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アラサーの女が起業して「ひとり出版社」を始めてみた

逆旅出版(げきりょしゅっぱん)という出版社をはじめたのが2022年4月。

あっという間に2年半が過ぎて、実は今、弊社の1冊目の書籍である「CAMPFIRE解体新書」の重版を進めている。

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これを機にいわゆる「創業者の思い」というか、何をどう考えて運営しているかを発信したくなって、このnoteを久しぶりに開いた。

書籍作りに関しては逆旅出版のサイトで、動画コンテンツはYouTubeで発信しているのだけど、もうちょっと素直な表現でも発信したかった。noteはマガジンで分けられるので、過去に書いたフィクションの小説はそのまま残している。便利。

今回は1記事ということで、あちこちで聞いてもらえる創業の経緯を話したい。

  • 思いがないと起業したらダメなのかな

  • 未経験で出版社って実際どうなの?

  • ライターからのセカンドキャリアに悩んでいる
    (私はもともとフリーライターだった)

という方に、何かヒントになる話ができたらいいなと思う。


原体験はとにかく本に囲まれた日々

まず、私は本が好きだ。

物心ついた時には毎日図書館に通って、1日10~20冊、読み続ける生活をしていた。お行儀が悪いが、ご飯を食べる時も読んで、小学校の登下校中も読んで、たまに電柱に激突していた。両親は共働きで友達も少なかったから、触れあえる距離感の人間より、本を挟んで著者と会話する時間の方が長かった。

そんな私の人生最初の絶望は、「これだけ読んでも、自分の寿命では世の中にあるすべての本はおろか、この市立図書館にある本さえ読み切れない」と気付いた時だった。
本気で夢を見て、本気で絶望できる子どもの感性って特別なものだと、アラサーになった今は思う。

ひとしきり絶望した私は「全てを読めなかったとしても、せめて限りある人生の時間を本に1番使いたい」と思った。

しかし、どうやら大人になると仕事というものをしなくてはいけなくて、それが1日8時間くらいとられるらしい。そもそも自分の寿命の短さに絶望している私にとっては、とんでもないことだった。

これを打破するには、本にまつわる仕事につくしかない……!

そう思った私は小学生ながらに文学賞に応募し始めるが、現実はそう甘くなく、いけて佳作というレベルだった。

このnoteも以前はフィクションの作品を投稿していて、一部コンテストに入賞した作品もあるのだけれど、客観的に見て自分の文章のレベルは……いまだ伸び代に満ち溢れている。

人は年齢を重ねるにつれ、社会性が求められる

人は年齢を重ねるにつれ、社会性が求められていく生き物だと思う。

社会性の要素はいろいろあるが、そのうちの一つであり、大きい要素としてあげられるのが「稼ぐこと」だ。
稼いでいるという事実は、一定数、誰かに「対価を支払ってもいい」と感謝されているのだし、得た稼ぎを使うというのは、その感謝のバトンを誰かに渡して社会の流れを作っている。

それに大人は気付いているから、まだ社会性が求められない子供のうちに、例えば「いい仕事につけるから進学校に行くべき」とか「就職難だから理系にすべき」みたいな感じで、やんわりと稼ぐことの重要性を伝えるのだと思う。

私のまわりの大人も責任感が強く優しかったから、上記のような言葉を沢山もらった。

しかし、こちとら絶望真っ盛り。

頭には「何とかして本と関わることで稼げないと辞めさせられちゃう!」という恐怖心だけが残った。
だから必死に考え続け、進路の話が具体的になってきたあたりでようやく見つけられた、学生の私ができることが「ライター」だった。

ライター業と燃え尽き症候群

実際にフリーライターとして仕事を始めたのは高校3年生のころ。
その後、大学進学や就職を経るのだが、やっぱりフリーライターとして独立。Webメディアの運営代行をするようになったり、旅好きをきっかけにホテルの会員向け情報誌や旅行系雑誌の立ち上げに関わったりした。

その間の業績は順調だったと思う。
ただ、25才で独立した後からずっと、私は燃え尽き症候群になっていた。

今でも手っ取り早く現金を稼ぐならライターほど最適な職業はないと思うし、あの時に積み重ねた経験は間違いなく宝物。

だが、ライター仲間たちが「○○さんとお仕事ができた!」とか「いつかあのメディアで書きたい!」と夢をキラキラ語っているのを見るたびに、「いや別に会いたい人はいないな、読みたい人はたくさんいるけど……」と思ってしまっていた。

「自分が文章を書くことが楽しく、他のどんな仕事よりも簡単に稼げる」というのが、私がライターを選んだ動機。けれど理想的なライターは、読まれることに喜びを感じたり、取材を楽しいと思ったりするのだと思う。

だからこそ、メディアなどでライターとして紹介してもらう度に「いや私よりライターらしい人なんていっぱいいるからな」と、罪悪感を覚えていた。

私にとってライター業やメディアの運営は「高校生の私が描けた最善の手段」で、「本を読んでいる時」とか「旅している間」みたいに、「ただ在る」その状態が好きというわけではなかったのだろう。

とはいえ「ライターで一旗あげたら社会性を保ちつつ、本に関われるはず」と幼少期からこじらせていたから、「もしかしてちょっとズレてきていない?」と認めるのすら大変だった。

今思えば、「やってみたら違った」なんてよくあることなのだけれど。

ちなみに、この燃え尽き期間に「好きなことだけじゃなくて苦手なこと(喋り)にも挑戦したら何か変わるかもな」と毎日配信を始めたり、旅YouTubeを開始したりした。ここで私を知ってくれた人も多いし、大きな財産。
燃え尽きることも、燃え尽きと共存しながら生活をするのも悪いことばかりではない。

燃え尽きに終止符をうったのは

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燃え尽きた日々に終止符を打ってくれたのが、弊社がだしている1冊目の本「CAMPFIRE解体新書」だ。

本書はもともと書店に広く並べるというより著者が普段やっている事業で使うことを目的をしていた。だから、出版社も担当編集も決まっていらず、編集業務やライティング講座をしていたのを知っていた著者が指名してくれた。

もう、作るのが楽しくて楽しくて!

まず、ゼロから構成を作り、原石とも言える初稿を読める。

今までの読んだ経験をもとに何度も推敲するうちにどんどん良くなる内容!著者と話す度に明確になっていく読者!

外装ができた感動!

ずっとWebで仕事をしてきたからこそ思う、デジタルタトゥーとは性質が異なる、本を作り上げた後の変化。

もう一気に虜になってしまった。そういえば幼い頃から本と一生を添い遂げると誓っていた。社会性にそそのかされて疎遠になっていただけ!

でも、それまでWebライティングをしてきたからこそ、良し悪しは抜きにして制作業は「納品してしまえばそのプロジェクトは一旦終わり」というのが分かっていた。

そりゃあそう。どんどん世の中にものを生みだすのが制作業であり、そういう契約。メールが一通くる程度で済めばいいが、やれ売れ行きがどうとか、戦略がどうとか、過去に作ったものすべての相談が舞い込んだら制作業者も時間が足りない。

だけど、携わった書籍が愛おしすぎて無理だった。
できることなら、完成した後もこの本に関わっていきたい!

そう思った時に、「もし自分が出版社だったら?」という選択肢が生まれた。この本が読者の手に届くまで関われるし、販売中の施策や、完売した先にどうするのかも携われる。大変かもしれないが魅力的で仕方がなかった。

それまでWebライターやWebサイト代行業でそろそろ法人成りした方が……などと考えてはいたものの、いろいろと面倒そうだし、そこまで長期的に見てやりたいことあるかな……とダラダラしていたのが、一気に覚めた。

情報は求める始めた途端に光って見えるものだと思う。
求めて検索すると「ひとり出版社の作り方」を紹介する書籍や、版元の方がやっているnoteなどたくさんのものがでてきた。そういう先輩方が残してくれた軌跡をお手本に、一つ一つ積み上げて逆旅出版の今はある。

私も近いうちにそういう次世代に繋がる何かができたら先輩方への恩返しにもなるかなと思うけれど、今はまだその余裕がない。やりたい施策も、刊行したい書籍も山積みだ。

そのうちの一つが、CAMPFIRE解体新書の重版。

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そう!
冒頭にも書いたが、CAMPFIRE解体新書の在庫が完売したので重版をする!

本作だけでなく基本的に弊社の本はすべて損益分岐点を越えられているから、未経験でもなんとか出版社の運営はできているのではないだろうか。

未経験でも頑張れば出版社はできる

  • 思いがないと起業したらダメなのかな

  • 未経験で出版社って実際どうなの?

  • ライターからのセカンドキャリアに悩んでいる

という方に、何かヒントになる話ができたら……など大げさな始め方をしてしまったので何とかまとめようと思う。

一つ目の結論として、未経験でも頑張れば出版社はできる。
もちろん「理想を叶えるためにはどうしたらいい?」と手段や戦略はとてつもなく考えているし、片っ端から好みで著者をくどいて、好きなだけ経費をかけて、勘で物事を判断していたらすぐダメになるだろう。
(実際、大手企業が出版部門を始めて即潰しているケースは多々ある)

弊社が今年に入ってプロデュースしている、北海道の地域おこし団体・一般社団法人えぞ財団の出版部門「EZOBOOKS」がある。EZOBOOKSで作る書籍は北海道を舞台にしていて、可能な限り地産地消をしている。

そういう「こだわり」は、世の中に受け入れてもらえる理由になることもあれば、足枷になってしまうこともある。

EZOBOOKSの場合は、EZOBOOKSのための「こだわり」なので、受け入れてもらえる理由になるケースがほとんど。だが、未経験の場合、捨ててはいけない「こだわり」のせいで判断を違えることも少なくない。

なので、相談できる人がいると心強い。あと、可能な限りミニマムに挑戦し、ひとつ判断したらそれが本当に正しかったか、正しくないならどう正しくないのかを精査すべきだ。

二つ目の結論として、思いの強さに関してだけれど……。
私のことを思いが強いと評してもらえたらそれは嬉しいことなのだが、どちらかといえば、かなり運の要素が強かったと感じている。

もちろん根底には自分の「好き」とかそういう思いがある。
だが、CAMPFIRE解体新書の著者が編集として声をかけてくれなかったら逆旅出版は生まれなかっただろうし、取次や書店の方々、それ以降の書籍に関わってくれたたくさんの人達の協力があってこその今だと考えると、やっぱり運の要素が大きい。

途中で「情報は求める始めた途端に光って見える」と言ったが、幸運もしかりで、求めながらウロウロして、タイミングになったら光って出会えたりする。

だからこそ、ライターだけでなくキャリアに悩んでいる方々はあまり悲観的になりすぎず、幸運と巡り合うまで試行錯誤すればいいのではと思う。

長文、最後までお読みいただきありがとうございました。

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