「麻雀」考
〇異例・違法な定年延長でポストにに居座わっていた黒川弘務東京高検検事長が産経新聞の記者と朝日新聞の社員(元記者)とで賭け麻雀をしていた、という「週刊文春」のニュースが2020年5月20日の夕方、ネットで流れました。翌日販売された「週刊文春」の関係記事の見出しは「黒川検事長は賭け麻雀の常習犯」という、黒川氏のアン・モラルぶりを厳しく糾弾するものでした。
〇翌朝、2020年5月21日の新聞、テレビは、いずれも「賭け麻雀報道」とサブ見出しを付けた上で、朝日、読売が「黒川検事長、辞意」、東京「辞任論強まる」毎日「交代検討」、日経「与野党から辞職要求」とほとんどが辞任の見通しばかり。NHKも朝7時のニュースで「辞任の意向を周辺に伝える」と報じました。
〇5月18日、「検察庁法改正案、今国会見送り」が決まった後、「今後は黒川氏の処遇が焦点」などと報じられていましたが、急転直下、大勢は決しました。安倍政権、「検察場所」で2連敗、といったところです。
〇しかし、黒川検事長の違法な定年延長問題は優れて政治の問題なのに、「賭け麻雀はよくない」というモラルの問題にされているのだとすると、少々引っ掛かります。こうした便宜的なとらえ方での決着の付け方は、今後に禍根を残すような気がします。第一、モラルが大きくものを言う社会は暗い社会です。黒川氏の麻雀について、何がとがめられるべきか、改めて考えてみたいと思います。
〇黒川氏の麻雀の問題のひとつは、そのやっていたタイミングにあることは間違いありません。今はいわば「非常時」。国民は政府や自治体から、不要不急の動きはするな、外出は自粛せよと強く求められ、麻雀屋さんもほとんどが休業に追い込まれている状況です。その中で政府側の人間が、いわゆる「密」の状態で、麻雀を楽しむとは! 国民に苦しいことを押し付け、為政者側は掟破りの楽しいことばかり──これはモラルではなく、政治姿勢の問題です。
〇それ以上に私が問題だと思ったのは、麻雀のメンバーの問題です。検事と記者(3人)という組み合わせ。 検事は都合の良い記事を書かせたい。一方、記者は情報が欲しい。まさに、利害関係者同士の組み合わせです。
「黒川検事長を有能で、人柄も良い」とほめた2020年5月13日の朝日新聞の記事は、くだらない、必要のない記事だと私は2020年5月14日のnoteに書きました。ほめているからいけない、というのではなく、この記事を読んでも、政権がなぜ黒川氏を検事総長にしたがるのかわからないからです。ここに金を賭けた麻雀が出てくると、それがこういう記事が出てくる背景なのか、と妙に納得させられてしまいます。麻雀をした元記者が直接書いた、とは思いませんが。
〇検事と記者の麻雀について、私自身の経験を紹介しておきましょう。検察担当を離れて5年ほどたったころ、私は東北の某県のNHKの放送局のニュースデスクをしていました。そこへ旧知の検事がその県の検察庁の検事正になってやってきて、麻雀に誘ってくれました。私以外は検事ばかりの組み合わせ。どうするのかなと思っていると、お金は賭けず、最後に集計した成績順に、お菓子かお酒か忘れましたが、賞品が出ました。検事の麻雀はこうやるのか、と感心したことを覚えています。
〇そう考えると、検事が麻雀をやるのがすべて悪いわけではありません。お金を賭ける問題も、相手により、金額によると私個人では思います。ただ利害関係のある相手と検事は絶対お金を賭けてはいけません。
〇今度の黒川検事長麻雀は、タイミング、メンバー、金を賭ける問題、いずれから見ても✖、のケースです。
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