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ロングスパン工事用エレベーターとは?建設用リフトとの違いや設置基準を解説 2024/5/13

工事現場ではロングスパン工事用エレベーターという言葉を耳にしますが、どんな役割や設置基準があるか知っていますか?ロングスパン工事用エレベーターの設置基準を知っておくことで、現場の作業性はもちろん、安全性も向上します。

今回はロングスパン工事用エレベーターと建設用リフトの違いや設置基準について解説します。本記事を読むことで、ロングスパン工事用エレベーターの設置ルールについて理解し、現場における作業性と安全性の向上を目指しましょう。


1.ロングスパン工事用エレベーターとは?

ロングスパン工事用エレベーターは、建築や土木の工事現場において人や資材を運搬するために使用されるエレベーターのことです。運転に資格や就業制限などはありません。ただし、エレベーターの設置には行政への届出が必要になります。また「運転方法の周知」として、エレベーターを使用する労働者に運転の方法及び故障した場合における処置を周知させる規定があります。

エレベーターの構造や周囲の安全設備については、厚生労働省の「エレベーター構造規格」によって強度や規制が課されています。ロングスパン工事用エレベーターの規格は、昇降速度が10m/min以下で、積載荷重は1トン程度の製品が一般的です。

また、ロングスパン工事用エレベーターは、エレベータ構造規格第16条においては、「工事用エレベータであって、搬器として三メートル以上の荷台を使用し、定格速度が毎秒〇・一七メートル以下のものをいう」と定義されています。

2.建設用リフトとの違い

建設や土木の工事現場において、ロングスパン工事用エレベーターが人と資材をともに運搬できるのに対して、建設用リフトは、資材を運搬することのみを目的とするエレベーターのことを指します。

建設用リフトは、押しボタンスイッチの操作によって簡単に荷物の揚重を行うことができます。ただし、建設用リフトの運転業務に従事するには、建設用リフト運転特別教育を修了するか、それに準じた処置を受ける必要があります。

3.ロングスパン工事用エレベーターが使用される現場は?

ロングスパン工事用エレベーターは、市街地などでクレーンなどの大型重機が利用できない、または利用しにくい立地条件の作業場所で材料や人の揚重を効率的に行うために活躍します。

また、建設中の各階で使用する材料をクレーンにて揚重する場合、足場に荷揚げ用の開口ステージを組み立てなければならず、開口部となるため安全面でも非常にリスクが高いといえます。

そこで、ロングスパン工事用エレベーターを適切に設置することで、作業性と安全性の向上を期待できます。

4.ロングスパン工事用エレベーターの設置基準

便利なロングスパン工事用エレベーターですが、適切に設置されていないと非常に危険で、事故の原因となります。実際に工事現場でのロングスパン工事用エレベーターに関する事故事例も少なくありません。

事故を避けるには、厚生労働省の「エレベーター構造規格」に定められた設置基準をしっかりと守ることが重要です。ここではそのルールについて解説します。

4-1.ロングスパン工事用エレベーターの昇降路周囲の養生

ロングスパン工事用エレベーターの昇降路周囲の養生については、エレベータ構造規格において、「出入口(非常口を含む。次号において同じ。)の部分及び人が近づく恐れのない部分を除き壁又は囲いが設けられていること」や「出入口に戸が設けられていること」、「前項第一号の壁又は囲い及び二号の出入口の戸は不燃材料で造り、又は覆ったものでなければならない」と定められています。

ここで述べられている「人が近づく恐れのない部分」とは、搬器の昇降する通路の周辺であって、床面から1.8m以上の部分で、周囲に足場などのない部分をいいます。

また、「壁又は囲い」とは、人体等を昇降路と遮断するものであり、手指等が入らない鉄鋼等を用いたものを指します。

ロングスパン工事用エレベーターによる挟まれ、巻き込まれ事故はよくある事例のため、手指が入らないよう、しっかりと養生する必要があります。

4-2.ロングスパン工事用エレベーターの搬器

ロングスパン工事用エレベーターの搬器は、人が乗る部分と荷を積む部分から成ります。エレベータ構造規格第21条第2項にて、人が乗る部分(搭乗席)の周囲は高さ1.8m以上の囲いを設け、頭上には堅固なヘッドガードを取り付けるよう定められています。

人はこの囲いとヘッドガードが取り付けられた場所にしか乗ってはいけません。また、荷物を積む部分には高さ90cm以上の手すりを取り付けます。

4-3.ロングスパン工事用エレベーターの積載荷重

エレベータ構造規格第22条において、ロングスパン工事用エレベーターの搬器の積載荷重は、「搭乗席の床面積一平方メートルにつき二百六十として計算を行って得た値に搭乗席以外の部分の床面積一平方メートルにつき百として計算を行って得た値を加えた値」以上でなければならないと記されています。

具体例として、人が乗る部分(搭乗席)の床面積が1m2であり、その他の部分(荷物を積む部分)の床面積が5m2だとします。この場合の積載荷重は、以下のようになります。

搭乗席:1(m2)×260(kg)=260(kg)
その他:5(m2)×100(kg)=500(kg)
ロングスパン工事用エレベーターの積載荷重:260(kg)+500(kg)=760(kg)

積載荷重は、ロングスパン工事用エレベーターの各メーカーと機種によって異なる値が定められているため、しっかりと確認して搬器の見えやすいところに掲示しておき、使用する際にその値を超えないよう管理しなければなりません。

4-4.ロングスパン工事用エレベーターの床先の間隔

エレベータ構造規格第23条において、ロングスパン工事用エレベーターの床先の間隔について「昇降路の出入口の床先と搬器の出入口の床先との間隔は、四センチメートル以下でなければならない」、「昇降路壁と搬器の出入口の床先との間隔は、十二・五センチメートル以下でなければならない」と定められています。

つまり、各階の昇降路の接する床面において、床先の間隔を出入口部では4cm以下、その他の部分では12.5cm以下となるようにロングスパン工事用エレベーターを設けなければなりません。

設置の際は、数センチずれただけでロングスパン工事用エレベーターと昇降路の床が接触してしまう恐れがあるため、経験を積んだ鳶工により、建物の逃げ墨や下げ振りなどを使用して設置してもらうとよいでしょう。

4-5.ロングスパン工事用エレベーターの安全装置

エレベータ構造規格第32条において、ロングスパン工事用エレベーターには、以下の安全装置を備えなければならないと記されています。

・搬器の昇降を知らせるための警報装置
・搬器の傾きを容易に矯正できる装置
・搬器の傾きが十分の一のこう配を超えないうちに動力を自動的に遮断する装置
・遮断設備が設けられているものにあっては、遮断設備が閉じられていない場合には、搬器を昇降させることができない装置
・走行式のものにあっては、搬器を最下部に下げた状態でなければ走行させることができない装置

ロングスパン工事用エレベーターの搬器が昇降する際には、近くにいる作業員が挟まれたり巻き込まれたりしないよう、必ず警報音が鳴るように設定しておく必要があります。

また、昇降しているうちに左右に傾きが生じてしまうため、それを自動で矯正する装置を備えるとともに、勾配が10分の1を超える前に停止する装置を備える必要があります。

これらの装置が正常に稼働しているかを日々点検し、異常がない場合でも専門業者に定期的に点検を依頼する必要があります。

5.まとめ

今回はロングスパン工事用エレベーターと建設用リフトの違いや設置基準について解説しました。便利なロングスパン工事用エレベーターですが、安全のための設置基準を遵守することが、現場での事故を防ぐためには重要です。

本記事を参考にロングスパン工事用エレベーターを適切に使用し、現場における作業性と安全性の向上を目指しましょう。


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