#11 調布 外環チャット問題(4)~住民の〝恐怖〟信頼回復、再発防止は
これは地盤補修範囲に暮らす住民・Bさんが、今回のチャット問題をうけて事業者側に対して語った言葉だ。いずれ自らもこの地を離れるBさん。自宅の周囲では家屋解体が進み、現在、更地に取り囲まれるように暮らす。もともと外環道の建設に批判的な立場から住民運動に参加してきたが、自宅から十数メートルのところで陥没が発生して以降は、外環被害住民連絡会・調布のメンバーとして、原因究明や被害調査、事業者や行政への要求といった活動に取り組んできた。
陥没発生から3年半。地盤補修工事がじわじわ進む流れにあるが、未だ事故発生当初からの疑念やわだかまりが解消されたとは言いがたい。そうしたなかでも、現場の鹿島JVやNEXCOの顔見知りの社員には、自宅の補修に対応してもらったり、工事の情報を届けてもらってもいる。何より周辺では1年365日、昼夜問わず、地表面の異変などの警戒のため警備員が巡回する。
今回の報道を知ってBさんがまず思ったのは、こうした人たちに自分はどう見られ、何と言われているのかということだ。
Bさんは3月末、別のメンバーCさんとともに、「東京外かく環状道路 つつじヶ丘相談所」に設けられた今回の問題に関する相談窓口を訪れた。説明に臨んだのは鹿島建設東京土木支店で現業部門を統括する部署の社員と、NEXCO東日本で調布の地盤補修工事を管轄する部署の社員。取材をもとに、ここで明らかになったことをいくつかまとめる。
まず、問題のグループチャットについて、3月26日の参議院予算委員会でNEXCO東日本の高橋知道建設事業本部長は「鹿島からは、約60人が共有していたのではないかと思われるとの報告を受けている」と答弁した。
この約60人についてBさんらは、メンバー構成、また日々地域を巡回している警備員も含まれているのかといった点について質問したが、鹿島の社員は「チャットの内容にかかわることは答えられない」として明らかにしなかった。「チャットの中身ではなくメンバー構成のこと」と重ねて説明を求めたが「内容に触れる」との一点張りだった
さらに、確認できた9月6日の2件以外のチャットのやりとりとされる内容の確認方法について、鹿島の社員は、
「こういったことを投稿した覚えがあるかとか、こういうやりとりがあったかなど複数人にヒアリングをしたところ『確かにこういうのがあった気がする』といったものがあり、事実関係はあるのかなという形で判断をした」
と説明。Bさんらは重ねて尋ねた。
記事のひとつひとつを突き合わせたわけではないものの、おおむね記事にあったようなやりとりがあったとの認識を示した。
また、「〇〇さん二階から覗いています」(9月6日)といった、住民の日常生活に言及したような内容が、監視ではないかとの指摘については。
とはいえ、「礼節を欠いた表現」で家の中での様子を描写されて(特に高齢者や若い女性についての言及など)それが監視目的でなく、仲間内のみで広く公にしていないからプライバシー侵害ではないなどと抗弁されても、何の落ち度もなく工事のデメリットを受忍している住民が納得できるものではない。
再発防止について質すと、NEXCO、鹿島の担当者はそれぞれ次のように説明した。
一方で、社内での処分の有無については「内部情報」であるとして明らかにしなかった。
2時間を超える話し合いの終盤、Bさん、Cさんは、
「チャット管理者にプライバシー権、個人情報保護などを適切に判断できる人を求める」
「NEXCOは監督権を発揮して、1 月に1 回チャットの内容を確認するなど、再発防止のために具体的にやれることを考えてほしい」
などと要求。被害住民連絡会はこの問題について近々、調布市を交えた事業者側との話し合いの場で協議したいとしている。
4月、地盤補修現場近くの朝礼やラジオ体操を行う作業用地には、次のような注意事項が掲げられていた。(記事タイトル画像参照)
一方で、一連の問題の口火を切った「しんぶん赤旗日曜版」は、4月3日、続報をXにポスト。
記事にある工事エリア外での「情報活動」が事実なら、チャットで住民を名指しにした言及や写真撮影すべてが「監視目的ではない」という説明には無理が生じる。「監視や盗撮と疑われるような行為は慎もう」と鹿島がいうのであれば、こうした「情報活動」にも歯止めはあってしかるべきだ。
事業者側には、公共事業でもなく、開発行為としての網もかからない大規模な地盤補修工事を意のまま進める力がある。そうした「絶対強者」に対して、いまも地元住民は、いくつもの具体的な懸案事項や補償をめぐって向きあっている。
圧倒的な力の差を背景に、反対派色の濃淡で議論をゆがめたり、冒頭でBさんが語ったような〝恐怖〟をもって萎縮を招くことは、よもやあってはならない。
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