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時を越えた瞬間の記録【コペンハーゲン】
2018.10.22 Danemark, Copenhague
虹色に輝く不思議な光の粒を眺めながら、橋を渡る。水面に反射するその色彩は、見慣れたフランスの光と異なるおとぎ話の世界。重たい雲の厚みと、ゆっくりと変わる空の調子が織り混ざった天井。今ここにいる王国にふたをするように、すっぽりと優しく包み込む。すれ違うひとたちの中にアンデルセンの姿があったとしてもおかしくないだろう。そのように思えるほど、景色自体が、物語ることへの想像を駆り立てる。もしかしたらこの光景とともに今日が、誰かにとって二度と忘れられない1日になったかもしれないし、ありふれた繰り返しの1日で過ぎ去ったのかもしれない。
Cafe Wilderでディルがたくさん盛られた野菜と魚料理を堪能し、ひとり帰宅途中。目の前には、仕事帰りの若い女性、分厚いコートを来た働き盛りの男性、ゆっくりと地面を確かめるように歩く初老の男性。
童話に登場するような可愛らしい建造物も多様な色の灯も、停泊する船も水面のやわらかなさざなみも、彼らとわたしで感じるものがきっと違う。何千回何万回も橋を渡れば日常としてこの景観に溶け込めるだろうか、それとも日常になることは永遠に許されず、美しさに見惚れるだけの非日常を過ごすのか。街はなにも語らない。それでも見えないものを見ようと、聞こえない声を聞き取ろうと、知らない話を知ろうとしてわたしは物語りを試みる。
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