#8 “外環被害住民を監視・盗撮”報道(1)~施工業者“安全管理のためも礼節欠き不適切”
(3月14日文末追記:鹿島建設、東日本高速道路がコメントを発表)
3月6日午後、調布市の地盤補修工事現場周辺の住民にとって衝撃的なポストがXに躍った。日本共産党機関紙「しんぶん赤旗日曜版10日・17日合併号」の記事内容の投稿だ。調布市東つつじヶ丘で地盤補修工事を行う大手ゼネコン鹿島建設を筆頭とするJV(共同企業体)が、住民やマスコミの動向をチャットで情報共有したり、無断で撮影するなどしていたことが取材で判明したというもの。記事によれば、
住民やマスコミの動向を逐一追ったものから、
住民の日常生活の様子。
住民の苦情や家屋補修をめぐって揶揄したり、あだ名で呼んだり。
セクハラめいた言及、高齢者への侮蔑的な言葉など、不適切と思われるやりとりもあったとしている。
事業者の関与について記事は、「(事業者側)工事長に報告済み」「N(注:ネクスコを指すか)に報告」などといった文言があったとし、「鹿島JVが組織的に住民監視・隠し撮りをし、その情報を日常的に発注者に報告していた疑いが濃厚」としている。
同紙の取材に対し、鹿島建設はチャットの使用を認めながら、JV内の情報交換が前提だとし、「内容の回答は控える」。東日本高速道路と国土交通省は「把握していないためお答えできない」と答えた。
記事が事実だとすれば、そもそも〝被害者〟である住民にとっては、到底容認しがたい。
3月8日(金)夕方、日本共産党の国会議員らが国土交通省や東日本高速道路に対して説明を求める、いわゆる「レク」が緊急に開催された。参議院議員会館の会場には、議員や地元住民などおよそ30人が集まり、説明者として国土交通省道路局と東日本高速道路からそれぞれ2名が出席した。
冒頭、まずその場の動画撮影をめぐるやりとりで紛糾した。
押し問答の末、ひとまず説明は始まった。しかし事業者側は「鹿島JVで事実関係を確認中」と繰り返すにとどまった。
事案についていつ知ったかとの問いには、事業者側はまともに答えようとしなかった。「知らなかった」のならそう答えればいいだけと思うが。
追及の末、両者とも、しんぶん赤旗の取材があってからとの趣旨に一応落ち着いたが・・・。
そして繰り返し述べた「鹿島JVによる事実確認」のめどについては、東日本高速道路は「終わり次第」とするにとどまり、その場しのぎにともとれる姿勢に批判が集まった。
記事中で、呼び捨てで動向を監視されたとされる、地盤補修範囲のすぐ隣に住む丸山重威さんが、たまりかねて口を開いた。
事業者側は一般論としたうえで、
「公共事業においては法令順守があり、プライバシー侵害とかにあたるような行為は一切できない」(国交省担当者)
「いわゆる盗撮と言われているものとか、そういった行為は望ましいものではないという風には考えている」(東日本高速道路の担当者)との認識を示した。
そのうえで、事実解明や住民への説明などが済むまで工事を中止すべきとの意見に対しては、
「自分の一存で止める止めないの明確な回答はできかねる。ご意見として承る」(東日本高速道路の担当者)
議員らは、答弁がほとんどなされていないとして、改めて説明を求めるとしている。
(8日のレクの模様はUPLANさんが動画公開中)
週末をはさんだ月曜日の朝。数十人以上の技術者や作業者が集まり、いつも通りラジオ体操や作業確認のあと持ち場に散った。作業を中止する様子はなく、筆者に挨拶をして通り過ぎる作業者や、子供たちの列に手を振って見守る警備員も、いつも通りの光景だ。
陥没の発生からおよそ3年半。多くの家族が去り、家屋解体や川を這うパイプ、高く伸びるクレーンが日常となった街。
住民連絡会と事業者側は、市の仲立ちでこれまで13回の会合を重ね、お互い「〇〇さん」と呼び合って議論するところまできた。課題はどこまでも尽きないものの、住民の細かな要望に現場で対処する事例もあるという。
そうした矢先に浮上した今回の報道。事実であれば、だれが指示し、関与したのか、集まった情報はどこにどう伝えられ、使われたのか。マイナスからようやく紡いだ関係を損ねかねない事態に、早急な事実解明と誠実な説明が急務だ。
(3月13日(水)19時追記)
今回の報道に関して、日本共産党の池川友一都議は3月12日(火)東京都議会予算特別委員会にて、外環事業に対して大深度地使用認可を行っている東京都の認識と姿勢を質した。これに対して東京都の中島高志技監は次のように答弁した。
動向を監視されたという住民のひとりは、答弁を聞き「チャット」でこうつぶやいた。
(3月14日追記:鹿島建設、東日本高速道路がコメントを発表)
弊社の東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)東名北工事に関する報道について(鹿島建設)
調布市地盤補修工事に係る施工業者内でのグループチャットのやり取りに関する事実確認の結果について(NEXCO東日本 東京外環工事事務所)
鹿島建設のリリースには謝罪の文言があり、東日本高速道路のものにはない。あくまで鹿島JV内の不祥事という扱いだが、事業者側の認識や関与、指示などがなかったかどうか、明らかにする必要がある。
#9に続く
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