無足場工法とは?使われる状況とメリット・デメリットを解説 2024/5/24
外壁の補修を検討しているけれど、隣の建物と距離が近いために足場が組めず、悩んでいる方もいると思います。そのような場合におすすめしたい足場工法の1つに無足場工法があります。
今回は、無足場工法が使われる状況や、メリット・デメリットを解説します。本記事を読むことで、近隣への影響に配慮した無足場工法を選択肢に入れられるようになるでしょう。
1.無足場工法とは
建物の補修工事や修繕工事を行う際に、足場を組み立てずに施工する方法を「無足場工法」といいます。無足場工法では建物の屋上に吊元となる器具を設置し、ロープやゴンドラを吊り下げて、作業員が上下左右に移動しながら作業を行います。
無足場工法は高所での時間がかかる作業のように思えますが、ベテランの作業員が行うことで、仮設足場が組めない場所でも工期の短縮が可能です。
仮設足場を設置する場合、雨などで足場が濡れることにより、足場上で滑って災害が起きる危険性がありますが、無足場工法にはその心配はありません。主に2種類の方法があるため、それぞれ解説します。
1-1.ロープアクセス
屋上に設置した器具と作業員が装着したフルハーネスをロープでつなぎ、作業箇所に下降する方法をロープアクセスといいます。ロープに体を預けて宙吊り状態で高所作業を行うため、一見危険なように思えますが、比較的安全性は高いです。
安全の理由は、厳格な基準をクリアした産業用のロープを使用しており、このロープを外さない限り落下する心配がないためです。ロープアクセスは、無足場工法の中では主流な施工方法です。
1-2.ゴンドラ作業
ケージと呼ばれる箱を屋上から吊り下げ、中に乗った作業員がリモコン操作で上下左右に移動して作業を行う方法をゴンドラ作業といいます。ゴンドラ作業は、都心部などの建物直下に歩行者が多いエリアや、仮設足場は組み立てられないけれどスペースには余裕のある場合などに採用されます。
2.無足場工法はどんな場合に使われる?
外壁塗装やタイル・コンクリートの補修などの作業では、一般的に仮設足場を設置します。約40cmの床材とそれを支えるための支柱が10cmのため、組み立て時のスペースも考慮すると、仮設足場の設置には隣の建物との間に70cm以上の距離が必要です。
しかし、作業場所の立地や近隣の状況によっては仮設足場を設置するスペースを十分に確保できない場合もあります。ここでは具体的な状況を2つ紹介します。
2-1.隣家との距離が近い
建物が密集している住宅地などでは隣家との距離が十分ではなく、仮設足場の設置ができないと判断される場合があります。また、都心部で仮設足場の設置を行おうとすると、足場材を積んだトラックや足場材を置くスペースが確保できない可能性もあります。
外観に関しても、特にテナントが入っているビルなどは、仮設足場を設置してしまうと看板や店舗の外装が隠れてしまい営業妨害になりかねません。こういった場合にも無足場工法を採用することが有効です。
2-2.隣家の敷地を貸してもらえない
隣家との距離が近く、依頼主の敷地だけでは仮設足場を設置できない場合、隣家の敷地を借りて仮設足場を組むことがあります。しかし、隣家と面識がなかったり良好な関係が築けていなかったりすると、敷地の所有者から承諾を得られないことも考えられます。
隣家からの理解を得られない場合は、トラブルにならないよう、無足場工法が選択されます。
3.無足場工法のメリット
足場を必要としない無足場工法には、「足場費用のコストダウンと工期の短縮」「防犯上の心配がない」「近隣や店舗への影響を少なく工事が可能」という3つのメリットがあります。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
3-1.足場費用のコストダウンと工期の短縮につながる
無足場工法では、足場の組み立てや解体の必要がないため、工事費用を大幅に抑えることができます。
新築工事や補修や修繕の範囲が広い工事の場合は、足場を組み立てた方が効率的ですが、部分的な作業のために足場を組み立てると非効率的で余計なコストが掛かってしまいます。
実際に、仮設足場に関する費用は、外壁補修や修繕を行う際の費用全体の約30%を占めます。
無足場工法は仮設足場の費用の大幅な削減だけでなく、組み立てや解体にかかる時間も発生しないため、工期の短縮にもつながります。また、仮設足場の設置には事前に近隣の方に許可を得る必要や、関係各所に届出を出す必要があり手間がかかりますが、無足場工法ならそういった手間も省けます。
3-2.防犯上の心配がない
入居者がいるマンションの補修や修繕工事などで仮設足場を設置すると、部外者がベランダなどから侵入しやすくなるため、防犯上不安に思う方もいるでしょう。実際、設置された仮設足場からベランダに侵入され、盗難などの被害を受けたという事例も多くあります。
一方の無足場工法は、侵入経路となる仮設足場を作らないため、防犯面で安心できます。また、仮設足場を設置する場合、メッシュシートなどで建物が覆われてしまいます。これに伴い日差しや風通し、外の景色が遮られてしまうため、入居者の生活に悪影響を及ぼす可能性があるのです。
無足場工法ならば入居者の住空間の快適性が損なわれる恐れがなく、普段通りの生活を送ってもらうことができます。
3-3.近隣や店舗への影響を最小限に抑えた工事ができる
隣家との距離が近い場所で足場作業をする場合、隣家の敷地を借りて仮設足場を設置する必要があったり、仮設足場の組み立て・解体時に音が発生したりと近隣に影響を与えてしまいます。
一方、無足場工法なら仮設足場の組み立て・解体時の音や職人が足場上を移動する音が発生しないため、近隣や店舗営業への影響を最小限に抑えることができます。
また、仮設足場を設置する場合は隣の建物との間に60~70cmの間隔を必要としますが、無足場工法であれば40cmほどの間隔があれば作業できるため、隣の建物との距離が近い場合でも有効です。
4.無足場工法のデメリット
メリットの多い無足場工法ですが、「作業範囲が限られる」「施工後の確認ができない」「対応している業者が少ない」などのデメリットも存在します。それぞれ解説していくので、デメリットも理解したうえで、適切な施工方法を選定しましょう。
4-1.作業範囲が限られる
無足場工法では、屋上にロープやゴンドラを設置して作業するため、三角屋根の建物や一部が突き出している形状の建物には使用できません。
また、仮設足場ならば作業員が上下左右に自由に移動して作業ができるのに対し、無足場工法では移動範囲が限定されてしまいます。補修や修繕などで広範囲に作業を行う場合は、仮設足場を設置する工法のほうが作業効率が良いといえます。
4-2.施工後の確認ができない
無足場工法では、施工場所に作業員しか立ち入ることができないため、依頼主は補修状況を目視で確認することができません。補修後の状況を実際に目で見て確認したい依頼主に対しても、写真で確認してもらうしかないのです。
4-3.無足場工法に対応できる業者が少ない
徐々に注目されてきている無足場工法ですが、通常の足場工法に比べて対応している業者が少ないのが現状です。コスト面を考慮して無足場工法を選定したくても、地域やタイミングによっては対応できる業者が見つからない場合もあります。
5.まとめ
今回は、無足場工法が使われる状況やメリット・デメリットを解説しました。近隣への影響が少なく、コスト面でも優れた無足場工法ですが、利用するには施工する建物の形状・作業範囲・業者選定などの制限があります。
そのため、細かな条件を考慮したうえで、無足場工法の採用を検討することが重要です。本記事を参考に無足場工法が選択肢に入るかどうかを含め、近隣への影響に配慮した安全な工事現場を目指しましょう。
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