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#20 謎の気泡と水~町田のリニア大深度掘進直上付近で

Mさん(家主)「異常がないとこへ。うん、うちの庭だけ異常がある」
Aさん(撮影者・リニア中央新幹線を考える町田の会メンバー)
「撮り方上手ではないけど、ブクブクはしっかりわかる。絶対なんか異常ですよね。地下の異常ですよ」
Mさん「きのう雨は降っとらんし」
Aさん「それに今までこんな地下からなんてありえなかったんだからね」
Mさん「85年ない」
Aさん「心配してた、本当にその通りになった」

10月22日 住民が撮影した映像に記録されたやりとり※プライバシー保護のため公開している動画からは除いています。

10月22日朝6時ごろ、東京・町田市の山あい、サッカーJ1町田ゼルビアの本拠地・町田GIONスタジアムにほど近い民家の庭先から、水や気泡が湧き出ているのが発見された。水道管からの漏水を疑った家主のMさん(85)は役所に連絡。水を採取し調べてもらうも「水道水ではない」との結果だった。

この場所から40メートルほど※離れた交差点の地下およそ50メートルでは、直径14メートルのシールドマシンを使って、リニア中央新幹線の大深度地下トンネルの掘進が行われていた。
※リニア町田の会のJV事務所への聞き取りによる。

手前の土の部分が水や気泡が出ていた場所。9か所から出ていたという。
信号付近の地下にシールド機、奥のクレーンが見える場所が発進立坑の「小野路非常口」

Mさんや、地元住民らでつくる「リニア中央新幹線を考える町田の会(リニア町田の会)」のメンバーは、工事を行うJVやJR東海の事務所に連絡。当日午後に掘進は停止した。水や気泡はそれから2日近く出続け、24日の午前10時半ごろ止まった。

事業者側の調査とは別に、リニア町田の会も独自に気泡や水の調査に乗り出した。気泡については水上置換法を使って、気泡そのものの気体を採取し、酸素濃度を計測した。
計測器の数値は見る見るうちに下がり、最後は1.0パーセントまで下がったという。計測が正しければきわめて酸素が希薄な「酸欠空気」ということになる。

住民側が行った「水上置換法」による気体の採取(11月24日)
リニア町田の会の会見(11月8日 町田市役所)

リニア中央新幹線を考える町田の会(リニア町田の会)事務局
亀山俊平氏
「現地事務所にも、それからJR東海の東京工事事務所にも言ったらですね、どちらもこのぶくぶく発生している地上50センチのところに測定器を持ってきて測定をしたと、そしたら19.7パーセントだったと。だから、それはすぐには人体に影響がないだろうということで、住民に安心してもらいたいんだという風に言われたわけですね。20パーセント割って19.7ということは、酸欠空気がかなり出てたんだろうと思うわけなんですけど。じゃあ 50センチのところでそうやって計測するというのは、例えば労働安全衛生法とか何か規定に基づいた測定方法なのですかって尋ねたら、いや、そういうものではありませんと。なんとなくそれで安全かなということでやったってことなんですね。じゃあなぜ気泡を取らなかったんですかって尋ねたんですけど、答えられないわけです」

東京外環道のトンネル工事の際、野川の川底から気泡が出た際も、事業者側は仮に酸欠空気が出ても、大気中で希釈されて無害化すると主張した。今回も同じ理屈を踏襲したとみられるが、住民側は、見えない酸欠空気の家屋内への浸入・充満のリスクを危惧する。

リニア町田の会 事務局 亀山俊平氏
「たまたま水が出て気泡が出て、ガスが出てるということがわかったわけなんですけど、水じゃなくてガスだけが出てたらわかりませんよね。で、しかも、これは庭先で出たんだけども、床下で出たらそのガスがじわじわじわっと室内に入ってきて、寝てる間にね、この酸欠空気が部屋の中に充満する可能性あるじゃないですか。つまり、ガスが出てるのがここだけだとは断言できないです。ところが、そこを測って安全だと、ほかは出てないみたいなことをおっしゃるのでね。ほかは出てることが確認できてないだけで、地面の中はわからないので、どうなってるかという風なことで、責任ある対応をちゃんとしていただきたいという風なことです」

(11月8日 町田市役所での会見)

会見が行われたこの日、JR東海は現場付近の住民に対し、以下のような調査結果をポスティングした。

「水や気泡は人体や環境に影響を及ぼすものではなく、地表面変位もない、引き続き因果関係を調査し、周辺のモニタリングを強化する」との内容。
工事関係者がMさん宅に水質検査の結果を持参し、その紙の裏に書いてもらったという説明。
掘進に使う気泡に含まれる界面活性剤を検出したが自然界レベルとの説明だ。

JR東海も文書で示しているように、今回の気泡や水の噴出に関しては、工事との因果関係は、その有無も含めていまだ明らかになっていない。
しかし、リニア町田の会が事業者側に電話で問い合わせるなどして調べたところ、今年9月19日以降の1日当たりの掘進距離がこれまでよりも延びていて、会ではこのことで気泡注入量が増え、何らか影響を及ぼしてはいないか、とも懸念する。
また地元の住民からは「工事が始まってから、道路の亀裂が増えたり広がっている」として、今後を不安視する声も聞かれる。

住民「物事は前兆があって、ドバっと最後にくる。いきなりは滅多なものはこない」

(11月9日 リニア町田の会主催の住民懇談会で)

調布では騒音や振動が起き、その後、陥没や空洞という現象が顕在化した。「前兆」と「現象」という関係では単純にくくれない面もあるが、「あの時工事を止められていたら」と悔いていた住民の言葉を思い出す。

現在掘進は停止しているが、リニア町田の会ではJR東海に対し、必要な調査や原因の究明、その結果の公開や説明会の開催、安全対策を提示し納得が得られるまではシールドマシンを再稼働させないことなどを申し入れている。また同時に町田市長に対しても、市としての調査やJR東海への必要な働きかけなどを求めている。

・記事は不定期で追加、更新します。
・写真や画像は引用表示・但し書きがない限り筆者の撮影・入手によるものです。
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