー 事業者は、これまでのオープンハウスや意見交換の場を見ても、対象を色々絞ったり、チラシを撒いた人だけが入場できるという形にしていて、広く来てもらえるようにということと逆行している。
代田担当部長:そこが多分いろんな意見があるんだと思う。市としては、まずは一番大きく影響を受けているのが、地盤補修範囲周辺の、いま事業者が案内を配布してる1700件、その方たちがいま直接的にいろんな影響を受けてる方だっていう風な認識は私たちも持っている。まずその1700の人たちがある程度意見が言いやすいの場を作るっていうのが、まず最優先でやってなきゃいけないことだと思っている。そのためには、事業者主催でやった方が来やすい場におそらくなるんだろうなっていう風に私たちは受け止めた。

ー 市の主催だとなぜ来にくくなるのかっていうのが解せない。事業者は言ってみれば加害者。そこに下駄を全部預けてしまうところに疑問がある。頻度や形式など、住民の意向が通りにくくなる懸念がある。
代田担当部長:多分前と変わらないと思う。今までやってきた流れと全く変わらないと思う。私たちも同じようにいるから、三者の場としては全く変わってないんじゃないかと思う。動き出してみないと何ともわからないが。
・「定期的な開催堅持」「特定団体との協議で間が空いたとの声も」
ー これからは三者協議をやってくださいっていうことを、市じゃなくて事業者に言えばいいということか。
代田担当部長:別に市に言っても全然構わない、そこは。
ー 市に言っても事業者に伝えるだけ。そして、事業者が聞くかどうかはわかりませんということにならないか。
代田担当部長:できればそれを定期的にやっていきたいと思っている。あんまり任意で設定すると、またずるっと空いてしまう。そうならないように、1年で何回やるとかっていうのを完全に決めてしまいたいと思っている。少なくとも任意で開催するんではなくて、定期的な開催ということは、私たちは必ずやっていきたい。
ー 定期的に開催していこうという趣旨は分かった。ただ、これまでやってきたパイプが、事業者に下駄を預けることで途切れたり、まばらになったりということが懸念される。極端に言えば事業者の胸三寸でどうにでもなる。6月の(事業者主催の)オープンハウスや意見交換の場も、その前が確か1年ぐらい空いていた。
代田担当部長:その時来られた方から「なんで1年も空いているんだ、特定の団体と定期的に協議していることで、事業者が地域のことを軽んじているんじゃないか」っていう趣旨のことを言われた。
ー 事業者はそう言っているのか。
代田担当部長:事業者はそういうことは言っていない。ただ連絡会に入っていない人からするとこういう風な見方をしていて、私たちが地域を全部網羅してる団体だと思っていたところが、どうもそうじゃないっていうのが、そこで私たちもはっきり受け止めをしたっていうのがその時。地域の人からすると、特定の団体とだけじゃなくて、被害を受けて一番困ってるの自分たちなんだから、自分たちとやっぱりしっかり意見を聞く場をちゃんと設けるべきじゃないか、もっと頻度高めてやるべきじゃないかっていうことが、今回リニューアルするための一番のきっかけになっている。
別に全部下駄を事業者に預けてるとかそういうことではなく、市としてもそういうことを思って、事業者主催の会を定期的にやりたい、本当にそれだけだ。
ー 特定の団体との協議のせいで、意見交換の場の間が空いてしまったというのは、市としても同じ認識なのか。
代田担当部長:そこは私たちはわからない。
ー 住民のやることだからそれ(連絡会の活動)専業でやっているわけではない。広げ方など限界があったかもしれないが、別に門戸を閉じていたわけではないと思う。
代田担当部長:だからこそ、事業者が地域にお知らせをして、誰でも来られるような形にした方が、いろんな方々も来やすいのではないかと思っている。
・「年度内にやりたい」「担保はないが定期的に」
ー いつ頃やろうと考えているのか。
代田担当部長:年度内には必ずやりたい。(事業者が対象としている地盤補修範囲周辺の)1700件が対象と考えている。
ー どうしてもわからないのが、なぜ調布市主催で事業者を呼ぶっていう形が、どうしてもその方が形式とはいえ「主権」が市側にあると思える。
代田担当部長:「主権」というか、事業者が自分たちの思いだけでやるやらないを判断するような、そういうことにはならないようにやる。じゃあその担保はと言われてもなんとも言えないが、ただ、少なくとも任意にやるんじゃなくて、定期的にもう決めて、そこはあんまり誰かの恣意的にやるやらない判断するんじゃなくて、もう何月、何か月おきの、何月の何曜日にも必ずやりましょうねとかっていうのを1回目の中で決めてしまった方がいいと思っている。
・「事業者がやらないなら指導」「私からも住民に伝える」
ー 事業者側が次の開催を確約しないなど、そういう場合は、ちゃんとやりなさいみたいな行政指導的なことをするのか。
代田担当部長:もし本当にやらないんだったらそれは指導する。事業者が本当にやらないって話になるんだったら、それは約束違うだろって話をする。
ー これまで住民も、チャット問題とかいろいろなことがあったのかもしれないが、全面的に事業者を性善説で見られないという部分がきっとあると思う。市に対して期待する部分も大きかったと思うし、実際、市が取り持つ形で三者協議が継続してきたという一種の成功体験があったと思う。それもあって、なぜ今回、市が主催じゃないのかという部分は大きいのではないか。その辺に対する答えを聞きたかった。
代田担当部長:事業者主体だからといって、定期的な開催が担保されないということには間違いなくしないように私たちは考えている。もし何かそういうことを言われてる方がいらっしゃるんであれば、そういうことを私が言ってたってのは伝えていただいても構わない。年度内には必ず一回目をやりたいと思っているので、そこではそういうことを私の方からも、いらっしゃった方にお伝えをしていこうと思う。
〝加害者への根拠なき性善説〟
個人情報漏洩(▼1)の発覚以降、調布市は外環担当を一新して臨んできた。〝事業者寄り〟〝住民を向いていない〟との批判のなか、三者協議を実現させ継続させてきた。市の主催という看板は形式にすぎないと言われればそれまでだが、頼るよすがのない住民には強く響く。なぜいまそれを自らおろすのか、納得のいく答えは聞かれなかった。定期的な開催を強調し指導にまで言及する一方で、その担保はどこまでも、加害者に対しての「根拠なき性善説」だ。
(▼1)’21年11月、陥没・空洞問題に関連して調布市に情報公開請求をした住民の個人情報や請求内容を市が事業者側に伝えていた問題。
※記事は不定期で追加、更新していきます。
※画像や動画は特段の引用表示・但し書きがない限り筆者の撮影・入手によるものです。
※内容についてご指摘、ご意見、情報などありましたらお問い合わせよりお寄せ頂ければ幸いです。