見出し画像

『少女は卒業しない』朝井リョウ(集英社文庫) 映画『少女は卒業しない』

 原作は7人の少女を主人公として描く連作短編集となっています。7つの短編は『桐島、部活やめるってよ』ほどの関連性は持っていないものの、随所に関連性を見せる所があるので、最初から順番に読むことをお勧めします。回想シーンと卒業式の当日を織り交ぜながら人間関係を整理しながら描くことでわかりやすいものになっています。朝井リョウは若者の心理描写に長けていて本作にも多くの心理描写がみてとれます。文章だけで少女たちの心理の変化を機微に触れることができました。個人的には「エンドロールが始まる」が好きです。ストーリーとしては妄想小説にあるようなものでしたが情景描写と心理描写の豊かさによって淡く切なく儚い恋愛を見ることができました。特に最後のシーンには美しさを感じました。

 映画は原作の中から4人の少女をピックアップした作品になっていました。4人の物語は原作とは異なる点も多々あり、脚本家の方のオリジナル設定がありました。また回想シーンを多くは使用せず卒業式の前日と当日の出来事を中心に描いていたことで少し薄い内容になってしまっていると感じました。ただ、ドラマ感が少なく高校生の青春をリアルに切り取った感じがして良かったです。また、河合優実や小野莉奈など若手女優の演技がとても上手く作品の内容がスッと入ってきました。
 
 双方良いと思う点がありましたが、個人的には原作小説の方が好きです。短編集ということもあり、それぞれにクライマックスが存在して飽きることなく読み切ることができると思います。映画は上映中ですので気になったらぜひ見に行ってみてください。

いいなと思ったら応援しよう!