伊藤詩織:再びの日本の秘められた恥#3、女としての落ち度
前回、米国人作家で元読売新聞記者エーデルステイン氏とモトコ・リッチさんに代表される外国人が見た日本の性カルチュアの印象を書きました。モトコ・リッチは現在NYタイムスの東京支局長とネットで紹介されていた。この二人の主張する日本の性カルチュアはレイプカルチュアで性暴力を否定。その中で日本女性は性暴力を認識しそれを告発しにくい状況におかれているという主張だ。
ここで、英ではレイプ届け数が100万人中510件、日本ではわずか10件、という統計上の差が証拠として提示された。
これこそがBBCの主張とみるべきだ。だから、詩織さんの告発、しかも相手が安倍側近である、は社会的な挑戦でありこれからの日本女性の地位向上に大きな意義がある。しかし、彼女の告発が果たして事実にもとずいているのかどうかという問いかけには全く答えず、逆にうまくカムフラージュさえしている。
実はこのドキュでは、リッチ・モトコも詩織さん事件は証拠不十分で起訴されなかった事を認めざるを得ない、と述べていた。
さらに進んで登場したのは、杉田水脈さん。詩織さんのレイプは創作だと非難している日本の女性議員。以下が批判の対象となった「女の落ち度」発言。
彼女の場合は明らかに、女としての落ち度があり・・・
=clear errors on her part as a woman
男性の前でそれだけ飲んで、記憶をなくしてっていうような形で。社会に出て来て、女性として働いているのであれば、それは嫌な人から声をかけられますし、それをきっちり断ったりとかするのもそれもスキルのうちですし。
先に待ってるトラブルを見越して、酒に飲まれる状態を避けるのが、賢い女性。これは男性ヨイショ社会に生きる女性のサバイバル・スキル、というわけ。彼女のショック発言はさらに続く。女性の社会的平等について先進国の中でただ一つとり残された格好になっている国でのトップ女性政治家の処世術は、現状維持と妥協、というのだ。これは後ろ向き姿勢で、常に改革向上をかかげる欧米人には理解しがたいものがある。
(今までに差別やハラスメントを経験したかと問われて)はい。それはもう社会に生きていたら山ほどありますよ。ふふふ~(笑)。でもまぁ、それはそういうものかなと思って。
上の杉田水脈発言は完全に山口氏側に立ったものだった。
このように対立する二つの証言があり、それらを検証した結果、東京地検が不起訴としています。これに対し、東京第6検察審査会も「不起訴相当」とする議決を公表しました。客観的に見て、伊藤氏よりも山口氏の証言の方が信憑性が高いと司法が判断を下したことになります。
彼女の理解はきわめて単純で率直だ。
このドキュでは山口氏が登場するのは、仲間内で酒を飲みながら不起訴という勝利に酔いしれている乾杯シーンのみだ。山口氏はそれまでインタビューに応じていなかった。そこでは山口氏は詩織さんは鯨のように酒を飲み込んでいた、と嫌味丸出し。このように気が大きくなるのもアルコールによる脳への影響の一つだ。
検察審議会でも不起訴相当は妥当という判断を受け、犯罪起訴がだめなら、民事の損害賠償で、と詩織さんは決意をかためた。私には充分な証拠がある、と弁護士に話した。
しかし、その後の民事裁判過程で浮上したのは、彼女の指摘する証拠、タクシー運転手の証言、ホテルのベルボーイの目撃談、ホテルの玄関ドア内側の到着録画、及び翌日の朝5時50分のフロント録画、はすべて状況証拠で決め手にはならないという事だった。その中で運転手は山口氏と詩織さんの会話を確認。だから詩織さんは記憶喪失中には意識不明ではなかったことが証明された。その直後のベルボーイ談とモニターからは重度の酩酊状態であったことが認められる。しかし翌朝のホテルを離れる様子、特にヘアスタイルをそこまでのロングヘアーからアップに整え、携帯を覗き込みながらフロントを無視して立ち去る様子、からは彼女がわずか30分前に暴力的強姦被害にあったとはとても思えない。彼女の所作はホテル側へのメッセージであり、これは山口氏を有罪にできない有力な根拠となり得る。言葉だけがコミュニケーションではない。このモニター動画は今詩織さん側から検閲禁止されている。しかし、すでにネットでリークされ拡散された。私も見た。髪のアップは著書BBでも全くスルー。
詩織さんの事件否定メッセージはその日の婦人科クリニック訪問でも翌々日の整形外科訪問でも一貫したものだった。第3者にレイプ説が浮上したのは3日後。2日後の月曜日の深夜、山口氏の出勤を見計らって就労ビザをメールで督促した。しかし現地時間の勤務時間中待ったが山口氏からの返答がなく、そこで騙されたことを悟り、その日の午後に親しい友人に告白、というのが著書Black Boxだった。ただしこの本では、告白の日時をメールを送る前に設定。裁判での証言とは食い違ったので、事実を改竄した、と批判された。
だが、この「日本の秘められた恥」では、性暴力を受け、タメ口英語で、Fuck Off! と凄んだら、怖気づいた山口氏が、合格です、と告げ、そこで真実を悟り、深いショックを受けた、となっている。だからドキュメンタリーと本との話が全くつながっていない事がわかる。さらに事実は、事件後丸3日間採用されたと信じ込んでいたのだから、ドキュのストーリーの方が古いとしても、脚色されたものと見ていいだろう。
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