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型枠支保工とは?足場との違いや種類を解説 2023/8/22

建築技術は古くからありますが、日本では19世紀末から飛躍的な発展を遂げています。その要因となったのが、国内工場におけるセメントの生産です。

それまでセメントは海外から輸入していましたが、国内でセメントが供給できるようになると、コンクリートを使った建築物が多くつくられるようになりました。

コンクリートは、セメントに水・砂利・砂を混ぜ合わせてつくる建築材料で、建築物の基礎や柱、梁や壁といったものに使用されています。

強度が高いことが特徴のコンクリートですが、引張応力に弱いという弱点があります。この弱点を解消するために、コンクリートの中に鉄筋を入れた「鉄筋コンクリート」が大規模な建築物に採用されています。

この便利な建築材料を使用するためには、コンクリートを流し込む型枠が必要です。今回は、コンクリート作業に欠かせない型枠支保工について解説します。


1.型枠支保工(かたわくしほこう)とは

型枠支保工とは、コンクリートを設計通りの形にするために、型枠を組んで支えて保持することです。簡単な言い方をすれば、コンクリートを流し込む際に、型枠が崩れないようにすることです。

コンクリート作業において、生コンクリートを型枠に流し込む時、型枠の内側には大きな内圧が発生します。コンクリートの型枠をしっかりと保持していないと、型枠が壊れてしまうこともあり、せっかく流し込んだコンクリートがムダになってしまいます。

コンクリートを流し込んだ時に型枠が壊れてしまうと、流れ出たコンクリートを片付けなければなりません。

コンクリートを片付けるためには、硬化するまで工事を中断しなければならないのはもちろん、硬化したコンクリートを斫って除去しなければならず、その手間もムダになります。コンクリート作業を確実に行うために型枠支保工が重要なのです。

2.足場との違い

型枠支保工とよく間違えられるのが、足場組み立て工事です。足場組み立て工事は、作業を行うための足場を組むことです。

一方型枠支保工は、コンクリートを流し込むための型枠を支えて保持するための作業のことを指します。どちらの作業にも、鉄パイプを使用しているため、建設業界以外の人が見ると同じような作業に見えるかもしれません。

足場組み立て作業は作業者が高所で安全に作業できるようにする仕事に対して、型枠支保工はコンクリートを流し込むための型枠を組んで崩れないようにする仕事です。

3.型枠支保工の種類

型枠支保工は、主に次の6種類に分類されます。
・パイプサポート式型枠支保工
・枠組式型枠支保工
・軽量支保ばり式型枠支保
・組立鋼柱式型枠支保工
・四角塔式支保工(ID-15)
・くさび結合式型枠支保工

3-1.パイプサポート式型枠支保工

一般的に広く使用されているのが、パイプサポート式型枠支保工です。パイプサポート式型枠支保工では、せき板・根太・大引き・パイプサポートという部材を用いて行います。

せき板とは、生コンクリートが硬化するまで、流れ出ないようにするための板のことです。せき板の材料は、主に合板が使われていて、自由に加工ができます。

せき板の表面は、黄色い樹脂が表面処理されたものが多いです。表面処理を行うことで、コンクリートの表面が滑らかで綺麗に仕上がるだけでなく、コンクリートが硬化した後に型枠を外す作業が容易になります。

型枠を支持するパイプサポートは、上下2本の鋼管を組み合わせることで、型枠に合わせて自由に調節できます。

3-2.枠組式型枠支保工

枠組式型枠支保工は、外部足場に使用する門型の資材(建枠)と、その付属部材を用いる支保工です。外部足場を流用するため、効率的な工法と言えますが、通常の足場には生じない、水平方法の応力を考慮する必要があります。

流用する足場については、足場としての応力以外に、型枠を支える応力を考慮した設計が必要です。

3-3.軽量支保ばり式型枠支保工

軽量支保ばり式型枠支保工は、高汎用性のある軽量支保はりを使用して行う方法です。型枠のせき板を支持する部材として、根太(ねだ)と大引き(おおびき)があります。

型枠支保工において根太とは、せき板に接する部材で鋼管や単管パイプ、時には木材を使用する場合があります。大引きとは根太を支える部材で、型枠支保工の場合は9センチメートルの角材が使われることが多いです。

軽量支保ばり式型枠支保工は、主に鉄筋コンクリートづくりの建築物において、床の荷重を支える構造床(スラブ)を打設する時に使用されます。

3-4.組立鋼柱式型枠支保工

組立鋼柱式型枠支保工は、H形鋼やI形鋼などの様々な断面の形を持つ形鋼の鋼材を現地で組み立て、支柱として用いる型枠支持工です。1本あたりの許容荷重が大きい材料を使用するため、主に土木作業の工事で使用されます。

3-5.四角塔式支保工(ID-15)

四角塔式支保工は、6点の基本部材で構成されており、クレーンで吊り上げることのできる支保工です。

クレーンで吊り上げることができるため、組み立て後に移動することができ、作業しやすい場所で組み立てた後に移動することによって、作業効率が向上し工期短縮が可能です。

許容荷重についても最大24トンもあるため、部材と部材のスペースを広く取れることも特徴です。

3-6.くさび結合式型枠支保工

くさび結合式型枠支保工は、支柱1本あたりの許容荷重が6トン程度と大きく、建築、土木工事を問わずに対応できる方法です。

くさび結合式型枠支保工は、くさびによって簡単に組み立てることができ、使用する工具もハンマーのみで行えます。組立てや解体作業が迅速にできることが特徴です。各メーカーからは、システム支保工として多くの種類の製品が販売されています。


4.型枠支保工を扱うのに資格が必要?

型枠支保工を行うためには、型枠支保工の組立て等作業主任者という国家資格が必要です。

型枠支持工を扱う場合は、必ず資格を持った作業主任者の選任が必要です。型枠支保工の組立て等作業主任者の資格を取得するためには、厚生労働省が認可した団体の型枠支保工の組立て等作業主任者技能講習を修了する必要があります。受講資格は、次の通りです。

・型枠支保工の組立て又は解体に関する作業に3年以上従事した経験を有する者
・大学、高等学校又は中等教育学校において土木、建築に関する学科を専攻して卒業した者で、その後2年以上型枠支保工の組立て又は解体に関する作業に従事した経験を有する者

引用:建設業労働災害防止協会 岡山県支部 
型枠支保工の組立て等作業主任者技能講習 

受講するためには、受講資格を証明する書類が必要です。講習の内容と時間は次の通りです。

・型枠及び型枠支保工の組立て、解体等に関する知識(7時間)
・工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識(3時間)
・作業者に対する教育等に関する知識(1.5時間)
・関係法令(1.5時間)
・修了試験(1時間)

合計14時間の講習であり、2日間に渡って行われます。


5.型枠支保工の計算

型枠支保工を行うためには、国家資格も必要ですが、コンクリート打設時の強度計算に関する知識も必要です。

強度計算を行うことによって、せき板・根太材・大引き材の部材を選定します。普通コンクリートの比重は約2.3トン/立方メートルあり、コンクリート打設時は型枠がこれらの重量を支えなければなりません。

さらに生コンクリートの状態では、たくさんの水分を含んでいるため、比重以上の応力が発生し、スラブを打設する時は全ての重量が型枠にかかります。また、強度計算はコンクリート打設時の衝撃なども考慮する必要があるため、型枠支保工には高い専門知識が求められます。

6.まとめ

近代建築において型枠保持工の役割はとても重要です。コンクリートをしっかり支えられる型枠を組み上げなければなりません。

コンクリートを流し込んだ時に型枠が壊れてしまうと、大きな損害が発生するだけでなく、作業の安全性にも影響があります。

型枠支持工になるには国家資格が必要ですが、様々な形状の型枠を組むためには、型枠の強度計算方法についても理解しておくと良いでしょう。


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