#28【劇評・絶賛】 劇団四季『ウィキッド』(前編)
映画版『WICKED』初の予告映像・公開
映画版『WICKED』の予告映像が公開されましたね。映画のアメリカでの公開は11月。楽しみです。
もとは、1995年刊行の『オズの魔女記』(グレゴリー・マグワイア著)を原作とした2003年のブロードウェイミュージカル。
アメリカでごく親しまれてている『オズの魔法使い』の前日譚で、知性と絶大な魔法の才能を隠し持つ緑の肌のエルファバ(後の西の悪い魔女)と、美貌と人気で勝ち上がろうとする金髪白肌のグリンダ(後の南のよい魔女)との青春ストーリーです。
オリジナルキャストはイディナ・メンゼルがエルファバを演じています。イディナ・メンゼルと言えば今や一番に思い出されるのは『アナと雪の女王』のエルサ。エルサの前にもギフテッドを演じていたのですね。自分の力を抑圧していたギフテッド・エルファバと、明るく美しい人気者の凡人代表グリンダの対比は、そのままエルサとアナの関係に似ています。アメリカではこうしたギフテッド女性の物語が価値を認められているのでしょうか。
ともあれ、イディナ・メンゼルの迫力ある歌唱が、エルファバ(Elphaba)やエルサ(Elsa)の圧倒的な能力を象徴するのにふさわしいのでしょう。キャラクター名の「エル」まで同じなのですね、「El」という響きに知性とか才能を象徴する意味でもあるのでしょうか……。
また、映画ではエルファバをシンシア・エリヴォが、グリンダをアリアナ・グランデが演じるそうです。シンシア・エリヴォは舞台『シスターアクト』(天使にラブソングを)で主人公デロリスを、『カラーパープル』でも主人公セリーを演じているのですね。『カラーパープル』は今映画をやっていますよね、観に行きたいと思ってました。
エルファバはギフテッドでもありますが緑色の肌で差別を受けるキャラクターでもあるので、この役を黒人の俳優さんが演じることは、よりこのメッセージを鮮明に打ち出すということでしょう。意欲的で楽しみです。
劇団四季版『ウィキッド』では男性ファンも多く見られました。
青春時代の友情と三角関係をベースに、才能を持つものの苦悩と持たざる者の悲哀、差別の問題、言語を奪うことと与えること、権力と能力と正しさはすべて別のことであること……など、多くの今日的な内面的課題を取り上げていて、広く心を掴むものがあると思います。
劇団四季版『ウィキッド』10年ぶり再演は、熱いファンの集いだった
さて、劇団四季版の『ウィキッド』が、昨年10月から、創立70周年記念で約10年ぶりに東京で上演され1月末に閉幕しました。
今後は大阪四季劇場で8月から上演されるようです。観に行きたい方はお早めにチケットをチェックされることをおすすめします。
くらたは10年前の時からこの『ウィキッド』ファンで、もちろん今回の東京公演も3回観に行きました。チケットは四季の会(劇団四季ファンククラブ)会員先行発売だけで完売するという人気ぶり。くらたは四季の会は入っておらずチャンスはチケットぴあの有料会員抽選のみでしたので、このためだけにぴあ会員になりました。年会費高いけど、おかげで3回観に行けたのでよかったです。
さて、10年ぶりの首都圏での再演はまさに熱きファンの集いでした。
開演1曲目「グッド・ニュース」の前奏が流れたとたん鳥肌が。
「グッド・ニュース」は、あの賢くてまっすぐな緑の魔女が、誰からも愛されることなく死んだと祝う歌。華々しければ華々しいほど悲しさが心に沁みる名曲です。また、しょっぱなからグリンダ様の超高音美声で横っ面をひっぱたかれるような衝撃の感動を味わえます。
まさかまたこの曲を生で聞けるとは、10年間頑張って生きてきてよかった……!
隣に座った20代くらいのお嬢さんは、開演直前までお連れの友達に仕事がいかに大変かという話をされていたのですが、開演して最初の曲が流れたとたんに号泣。わかる……わかるよ、泣けるよね!!!
その後も、いろんな場面ですすり泣く声が会場中から聞こえ、ファン一人ひとりの「マイ・『ウィキッド』」があるんだなあと感動。思い入れがある場面がそれぞれにあって、それだけくみ出しうる何かを秘めた作品なのですね。
※『ウィキッド』は好きすぎて1回では書ききれないので、数回に分けて書きたいと思います。