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年記 2024年

 まったく汚れないのであれば、パンツなんて履く必要はないわけで、パンツに存在意義を与えるという点で、残尿にも意味はあるのかもしれない。そんな風に思えるようになるまでに随分と時間がかかってしまったように思う。

 2024年は自分比では激動の一年だったのだが、年の初めは平和なものであった。思い返してみても、服を何着か着つぶしたぐらいのことしか覚えていない。

 私は服というものがあまり好きではない。所詮ただの布に過ぎないくせに自分自身こそが中の人間の分身であるかのごとき服サイドの思い上がりのようなものを感じてしまう。服が従で人間が主であるはずなのだが、服という存在は自己主張が激しすぎるのだ。高い服なんかを着たときは汚さないかと気が気じゃなく、完全に主従が逆転する。誰しもがお前に個性を委ねると思ったら大間違いだぞ! まあ、無個性な服を選ぼうとするのもまた個性と言われてしまったらそれまでなのだが。
 そんな服嫌いが低じて、いつしか服を着つぶすことに喜びを感じるようになった。服をぼろぼろになるまで着つぶしたということはそれだけ服を買うのに時間やお金を使わなくて済んだということで、ボロボロになった服を捨てる瞬間に言い知れぬ達成感が味わえる。

着つぶされた服

 今年あった一番大きな出来事は何といっても子供が生まれたことだ。初めての子供だったので不安は大きかったが幸いにして大きなトラブルもなく出産の日を迎えることができた。検診に行くたびに医者から伝えられる胎児の体重等のパラメータが全てほぼ平均のあたりに位置していたのも安心材料になった。個性がもてはやされる時代だが平均的なのも悪くはないものだ。

 ベイビーが誕生した日の夜、ベイビーの0歳の誕生日のお祝いとして、一人でスーパーのケーキを買って食べた(マイスイートハニーが退院してから改めて本番のお祝い用にデパートでちゃんとしたケーキを買った)。ケーキを食べながら改めて自分はどんな父親になるのだろうかと考えた。父親になった以上、子供の手本になるように振舞わねばならない。例えばケーキのフィルムについたクリームを今までは舌で舐めていたがそんな行儀の悪いことをして子供が真似したらいけないので今後はちゃんと行儀よくフォークで取ることにしよう。思えば私の父もケーキのフィルムについたクリームをフォークで取っていた。もしかしたら父も私と同じように子供が真似しないようにフォークを使うようになったみたいなエピソードがあったりするのだろうか。なんてことを想像したのだが、だとしたら私の父は教育に失敗していることになる。

 余談だが、私の両親は私の誕生日を自分たちがケーキを食べる口実ぐらいに思っているらしく、私が一人暮らしを始めてからも私の誕生日祝いという名目で自分たちが食べたケーキの写真を送ってくる。私も子供が生まれて、その子の誕生祝いという名目で(当然生まれたばかりの我が子は食べられない)ケーキを食べたのだが、両親がどんな気持ちで俺の誕生日を祝ったか少し分かった気がする。多分本当に単にケーキが食べたかっただけだ。

ケーキのフィルムについたクリームをフォークで取っているイラストを生成AIに注文したところ、これが納品された

 ベイビーの名前はMSH(マイスイートハニー)と二人でかなり悩んだ。候補から絞り切るのが難しいので、生まれた時刻の下一桁が○○だったら名前は××みたいなルールを決めておき、本人に選ばせるという案もあったのだが予定日より少し前に生まれたので実行に移されることはなかった。そんなベイビーの名前だが、この記事では仮にA君と呼ぶことにする。
 将来A君がどう育つかは分からないが、親としては元気に育って楽しく生きてくれればそれでいい。そんなことを思う一方、やはりいろいろ妄想してしまうもので、看護師さんに「足の力が強いですね」と褒められると、すごい陸上選手になるかもしれないと思うし、生まれた直後の長細い頭を見てると、仙人みたいだしめちゃくちゃ頭がいい子かもしれないと思う。A君の検診結果は全部平均的だったのでラノベの主人公の素質があるかもしれない。「子供には無限の可能性が秘められている」なんて言ったりするが、実態は「親の妄想はとどまるところを知らない」のほうが近そうだ。

 A君の話をするうえで、一つ避けては通れない話題がある。A君は可愛いのだ。とても。恐らく人類の進化の過程で赤ちゃんを、特に血縁のある赤ちゃんを可愛いと脳が思うように進化してきたのだろうからある意味当然なのだが、A君はとても可愛い。見た目が可愛いというだけでなく、げっぷやおならをする姿まで可愛いのは驚嘆すべきことである。A君のAは当然AngelのAだ。
 自分やそこら辺の道を歩いているおっさんもみんな昔はこんな風にエンジェルだったのかと思うと不思議な気持ちになる。考えてみれば私もげっぷやおならを我慢できないことがあるし、多少エンジェルの残滓があるな。

 あとは雑多に一年を振り返って行こうと思う。

 仕事のほうはというと、今年は社会人になってから一番忙しい年であった。仕事が忙しい年に第一子の出産が被るというのにマーフィの法則的なものを感じて調べてみたところ、マーフィの法則のマーフィってエディ・マーフィとは別人なのか!誰だ俺にウソ教えたの!

 仕事が忙しさかった分が来年の給与に反映されれるといいな。一応そう思っているのだが、振り返ってみると新入社員の頃よりそれなりに給与は増えているが、給与が増えたことよりふるさと納税の限度額が上がったことのほうに大きな喜びを感じている。人間の感覚は不思議なものだ。

 インバウンドの増加も感じられた一年であった。たまに渋谷のスクランブル交差点を通りかかると、多くの外国人が写真を撮影しており「一体こんなものを撮って何が楽しいんだか」となどと思う。そんな私は十年以上前に上京した時スクランブル交差点を無意味に3往復ぐらいしたし、観光地に行くとガイドブックに載っているものをそれが何なのかも分からず有難がって撮影する。

 今年の私のお菓子オブザイヤーには、近所のスーパーに売っているパイシューが選定された。有名店のケーキなど並みいる強豪を押しのけ、99円(税抜き)という圧倒的なコストパフォーマンスで我が家のおやつシーンを席巻した。サクッとした歯ごたえを残す生地とバニラビーンズが使われた本格的なカスタードは100円シュークリーム界の革命児と言えよう。

数多のコンビニスイーツが「これでパイシュー3個分の価格か」という感想のもとに散っていった

 さて、このペースで書いていたら年内に公開できない可能性が高くなってきたので残りは写真だけのダイジェストにさせてもらおう。仕事が忙しくなってから磨きをかけたすみません間に合いませんでしたの精神を見せるときだ。

美味しかった酒三選。電照菊、國権春一番、ほいりげ
スポンジでサイボーグ化し力強さを取り戻したイケアのサメ
川崎大師で父親用に長寿の飴を買うも帰省時に持って帰り忘れる。親孝行とお茶目さの両立
江の島、猿島、堀切菖蒲園
年末年始用に用意した酒。年々準備がインフレしている

それでは皆さんよいお年を。



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