気象予報士と見る『気象庁の人々』#09
Netflixにて配信されている『気象庁の人々:社内恋愛は予測不可能?!』。今回は第9話 空チャンマ(梅雨) を見ていきたいと思います。
2022年の関東地方は6月6日に梅雨入りの発表がありましたね。今回は梅雨について書いていこうと思います。
1.梅雨に起こっていること
梅雨の時期は雨や曇りの日が多くなりますが、そもそもどうしてこのような天気になるのでしょうか。
梅雨は春から夏にかけて季節が移り変わるときに起こります。
梅雨の時期は北側に春の空気(オホーツク海気団)、南側に夏の空気(小笠原気団)が位置しており、夏にかけて小笠原気団が徐々に北上していきます。
春の空気と夏の空気は簡単には混ざり合いません。空気の境目では、夏の空気が春の空気の上を駆け上がっていきます。この時空気が上昇するので、雲が発生し雨が降るのです。地表面での空気の境目は前線といい、梅雨時期に発生する停滞前線のことを「梅雨前線(ばいうぜんせん)」と呼びます。
梅雨前線に沿って雲が発生するので、衛星画像でもその様子が確認できます。
写真は2022年6月2日12時の衛星画像です。日本の南海上に帯状の雲域がか確認できます。
このように梅雨は非常にスケールが大きい現象ということがわかります。そう考えると、「関東は梅雨入りしました」、「九州、近畿、東海はいつでしょうか!?」などと細かい区分で梅雨入り時期を議論するのはナンセンスなのではないかと感じてしまいます。
2.2022年の関東の梅雨入りについて
2022年は6月6日に関東で梅雨入りの発表がありました。その時の地上天気図を見てみましょう。
6月6日の関東は、四国南東沖の温帯低気圧から延びる温暖前線の北側に位置していて、雨が降っていました。東京では1日雨が降っていて、最大で1時間6mmの降水を観測しています。
6日にまとまった雨が降ることとその後に曇りや雨の天気が続く見込みであることから、関東で梅雨入りの発表がなされたようです。
一般的に梅雨入りは、停滞前線(梅雨前線)によってもたらされる雨がきっかけで発表されることが多いです。しかし2022年6月6日の雨は、温暖前線と寒冷前線を伴った温帯低気圧によるものでした。
この日の日本の上空には寒冷渦と呼ばれる寒気を伴った低気圧が存在しており、いわゆる大気の状態が不安定な状態でもありました。
これは梅雨入りするときの一つのパターンで、今年の関東の梅雨入りは上空に寒冷渦を伴った温帯低気圧による降水がきっかけとなりました。
梅雨前線(停滞前線)による長雨と違って、温帯低気圧は偏西風に乗って西から東へ移動しますので、降水が続くのは1日程度です。
実際に2日後の6月9日には、温帯低気圧は日本の東の海上に抜けていて、寒冷前線からつながる停滞前線(梅雨前線)は日本の南側に位置しています。
実際に6日以降の天気は7日から8日にかけて回復しているのがわかります。
寒冷渦パターンの梅雨入りは梅雨入り後に天気が回復するのが特徴です。
3.まとめ
今回は梅雨の仕組みと、関東の梅雨入りについてみていきました。梅雨の時期は、梅雨前線の正確な予測は難しく、位置が少しずれると降水範囲も変わるため、予報が当たりにくくなります。雨が降らない予報でも折り畳み傘をカバンに入れておくといいと思います。また、梅雨末期は大雨になりやすく、災害の発生にも注意しなければなりません。
また、この記事を書いているのが6月12日なのですが、梅雨前線はまだ南の海上でウロウロしています。もしかしたら関東地方の梅雨入り時期は後から見直されるかもしれません。
『気象庁の人々』も後半に差し掛かりましたが、いよいよ少しつまらなくなってきました・・・・。次回の更新もお楽しみに。