気象予報士と見る『気象庁の人々』#03
Netflixにて配信されている『気象庁の人々:社内恋愛は予測不可能?!』。今回は第3話 季節の変わり目 を見ていきたいと思います。
第3話では、「風浪特報」というものが取り上げられていました。季節の変わり目、移ろう気持ちが描かれていました。
本筋のストーリーの感想・考察は他の方にお任せして、今回は波について少しだけお話できればと思います。※今回は短めです。
1.風でできる波
普段私たちが見る波は、海面上を吹く風によってできる波です。下のイラストを見てください。
海上で風が吹くと、海面が揺れて波がつくられます。イラストの左の方、不規則でとがった形をしています。直接的に風の影響を受けている波を風浪(ふうろう)といいます。
波は遠くまで伝わっていくものです。風の吹かない領域にまで伝わったり、風が弱まったりした後にも、波は残ります。この残った波のことをうねりといいます。うねりは強さをほとんど失わずに遠くまで伝わる性質を持っています。
サーフィンで乗る波も元をたどると、はるか遠くでできた波です。ハワイに到達する波は、5,000km離れた南極の嵐でつくられるそうです。
2.風浪特報という翻訳は適切か?
第3話は、韓国気象庁が発出した「風浪特報」を解除するか、あるいは注意報レベルに引き下げるかどうかについてが焦点なっていましたね。
風浪とは、風が吹いているエリアで生じた波です。しかし第3話では、うねりについても触れられており、風浪特報の出ている地域では、風も穏やかで晴れていました。風浪特報にはうねりによる高波も考慮されているはずです。
日本には便利な言葉はあります。それは「波浪」です。
波浪注意報や波浪警報という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。(ハロー警報じゃないよ笑)
気象庁では、波浪を「風浪とうねりから成る」と定義しており、波浪による高波によって災害が起こる可能性がある際に、注意報や警報が発出されます。
そのため、定義的には第3話の「風浪特報」は、「波浪特報」と訳した方が良いのでは?と思いました。ただ、中央日報の日本語版記事でも「風浪特報」と訳されていたため、本作のみで使用されている翻訳というわけでもなさそうでした。
3.まとめ
波は遠くから伝わってくることもあります。港は穏やかでも、遠く離れた場所の嵐によって、突然高波が押し寄せることもあるわけです。
風浪特報が出ているのに、港は穏やか。だから漁師たちは困惑してしまいます。第3話では、結局その後高波が来たのかどうかは描かれていませんでしたので、そこにモヤモヤしてしまいました。