続.身近な”空気”からカーボンニュートラルを考える
空気を賢く使えば、電気代が下がる
今回は、大気から“無料”の空気を調達して、その空気を圧縮して使用している企業を取り上げます。燃焼に空気を使っている企業より数は多いです。そうした企業では、圧縮された空気により、生産ラインでシリンダーを動かすことで部品を移動させたり、金属切削後に部品に残った切粉をエアで飛ばすのに使ったりします。
空気はタダなのに、なぜ空気を使うときにエネルギーが必要なのでしょうか?
こうしたエアは大気圧(0.1MPa)を圧縮することで、何倍(例:0.7MPa)もの高圧のエアに変えて使います。その際、スクリュー型コンプレッサー(圧縮機)のスクリューを高速回転させることが必要で、電気を使ってモーターを動かしています。
そのような生産ラインをもっていない事業所でも、エアコンは使用しています。エアコンのほとんどは電気を使って圧縮機を動かしているタイプ(ヒートポンプ型エアコンという)です。ただし、圧縮するのは空気ではなく、フロンですが。
空気にせよ、フロンにせよ、気体を圧縮するのに使われている電気をなるべく使わないようにしてコストを下げるにはどうしたらよいでしょうか?
そのためには、「省エネ」と、「節電」という2つの方法があります(下図)。
「省エネ」というのは、電気を使う時間に着目し、その時間を短くしますことが基本です。節電とは、電気を使う長さではなく、1秒当たりのエネルギー量(W[ワット])を下げることを重点におきます。
省エネには、(1)「生産していない時間[非稼働時間]には電力を使わない、(2)「生産している時間[稼働時間]自体を短くする」の2種類があります。
(1)の例をあげると、レーザー加工機などを使ってプログラミングにより自動で金属加工をしている場合があります。加工が終わり、加工機が停止しても、コンプレッサーは動き続けたままになっています。自動車にたとえれば、アイドリング状態です。就業時間内であれば誰かがコンプレッサーを手動で停めればいいし、夜間で無人の場合は、プログラミングを組みなおして非稼働時間にはコンプレッサーを停めることも可能です。
(2)の方法では、工程改善などによりコンプレッサーの稼働時間自体を短くします。たとえば、空気が通る配管から空気が漏れていることが多いです。そのエア漏れをテープで防げば、漏れている部分のエアが正常に供給されることになり、使用時間も短縮できます。エア漏れしているかは、機械が動いていない静かな環境で、自分の耳かエア漏れ検知器を使って発見します。スーパーでもらうポリエチレンの袋から空気を出して、その袋でエア漏れをしている穴を塞ぎ、ある一定の体積に膨らむまでにどれくらいの時間かかったかを測定すれば、エア漏れ量も算出できます。
次の方法は「節電」です。この方法は電気の一瞬のエネルギー量を小さくすることを狙います。
コンプレッサーの場合、より定格電力が小さい小型機に買い替えたり、インバーターを取り付けて生産量の変動に応じて、モーターの回転数を自動制御したりすることで、電力の最大負荷を下げます。電力の基本料金は、事業所の最大負荷で決まるので、節電は基本料金を下げることに役に立ちます。
(執筆者:中産連 主席コンサルタント エネルギー管理士 梶川)
自動車部品製造業・産業機械製造業・廃棄物処理業を中心に、温室効果ガス排出量算定・削減、省エネ診断、環境法令順守コンサルティングを行っています。
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