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yumihinoue
2023年11月25日 11:00
冬が近づくと街もスーパーマーケットもクリスマス装飾に飾られて、あっという間に年の終わりを感じさせる冬。あの人生の分岐点で、タイミングで、電車に乗って、あるいは飛行機に乗って、または徒歩であの場所まで行って、あの人たちに会いに行って、もしくは偶然会って。たくさんの選択肢を選び決め覚悟を取ってきたじぶんの、現在の立っている場所をいま振り返って考える。*例えば、「ヴァンショVin chaud
2023年6月29日 05:45
弁護士訪問の日のことである。その事務所の廊下はまったく電気がついていなかった。探している部屋の扉に書いてある名前すらも携帯電話の光をつけなければわからないくらいだ。わたしたちはもしかすると騙されてしまったのだろうか、そんな不安が頭をよぎる。三階のそのフロアの端から端までを探しても見当たらず、一度地上階に戻る。そして住人だろうか、あるいはその質問をよく受けるのか、学生のような若い男の子が言った。
2021年11月17日 03:06
5年以上も前に買って、大事していたカップが今日割れた。2017年、1度目のフランス留学のときも2020年秋からの2度目の滞在も(長期間で捉えれば2度目といっても差し支えないだろう)ずっとこのひとつだけはスーツケースの中に入れて、必ず毎朝のコーヒーかミントティーを入れて飲んでいた愛用品。手捻りのような手持ちのやわらかさと、口元にかけてひろがってゆくゆるやかな曲線と、手にもつたびに安心感があっ
2020年10月27日 19:23
フランスに来てから「いろんなことがありすぎて」と各方面に言っている。例えば詐欺まがいのトラブルに巻き込まれたり、コロナウィルスの感染者は1日5万人を超えたり、人生で初めて経験する出来事があったり、外出制限が発令されたり、3年前の思い出の延長線をなぞったり。具体的に「いろんなこと」とは一体何なのか、noteでも日記でもいいからどこかできちんと整理をしたい。いったい何に悩んで何に困って、何に苦しんでい
2020年6月9日 11:01
2017.6.8 France, Annecy芝生の上にじっと座って、デスペラードというテキーラ風味のビールを飲みながら甘ったるいピスタチオのジェラートを食べ、友人と水色の湖をぼうっと眺めた。手前の道には自転車がさっと通り過ぎた。その次に散歩と途中の高齢男性がゆっくり視界にあらわれた。かとおもえば観光で浮かれている欧米人数名がにぎやかに歩いて、いなくなった後には犬を連れた散歩途中の夫婦がさわや
2020年5月12日 01:39
2019.10.25 France, Parisすべての運命は既に決められていて、そこに書かれた内容をひとはなぞるだけ。アラブの世界に「Maktub(マクトゥーブ)=書かれている」という言葉があるように、つまりは覚悟を決める前から物語は始まっていた。2015年に初めて訪れたパリ、右も左もわからない複雑な街でたまたま予約したアパートは、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステラへと向かう経路、レヴ
2019年10月29日 09:12
遅めのなつやすみで10月下旬のフランスに11日間。その間6人の友人と会い、5種のレストランに行き5箇所のカフェでコーヒーを飲んで、4本の映画を鑑賞、2つの美術館に訪れた。1回目、すなわちはじめてのことは書ききれないほどたくさん。パリ自体は3度目の滞在だった。滞在先のアパートでは昼食と夕食を3回、友人に作ってもらった。何もかもが美しい瞬間の連続だった。ふだん日本で、料理も洗濯も出かけるお店を
2019年2月18日 11:25
パリには沢山のパン屋さんが街中の至るところにあって、バケットひとつにしてもふんわり、もっちり、かりかり、あとは小麦の味がしっかり、なんて多種多様だから、好みの味を見つけるためのパン屋巡りをするのは、(パン好きな人にとっては)とても楽しい。どこに行っていいかわからない、という人はまずは滞在先のホテルのすぐそばにあるパン屋でもいいし、年に1度発表されるパリで最も美味しいバゲットランキング「La m
2019年2月6日 22:42
徹底的に贅沢をするときは、心地よい空間と体験を満喫するために入念な下調べが必要である。それは海外に限ったはなしではなくて、日本にいても同じ。職場近くでランチをする時も友人とのディナーも納得のいく食事時間を楽しみたいし、食事体験を粗末にするとその代償は自分自身に跳ね返ってくる。もちろん下調べしても、がっかりすることはあるのだが。いつも利用するフランスのリヨン・サン=テグジュペリ空港。ここでの贅沢
2019年1月30日 00:07
「フランスのどの街がおすすめ?やっぱりパリ?」フランスに行ったことのない友人に尋ねられるたびに、待ってましたといわんばかりに、フランス国内で訪れた都市の記憶を総動員させ、どの情報から伝えようなんて思いつつも一呼吸おいてやっぱり、わたしはこの街を勧めてしまう。オーヴェルニュ・ローヌアルプ地域圏、オートサヴォワ県のアヌシー(Annecy)である。最初にアヌシーという名前を耳にしたのは、同じロー
2019年1月26日 12:56
パリのマルゼルブ通りは8区と17区をななめに渡っている大きな通りで、高級住宅街や、わりとおしゃれなお店の多いパリの中でも比較的治安の良い(とされる)エリアである。マルゼルブ駅を出れば目の前にソルボンヌ大学があり、すぐそばにはEcole Normale de Musique de Paris、音楽院があるので建物の前を通りがかるとピアノや楽器の音が、かすかに心地よく聞こえてくる。近くにはモン
2019年1月16日 23:08
20代後半、ある程度充実した生活は送ったけれどフランスに語学留学をしようと思い立ったのが27歳。社会人としてある程度やりたい仕事ができて、東京のど真ん中に住んで、好きなものを食べたり映画や演劇を見たりとわりと豊かに暮らしていた頃だった。それでも。日常生活で、満たされない、何かが足りないと感じる瞬間が度々あった。当時のわたしはカナダのケベック出身映画監督グザヴィエ・ドランの映画に陶酔し(