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気象予報士と見る『気象庁の人々』#07

Netflixにて配信されている『気象庁の人々:社内恋愛は予測不可能?!』。今回は第7話 光化学スモッグ注意報 を見ていきたいと思います。

第7話
ユジンとの会話に動揺したギジュンは、頼れる人物に話を聞いてもらう。一方シウは寝泊まりするところを探しているのが自分だけではないことを知る。

Netflixより引用

第7話では、発生場所によって益にも害にもなるオゾンと対比して、適切な距離感というのがテーマになっていましたね。
サブタイトルにもある光化学スモッグ、久しぶりに耳にした方も多いのではないでしょうか。今回は光化学スモッグって何?というところを書いていこうと思います。

1.光化学スモッグとは?

光化学スモッグとは、気象庁は以下のように定義しています。

大気が安定で、風が弱く、日射が強く、気温が高いなどの気象条件下で、光化学反応により地表付近の光化学オキシダント濃度が高くなるようなときに視程が悪くなる現象。

気象庁ホームページより

もう少し解説します。自動車や工場からの排気ガスなどに含まれる窒素酸化物と、塗料や接着剤などに含まれている揮発性有機化合物が、太陽からの紫外線を受けると、上の定義にある「光化学オキシダント」と総称される物質に変化します。光化学オキシダントにはオゾンやアルデヒド等が含まれており、風が弱い日にこれらの物質が発生すると、拡散せずに同じ場所にとどまってもやのようになることがあります。この現象を光化学スモッグといいます。

光化学スモッグが発生すると、目や呼吸器などの粘膜を刺激して、健康被害が発生することがあるほか、植物が枯れるなどの被害が出ることもあります。

光化学スモッグって昔はよく聞いたけど、最近はあまり聞かないよね、という方も多いと思います。光化学スモッグ注意報は、自治体が発令するもので、例えば東京都であれば、光化学オキシダントの濃度が0.12ppm以上で継続する場合に、光化学スモッグ注意報が発令されます。
2021年度は東京都ではの6回この注意報が発令されています。

さらに、注意報発令日数の年度ごとの推移を見てみましょう。

東京都ホームページより作成

オレンジが年度ごとの注意報発令日数、グレーが健康被害の報告数です。東京都での注意報発令日数は1970年代をピークに減少傾向で、ここ数年は10日未満となっています。一方健康被害の報告数は1970年代が特に多いのが目立ちます。調べてみると、法整備や技術進歩によって、自動車の排気ガスから出る窒素酸化物が激減したのが一因のようです。

まt、光化学オキシダントを含む大気汚染物質の濃度分布は、環境省が管理する「そらまめくん」というサイトでリアルタイムに確認することができます。かわいい名前ですが便利です。

2.オゾン発生のメカニズム

ここからは光化学オキシダントの主成分であるオゾンについてみていきましょう。オゾン層という言葉を聞いたことがありますか?オゾン層は地表から上空約25kmあたり、成層圏と呼ばれる範囲に広がっており、地球大気中のオゾンの約90%は成層圏に存在しています。そして残りの約10%は私たちが暮らす対流圏(地表~上空約11km)に存在しています。

この成層圏のオゾンと対流圏のオゾンは、もちろん同じ物質で、化学式で書くとO3で酸素原子が3つつながった形をしています。しかし、成層圏と対流圏では、人への効果や発生のメカニズムが異なっていますので、見ていきましょう。

まず、成層圏のオゾンについてです。成層圏のオゾンは簡単に言うと「良いオゾン」です。太陽光中の紫外線を吸収し、私たち人間を含む生物にとって有害な紫外線が地表に届くのを防いでくれているのです。成層圏オゾンの生成メカニズムは以下の図の通りです。

国立環境研究所ホームページより
https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/68/column1.html

酸素分子(O2)が太陽光に含まれる紫外線によって、酸素分子に分かれ、他の酸素分子と結合してオゾン(O3)が生成されています。成層圏では、オゾンが酸素分子に戻る反応も起こっており、こちらの反応でも紫外線が吸収されています。これらの反応のために使われる紫外線は生物にとって有害であるため、成層圏でのオゾンは、地上の生物を守ってくれているといえるのです。

次に、対流圏のオゾンについてです。対流圏オゾンは、成層圏オゾンと違って、「悪いオゾン」です。これまで書いた通り、光化学オキシダントの主成分であるほか、地表からの赤外線を吸収し、温室効果ガスとしても働きます。対流圏オゾンの生成メカニズムも見てみましょう。

国立環境研究所ホームページより
https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/68/column1.html

対流圏オゾンが生成する主な反応は、図の赤枠部分になります。二酸化窒素(NO2)が紫外線によって一酸化窒素(NO)と酸素原子に分かれ、分かれた酸素原子と酸素分子が結合してオゾンが生成されます。なお、このときの紫外線は、成層圏オゾンが生成するときの紫外線とは異なる波長のものです。
厄介なのは、緑枠部分の反応です。赤枠の反応では、NO2は減る一方なので、オゾンの生成も限度があります。しかし、反応性有機物と呼ばれる一酸化炭素(CO)やメタン、揮発性化合物(VOC)が存在すると、緑枠部分の反応によって、一酸化窒素(NO)が二酸化窒素(NO2)に戻る反応が起こるため、赤枠部分の反応が続いてしまい、対流圏オゾンの生成量が増えてしまうのです。

ちなみにVOCは、塗装、建設工事、印刷、脱脂洗浄や自動車への給油など、様々なところから排出されており、排出規制等の施策がとられています。

3.まとめ

今回は光化学スモッグというキーワードから、その主成分であるオゾンについて書いてみました。結局光化学オキシダントは増えてるのかというところに触れていなかったので、最後にご紹介します。

東京都の大気汚染物質濃度の推移https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/air/air_pollution/torikumi/pm25_ox-report2019.files/1.1.pdf

グラフ中の水色、Oxと記載されている線が光化学オキシダントです。1987年以降徐々に増えているのがわかります。しかし、これが許容範囲なのかどうかのかというところまでは、わかりませんでした。いろいろ調べて結局よくわからんという結論になってしまい申し訳ございません…。だれか詳しい人教えてください。

作中ではオゾンに例えて、適切な距離感について触れられていました。ハギョンが「ぶつかってみないとわからない」ということを言っていたように、悩んだら歩み寄ってみる、という考え方は前向きだな思いましたし、そうしたいと思えるほど好き・興味があるというのはステキだなと思いました。次回も楽しみです。

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