妻による声明(2023.12.26)

夫のnoteで発表があった通りですが、第六天魔王知乃氏(以下、「知乃氏」と言います)と夫の裁判が、夫の勝訴ということで結審しました。知乃氏からは既に賠償金が支払われており、原告─被告間での一連の法的手続きは終わっています。
訴訟について気にかけてくださった方々、優しい言葉をかけてくださった方々、夫や私に賛同であれ反対であれSNS等で会話をしてくださった方々に、この場を借りて御礼を申し上げます。ありがとうございました。

ここまでの約一年間についての私見を、文章に残しておこうと思います。

 そもそも夫が訴訟に踏み切ったのは、烏滸がましい話ではありますが知乃氏らの自省の契機となればという思いもあってのことでした。
>これは勝手な願望に過ぎないのですが、知乃氏には今は難しくともいつか「故意に他者を傷つけた。それは暴力であった」という認識を持ち、繰り返さないようにしつつハラスメントに抗議する姿勢をとっていただければ嬉しいです。この度の提訴がその契機となれば幸いです。(中野雄斗note「妻による声明」より)

 しかし、それは無理かもしれないというのが現時点での私の感想です。
 質問状送付から結審までの間にも、以下のようなことがありました。

ⅰ)知乃氏が、訴状が届いた後も、ハラスメント講習に講師側の人間として参加していたと見られること。※受講者が訴訟について知っていたかどうかは不明(2023年2月)
ⅱ)田中円氏が、知乃氏が暴言を吐いて訴えられたことについて支持するように読める文章をSNSに掲載していたこと。(2023年3月)

 これらを通じて、夫が勝訴こそしたものの、知乃氏やその周囲の方が「去勢した方がいいという言葉を投げかけるのは、良くないことだった」という視点を持つ可能性は、私はあまり高くないと感じてしまいました。
 もちろん、前提として「期待すること自体が傲慢」という評価は避けられませんし、被告が内心どう思おうが、原告に対して賠償責任を果たせばそれで終了になるのが裁判というものだとも思いますが……。
 
そこで、私は今回の勝訴に寄せて、これまで知乃氏やその周囲の方に傷つけられてしまった人々や、傷つけられてこそいないものの口を閉ざさざるを得ないと感じた人々に対して、あるいは今後同じように正義を掲げる人によって攻撃が行われてしまったときのために、今考えていることを書いておきたいと思いました。
ここ数年のあいだに、

 (そう読めるようなものも含め)「死ね」という言葉を吐かれてしまった人。
 罵るような物言いや怒声、威圧的な態度を受けてしまった人。
 失礼と言わざるを得ないやり方で揶揄されてしまった人。
 
 私が見聞きしただけでも、少なくとも上記のような人々がいたと思います。
 ※これらは、誰でもアクセス可能な公開の場で起きたことのみ記載しています。

 ハラスメントに反対しているから、フェミニストだから、相手が100%正義だなんてことはありません。ハラスメントに反対していようがフェミニストだろうが、他人を攻撃したり傷つけたりしてしまうことも、あります。また、女性だから、被害を受けたことがあるから、一切間違ったことを言わない・しないということも、ありません。
 属性が即座に言動の無謬性を保証するというのは危険な発想だと思います。「演出家が言っているのだから正しい、とにかく従うべし」という発想が危険であることと同じように(もちろん、属性が即座に言動の加害性を保証するというのも同様に危険な発想だと思います)。 
 だから、上記のような人々が受けた傷が、相手の属性だけで即座に「正しくない」ことになるなんてことは、ありません。攻撃は攻撃、それによって受けた傷は傷だと思います。
 それをある種証明できたということに、今回の勝訴は意味があると私は感じています。

 正義を口実に攻撃を正当化してしまっていないか、攻撃することも正義に含めてしまっていないか、一度考えてみるのはどうでしょうか。正義を口実に正当化された攻撃に屈する必要も、ないと思います。
 これは今回の訴訟のことだけでなく、世の中のさまざまなことについても言えるのではないでしょうか。

 最後に、以下は知乃氏個人に向けたものではなく、私の個人的思想を述べたようなものに過ぎませんが、今その渦中にある、あるいは今後そのような目に遭ってしまったときの誰かに何かが伝わることを願って、ここに書いておきます。
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 あなたが誰かを明確に「攻撃」してしまっているときに、それを止めない人や褒める人、「もっとやれ」と言う人は、あなたを愛していないと思います。
※「愛している」というのは、「大事にしている」という意味です。恋愛に限った意味ではありません。
 人を攻撃すれば、あなたも傷つくことになりやすいのです。今は何もなくても、将来「しっぺ返し」を食らうかもしれません。そうでなくとも、人を攻撃するというのは、自分の心にもダメージを受けることだと思います。良い気持ちにはなりにくいと思います。
 そのとき、直接あるいは一番傷つくのは、あなたです。止めなかった人や、「もっとやれ」と言った人ではありません。
 あなたのことを「こいつが傷ついても、自分は何とも思わない」と思っている人だけが、あなたが誰かを攻撃していても、止めないのです。
 あなたを愛しているなら、あなたが傷つきそうなことは、止めるんじゃないでしょうか。
 私のことをバカだな、わかってないな、偉そうだな、と思っても、もちろんいいです。でも、「あなたが攻撃しても止めない人は、あなたを愛していない」という考え方がこの世にあるということは、覚えておいてくれると嬉しいです。
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