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マレーシアとタクシーと未来
これは遠い昔、まだマレーシアでUberに乗れた頃の話。
クアラルンプール(KL)郊外から市街地まで行こうと、
Uberでタクシーを呼び出した。
目的地を選択し、ドライバーとマッチングするまで待つ。
時間は午前12時を過ぎていた。
ドライバーが見つかると、
スマホ画面の一番下に見慣れないメッセージが表示された。
Your driver is deaf or hard of hearing.(あなたのドライバーはろう者、もしくは難聴です。)
このメッセージが僕に対して意味していることはなんだろう?
Uberを使うと、行き先や降りる場所はわざわざ伝えなくてもいい。
それはドライバーの耳が不自由であろうがなかろうか同じことだ。
ドライバーが到着し、車に乗り込むと、
彼はジェスチャーで耳が聞こえないことを伝えてくれた。
その後、高速道路に乗り、信号から解放されると、彼はラジオを付けてくれた。
彼自身は聞こえないのにも関わらず、である。
音量も、僕の方を一瞬見て、調節してくれた。
今まで日本でもタクシーでここまで丁寧に接客された覚えはない。
目的地に着き、降りる際に彼にスマホを見せた。
最高の運転をありがとう。今までで一番安全な運転だったよ。
グーグル翻訳がちゃんとマレー語に訳してくれたか分からないが、
彼は笑顔で手を振ってくれた。
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Uberが市場に出た時、タクシー業界からの強い反発にあったことは有名だ。
隙間時間を使ってUberドライバーとして稼ぎ始める人が生まれ、新しい雇用を創り出したが、
既存のドライバーは仕事を失ってしまった。
「創造的破壊」である。
もしUberが無かったら、今回の彼との出会いは無かったと思う。
事前に彼の個性を知っていたから、乗車しても驚かなかったし、
目的地を伝えるやり取りも無いため、彼も運転に集中することができた。
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ITは何のためにあるのだろうか?
便利な生活のため?革新的なサービスのため?一攫千金のため?
答えは人それぞれ違うと思う。
「ITの中心にはいつも人間がいるんだ(日向徹)」
彼との出会いで、ふと昔見たドラマの好きなセリフを思い出した。
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ではでは