賀状で見る コロナ下の日本社会
○2021年1月8日から12日にかけて、政府は東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏の1都3県をはじめ、大阪など関西から福岡まで11都府県に再度「緊急事態宣言」を発令しました。期間は2月7日まで。日本のコロナ感染は昨年末から急激に拡大し、広範囲で感染爆発の様相を見せています。政府の対応は後手後手で、発令時期が遅れた今回の宣言を含め、これで効果があるのか不安です。
○こうした状況の中で、日本社会はどうなっているのでしょうか。一般庶民はどんな気持ちで暮らしているのでしょうか。わたしのところにいただいた、300余通の年賀状は例年と異なり、単に新年を寿ぐものではなく、コロナに脅かされる社会、それに向き合っているはずの政治などへ自分の思いを吐露するものが目立ちました。いくつか紹介してみましょう。
○北陸の知人からの賀状です。
「自分は80代後半に入りましたが、70代半ばの妻に、
シカラレ ているのか
シカレ ているのか
スカレ ているのか
分からない日々が つづいております」
うあー、コロナ下の生活の亭主族の実態を、物の見事に表現しています。亭主族は、外に出られず(「外」こそ唯一の隠れ蓑なのに)、巣ごもりで、妻との力関係は劇的に変化しました。私もそうです。しかも、「コロナ」という言葉を一言も使わず、コロナ下の生活、と分からせるところがすごい!
○次は私のところでなく、友人のところに来た、ちょっとショッキングな賀状。
「実は…昨年例のクルーズ船に乗っていました。横
浜入港後、船内隔離2週間と、帰宅後は保健所によ
る保護観察2週間とで、脚・腰が劣化し、寝たり起
きたり医者通いの1年でした(健康に勝る財産な
し)。今年はコロナ禍の終息を願うのみ」
この人は80代の腕の良い建築設計技師。おととし自営の事務所を閉め、悠々自適で遊覧船に乗ったら、とんだ目にあったわけです。
○続いて、70代、地方在住の友人からの賀状です。
「五輪が吹っ飛び、トランプが吹っ飛び、首相も吹っ飛んだ。
病気の流行で世界史が変わる。それを目の当たりにすること
になりました。薄っぺらな制度や仕組みではごまかせない抗
えない事象ってやっぱりあるのですね」
コロナの衝撃の舞台が、家庭⇒社会⇒世界と広がるにつれ、衝撃の度合いは、むしろ弱まる気がします。コロナ禍の特質なのでしょうか。
○コロナの果たす役割をある種評価する意見もあります。60代の元記者2人の意見。
「世代間の、地方と都会の、富裕層と庶民の分断。
コロナが世の中のひずみを顕在化させた・・・」
「コロナはすべてを映し出す試薬のようです。
政治も経済も3流ですね」
こうなると、コロナをけなしているのか、褒めているのか、分らない。ただ、結果としてコロナが、日本社会のひずみを明らかにした面があるのは否定できないようです。
○少し明るい話を紹介しましょう。
「『寅さん全50作』鑑賞達成。全作品を通じて温かい家
族のかけがえなさを学び、わが家族への貢献を誓いました」
この人、ビデオばかり見ている高等遊民ではありません。ドラッグストアで、本人曰く「エッセンシャルワーカーとして」、懸命に働いています。
○友人(女性、70代)からの意気軒昂の賀状。
「5月から10月に都内の川独りウォーキングを完歩。
神田川25km、玉川上水43km、善福寺川11km、
妙正寺川9km」
毎日、1万5000歩を目標に歩いている(後期高齢、男性)という賀状も。コロナをきっかけに、健康になり、元気になった、という人も少なくありません。いいね!
○今のコロナ社会を俳句で表現しようとする人もいます。
「去年今年 傘寿貫く コロナかな」
こんな俳句も賀状にありました。
「生き残り 生き残りたる 寒さかな」
うまい!と思ってよく見ると、小林一茶の引用でした。うまいはずだ!賀状の主は、もちろん長野県の人。そろそろ80歳。
○さて、今後、我々はどう生きるべきでしょうか。元記者二人は明快。
「打倒、コロナ!」
「明るく、楽しく、元気よく
“不良”長寿を心がけています」
○最後は匿名でなく、「やまびこ学校」の佐藤藤三郎さんに締めてもらいましょう。藤三郎級長も85歳になったそうですが、ミニコミの「マスコミ市民」などを舞台にまだまだ健筆をふるっています。
「人間だれしも死ぬまでは生きるものです。今後も
変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます」
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