コロナウィルス感染/2020年4月8日時点の新聞評
〇日本の大手マスコミはいわゆる安倍一強政権に対し、及び腰のような姿勢が目立ち、事実関係 ──いわゆる一次情報の取材でも週刊誌に後れを取ることさえ、頻々と起きました。新聞の記事より、同じ新聞に載っている週刊誌の広告の方が面白い、と冷やかされることもありました。
しかし、2月下旬以来、朝日新聞と日本経済新聞を中心に、新聞、テレビのコロナ報道を読み、見ていますが、これまで以上に有用で、優れた記事、ニュースが多いと感じました。
〇非常時には新聞(マスコミ)が元気になり、戦前の昭和期の戦争報道がそうだと言われます。これはありがたくないことですが、今回の報道は知恵を感じる記事が多く、読むべきものが多いと言えます。コロナ汚染の問題は、空元気だけではごまかせず、人類の経験と知恵を絞って対応すべきだということが早い段階でわかってきたからでしょう。
〇私たちが生き残り、生活を守るため、「良い記事は見逃さず、読め!」と言いたいところですが、何せ記事の数が多い。4月5日(日)の朝日新聞は、全24ページのうち、8ページにコロナの記事が載っていました! そこで、現場記者30年の私が、良いと思う記事を紹介し、批評して、読者が新聞、テレビを「読みこなす」お手伝いをしたいと思います。
〇2020年4月8日(水)、各紙とも「コロナ感染で、緊急事態宣言発令」一色の見出しとなりました。宣言の目的はコロナの抑制と経済活動の維持。この2つの目的の難しさは、2つが同時に達成されなければならないことです。「今はコロナの抑制を最優先するとき」などと言って経済活動への目配りを忘れていると、コロナの抑制の前に、経済活動のストップで、我々がノックアウトされてしまいます。従って政府が「宣言」を出す以上、2つの目的を同時に達成するための総合的対策が示されなければなりません。
〇宣言と同時に事業総額108.2兆円の経済対策が閣議決定されました。安倍首相は記者会見で、世界最大級の経済対策、と自慢しました。しかし、朝日(4月8日)は「108兆円『最大級』に疑問符 新たな国の直接支出は18.6兆円」と解説しています。日経(4月8日)も、「政府が実際に支出する財政出は39.5兆円」としています。詳しくは両紙を読んでいただきたいのですが、いずれもしても実態が、世界最大級という108兆円には遠く及ばないことは間違いありません。
〇この経済対策のなかの目玉は、中小企業と家計向けに計6兆円の給付金が用意されたことです。しかし給付を受けるまでの手続きが難しく、このままでは、お金は要るが面倒なのであきらめた、という人が続出しそうです。テレビでは、世界最大級という割には実際の原資が乏しいので、手続きを難しくして、実際の支給額を抑えようとしているのでは、という解説まで飛び出しました(4月8日・TBS・グッドラック)。
〇108兆円で安倍首相が嘘をつこうとした、とまでは言いません。しかし、安倍首相には、とことん真実を伝えて国民の理解を得ようという気概が乏しい。コロナの検査数が人口当たりで日本の17倍、感染者中の死亡者の率が世界でダントツに低いドイツのメルケル首相が、3月18日の国民向けテレビ演説で、政府はコロナ対策を常に国民へ説明していく、としたうえで「ですから、私からのお願いです。どうかわたし達からの公式発表以外の噂を信じないでください」と訴えました。
日本で、安倍首相が同じことを言ったら、日本列島各地で、ブーイングの嵐となるでしょう。
〇政府は極力外出を控え、人と会うのを80%減らせ、と要請しています。飲食店などには大打撃ですが、あくまで要請しているだけなので、それによる経済保証はしないと言っています。こうしてみてくると、今回の「宣言」によって「コロナ抑制」と「経済活動の維持」という二つの目的が達成されるかどうか、誠に心もとないと言うしかありません。