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たいしたことない日々のこと220618
プロヴァンスはフランスの一部であるけれど、プロヴァンスがイコール・フランスそのものになるとは限らない。
いわゆる多くのひとが一般的に想像する「フランス」は「パリ」のイメージで、プロヴァンスははっきりいってそういうものとは真逆のような気すらする。オスマン様式のアパルトマンに囲まれた都市ではないし、メトロもエッフェル塔も凱旋門もない。エクス・アン・プロヴァンスなら高級感のある雰囲気は感じられるけれど、パリのようなセーヌ川を中心とした、革命の中心地ではなく、噴水の多い、ローマ時代から続く水の街である。歴史の観点では古めかしくパリに匹敵する景観があるものの(むしろそれ以上の価値があるし、なんならマッシリア王国のマルセイユの近くだし)、なんにしてもエクスはエクス。それ以上でも以下でもない。なんならこの地域圏のひとはプロヴァンスという固有の文化を持ってるわけで、いわゆるフランスに含めてくれんなや、プロヴァンサルやでうちら、と思ってるふしはあるかもしれない。
例えば「フランスに行きたい」と考えるとして、その「フランス」がいったいなにを指しているのか。木目調の建築が美しいアルザスとか華やかなパリとかフランスのシンボルでもあるモン・サン・ミシェルのノルマンディーとかワインの聖地ボルドーとか、それぞれ全く文化がちがう。気候・土地、国境そばかどうか、その地域で生きるひとの考え方や性格もちがう。
とりわけプロヴァンスは強い。なにが強いって、そこで生きるひとの個性と主張が強い。圧が強い。大地も太陽も青空もぐいぐいきて、ぱあっと明るくて、力強い。
アルジェリア、チュニジア、モロッコにルーツのあるひとたちも、プロヴァンスには多くいる。
最近フランスのアルプス地方の街に訪れたらマグレブの顔立ちをあまりにも見掛けず、びっくりしてしまった。なにかが偏っている印象を受けた。しいていうならスイスに近いからかお金持ちのひとが多いのは事実だし、観光客が多いのももちろん。アフリカルーツのひとだって少なかった。エクスでもあまり見かけないか、マルセイユだとどうだったか、いや思い返せばパリには多く(3〜4割:個人的な主観)いる印象もある。
移民が多い少ないから治安云々どうこうという話ではなく、そもそもわたし自身が移民だし、多いほうがbien mérangé(よく混ざった状態)で、排他的な空気感があまりないからある種の居心地のよさはある。
それに加えて、からっとした空気、強い日差し、元気すぎる太陽、コバルトブルーの海、プラタナスの緑、自然を謳歌できる場所。全くそのとおり。ただし覚悟も同様に必要。2月〜5月は花粉のせいで基本的に鼻づまりで、4月の時点でこんがり日焼け。6月にはもう37度になり、夕方扉を開けて空気を入れ替えようもんなら、蚊に全身刺されまくり。目はサングラスをしていないと日差しの強さで充血する。
工事だって遅いし、ひとものんびりだし、数えればきりがないほど正直大変な側面がたくさん。とはいってもそのゆるさが落ち着く所以。さんざんと文句を言いながらも生きることに誠実であるプロヴァンスのひとたち、気づけば自分も同じようなことをやっている。とにかく今はこの街の大好きなところが多いからそれでいい。自然とともに生きる、シンプルな世界。
わたしはすっかり、プロヴァンスの虜になっている。
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