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LCA(ライフサイクルアセスメント)実施のポイント

1.LCA(ライフサイクルアセスメント)のニーズと注意点

自動車部品製造などサプライチェーンからの要求を受ける企業においては、LCAのニーズは従来から存在しています。また、LCAによって自社製品・サービスの排出するCO₂を見える化し、環境影響の少ない製品であることを顧客へアピールすることによって、販促につなげる動きもあります。

これからLCAを実施する場合において、特におさえるべきポイントを挙げます。今回は、環境影響を地球温暖化に限って話を進めていきます。

2.LCAの目的と範囲を明確にする

最初にLCAの目的(誰に何を伝えたいのか)を明確にすべきです。
特にLCAの結果を自社内の意思決定や戦略立案のみに使用する場合と、比較主張(競合する他社製品やサービスと比較して自社製品の優位性を主張する)を行う場合とでは、データ取得の精度や必要工数など、その後の対応が大きく変わってきます。(図表1)

図表1

3.算定範囲(システム境界)を明確にする

対象製品のライフサイクルの範囲を定めます。
原料の採取から輸送、部品加工、組立、仕様、廃棄・リサイクルまですべての段階を含む、いわゆる“ゆりかごから墓場まで”(Crade to Grave)の算定が基本ですが、算定範囲はLCAの目的によって変わります。
たとえば自社の新旧製品において比較を行う場合、下流側(使用~廃棄)の条件がまったく同じとすれば、算定不要として資源の採取から生産(Cradle to Gate)のみを範囲とするケースがあります。(図表2)
また、自社製品がどのように使用されるかはユーザーによって異なり把握が難しいとの理由から、下流側を算定に含めない場合もあります。

図表2

4.必要なデータの収集

(1)使用部品のリストアップと分類

製品を構成している部品や購入品およびその個数をリストアップします。
これにはBOM(部品構成表)を使用します。
製品には数百点~数万点の部品が使われています。できるだけ少ない工数でLCAの目的を達成するためには、材質別に分類を行うと良いです。鋼、銅、樹脂、ガラス、電気部品、空圧機器などに分類して集計します。
射出成形のパージ材を再利用するなど、自社工場内で材料をリサイクルされている場合は、新規材料の投入量を減じます。他社からリサイクル材を買ってくる場合については、新規材料の投入量を減らし、代わりにリサイクル材を加えます。

(2)自社の加工工程と消費エネルギーの把握

自社で加工する部品については一次データ(消費電力やガス使用量の実績値など)を把握することが求められています。電気設備においては、電力ロガーを取り付けた状態で加工を行い、ある期間での電力量の積算値を生産数量で除することにより、部品1単位あたりの消費電力を求めます。これをすべての工程において実施し、結果を合計します。

(3)購入品、仕入品、材料のCO₂把握

購入品や仕入れ品、材料については、できるだけサプライヤーから一次データを入手することが望ましいです。サプライヤーから一次データを得られない場合はIDEA等の二次データを使用します。サプライチェーン上での削減効果を反映させるために、一次データを取得してもらうよう働きかけていくことが重要です。

(4)輸送手段とトンキロ計算

製品や材料の輸送時の排出量を算定するためにトンキロ法を多く使います。
輸送量は、何トンの貨物を何キロ運んだかを示す、tkm(トンキロ)で表します。トンキロに排出原単位を乗ずることにより排出量を求めます。これを計算するために、輸送手段(10tトラックなど)、輸送重量、輸送距離、積載率の情報を収集します。

一般に物流形態は複雑であり、走行距離や積載率が毎回異なる場合もあります。これらのケースでは、およそ平均的な走行距離と積載率を見積もります。必要に応じて、期間を決めて実際にデータを取得します。ミルクラン方式を採用されている場合は、標準的な配送ルートを仮定して算定を行うなど、工夫が必要です。

5.LCAデータベースの利用、排出原単位の選択

項番3で集計した活動量に排出原単位を乗ずることにより、GHG排出量を算定します。
排出原単位は主にLCAデータベースから選択します。日本では、LCAデータベースとしてIDEAを使用することが一般的です。
適切に排出原単位を選ぶことは、算定者の力量に依存し、算定結果に大きな影響を与えるため、各々の排出原単位についての説明を読み、理解した上で使用する必要があります。

6.クリティカルレビューの実施

クリティカルレビューとは、LCAが方法論、データ、解釈、報告に関する要件を満たしているか、原則に合致しているかを検証するプロセスです。
特にLCA結果を比較主張に用いる場合は、クリティカルレビューは必須となります。
クリティカルレビューは、LCAを実施した組織内部の専門家が行ってもよいのですが、LCAの実施者と異なる者が行う必要があります。
比較主張を行って結果を開示する場合は、利害関係者を含むクリティカルレビューの実施を行わなければなりません。

7.まとめ

LCAを実施する上では、自社製品に有利な算定をしてはなりません。
算定条件や範囲を統一するなど公正な実施に努め、算定過程や根拠を示せるようにしておくことが重要です。


二酸化炭素排出量の見える化や、ライフサイクルアセスメントの実施については以下の連絡先までお問い合わせ下さい。

本件に関するご相談/お問い合わせ

(執筆者:中産連 コンサルタント 木村)


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