種(タネ)は誰のものー種苗法改定問題の重大性

〇種苗法の改定案が2020年11月17日、衆院農林水産委員会で立憲民主、共産両党を除く与野党の賛成多数で可決され、今国会で成立する公算が大きくなりました。、種苗法改定の是非をいま論ずるのは「喧嘩過ぎての棒ちぎれ」と言われそうですが、日本農業の命運にかかわる問題であり。全国民に、事の重大性を知ってもらいたいと思います。

○この問題はマスコミの取り上げ方が不十分でしたが、最近ようやく一般の関心が高まり、最近では東京新聞が10月17日の朝刊日曜版で、1頁の特集を組みました。この特集には東大大学院の鈴木宣弘教授の見事な解説が載っています。それに基づき問題点を紹介しましょう。鈴木教授は、食料の源は種であり、「種は誰のものなのか」ということをもう一度考え直す必要がある、と最初に述べています。

○今回の種苗法改定の目的の一つは登録品種の種の自家増殖を許諾制にし、種の改良などに取り組む育成者の権を強め、民間育種事業の拡大を支援することとされています。しかし鈴木教授は「育種家の利益増大=農家負担の増大」は必然とした上で、もともと種は農家が改良しつつ守ってきたもので、莫大なコストがかかっている。それを企業〈育種家〉が勝手に素材にして改良し登録して独占的に儲けるのは、「ただのり」で、利益だけ得る行為だ、と喝破しています。

○また、民主党政権下で農林水産相を務めた山田正彦元衆院議員がプロデュースし、出演もしてインタビューアーをつとめた映画「タネは誰のもの」も2020年秋完成し、全国で上映されています。山田元議員は数年前から種子法廃止や種苗法改定に反対する活動に取り組み、全国を回って農家と話し合いを続けてきました。その経験を生かしてカメラとともにあらためて全国を行脚し、農家の率直な声を引き出しています。

○農家は山田氏の取材に対し、、農家にとって、取り組む農業の成否を左右するのは、種、肥料、そして農家の技術の3要素であり、真っ当な農業に取り組むには自家栽倍で立派な種を取ることが欠かせない、と訴えます。。それだけに自家栽培で種を取ることを制限されるのは農家の死命を制する問題だ、という農家の声を引き出しました。

○岡山県でぶどうの品種改良に取り組む育種農家を訪ね、種苗法改定を喜ぶ率直な声も紹介し、育種農家の熱意にうたれながら、結局山田氏は、種の問題では金儲けをしてはいけないのだ、という結論にたどり着いています。

○私は11月23日付のnote 「官僚をどう活かすべきか」で、前川喜平元文部科学事務次官の「学術は真理を求める営みで、真理は万人に開かれている。知的財産権を付与して私有化することはできないし、値段をつけて売り買いすることもできない」という言を紹介しました。種の問題を取材して、同じような感想を持ちました。

○種は経済行為につながる農業の元でありながら、それで直接金儲けをしたのでは、農業を発展させる力を失ってしまます。そしてこれは、農業だけの問題ではありません。。金勘定ですべてが割り切れるように見える資本主義社会自体が、その基盤は金もうけを排除した行為―人と人との信頼とか、約束といったことで支えられています。種つくりに金もうけの道を開く種苗法改定は、そうした社会の基盤を破壊することにつながります。たとえ今国会で種苗法改定が成立しても、その考えには反対していかなければなりません。##

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