【通年企画】50音ノベルゲームレビュー紙の上の魔法使い
作品データ
作品名:紙の上の魔法使い
ブランド:ウグイスカグラ
発売日:2011/7/29
企画:ルクル
原画:桐葉
ライター:ルクル
BGM作曲:めと
声優:橘まお,御苑生メイ,姫原ゆう,花澤さくら,小倉結衣
評価データ
C(キャラクター要素)3点
個性が強く言動がトリッキーなキャラクターが多め。特に妃のキャラクターは妹ヒロインとして最強クラスの出来R(関係性要素)2点
閉じたキャラクター間の関係性は描写は少なくとも理解できるだけの描写あり。ただし恋愛関係はかなり薄い。S(世界観要素)5点
魔法の本とそれによる世界観の描写が特に秀逸。G(脚本・展開要素)5点
碌でもない悪意のままに突き付けられるギミックと展開が潜んでいる。H(エロ)2点
まあ少なくはないがモザイク濃い目。サムネは妙にモザイクが薄いが大丈夫だったのだろうか。E(演出力)1点
誤字、演出に関しては笑うしかないレベルでバグも存在する。ウグイスカグラに演出は期待してはいけないという言葉を象徴するような作品。
戯言
interludeを越えてか行の作品です。トップバッターは昨年活動休止を発表されたウグイスカグラの紙の上の魔法使いです。あまりにトリッキーすぎる作品とバグと誤字パラダイスのため知る人ぞ知る名作……という扱いでしたが、定期的に高騰するこの作品、なんと某青看板のお店で25kで販売されております。馬鹿なんじゃないのかと思う皆さん、まあ気持ちはわかります。ただこのパッケージ版にはDL版にはないとある要素のおかげで高騰している部分もあるので仕方ないのかなと思う部分もあるのです。その辺も含めて色んな混沌が渦巻いているのがこのかみまほという作品です。リメイクお待ちしております!
さて実際にどのような作品かを語っていきましょう。舞台になるのが小さな島、そこに住まうは愉快で個性的な幼馴染たち、そんな彼女達に囲まれながら魔法の本と向き合っていきます。この魔法の本、どのようなものかと言いますとその本を開いた人は内容に沿って現実で物語を紡いでいきます。それがどれほど不自然なものな物であって、その本来の性格から離れた物であっても、そしてどれだけあり得ないものでさえも再現してしまうという代物、そんな不思議な本に翻弄されながら日常を送っていくのがこの作品……と思わせておいて本当に碌でもねえことをやらかしたのがこのかみまほです。
まずこの作品のことを知らないあなた、体験版をやりましょう。それで気になるのならばDL版を買ってもいいと思います。ただし予約特典のシナリオが読みたいのならば泣く泣くパッケージを買ってください。これはもう諦めるしかない。
さてこの作品、ネタバレをすると非常に面白さが削られていくので何が起こるかはとてもじゃないですが言えません。ただそれを抜きにしてもあまりに碌でもない悪意を詰め込んだ作品と言えるでしょう。この作品における登場人物は2人を除いてすべて道具のように扱われていきます。尊厳も、感情も、恋心さえもすべてがギミックによって無茶苦茶にされ、そしてそのたびに絶望を読み手に与えていきます。
例えばこちら。
こちらあるヒロインと結ばれる選択をした末の結末でのシーンになります。BADエンドではありません。まあ何が酷いってこのゲーム、半分くらいこんな感じで後味最悪な終わり方をするヒロインルートとなっています。そもそも分岐方法も脱落式、物語の結末を知ることから逃げたやつに幸福なんかあるわけねえだろと嘲笑うかのように地獄に叩き込んでいきます。HPでほのぼのしている感満載にコンセプトを書いているくせにようやるわ。ただ強調したいことが一つ、その選択肢の先が行き止まりで、そして誰から見ても悲しいものだったとしてもそれを選んだ2人とってはそれはハッピーエンドになっています。これだけは前提として意識してプレイして欲しいです。少なくとも幸せな恋愛ができなくて憤るなんてことはしないように、この作品はヒロインとの恋愛を楽しむゲームではありません。そしてそんな悲愛の数々の中でも妹である月社 妃との物語はこの先も忘れることができないものとなっています。これも幸せの形なんだと、すべてを受け入れることはできなくても、祝福なんてできなくともそう思わせるものがありました。
本当に悪意だらけの作品、そしてそんな作品を彩る道具としてしか見られていないキャラクター達、その中には主人公さえも含まれていきます。近年の創作の傾向として主人公と自分が重ねやすい物語というのが好まれ、ノベルゲームではそれが前提となっていることが多いです。立ち絵を用意していないことはその証左で、むしろ主人公を中心にして展開していかない物語は批判の対象になることさえあります。ではこの作品の主人公は誰だったのか、これは間違いなく遊行寺 夜子と言い切ってもいいでしょう。すべては彼女のために用意された舞台と役者と小道具たち、そんな中で彼女が成長していく物語がこの作品の大きな軸になっています。彼女にだけ優しい小生意気な魔女 クリソベリルから離れていくこの物語、正直かなりしんどいと思ういますがもし読まれるのならば最後まで読んでほしいと思います。
さてこの作品ライターであるルクル先生に後悔があったとのこと、その内容は先日先生のfanboxにて公開されました。その内容をこちらに書くのは無粋な物なのでfanboxに入って読んでみてください。それとは別ですがこの作品には大きなしこりになるものがあります。それがある人物の処遇、この人物が許されるのはあり得ないのではないかという声が今でも多く聞くほど不満に思われる部分です。これを解決するのが予約特典として配布された蛍色の景色というシナリオ、ここにそれを少しだけでも解消するものが存在しています。故にDL版ではなくパッケージが碌でもない値段がついているのです。短いシナリオですがこの作品を語るうえでは欠かすことができないものです。もし機会があれば読んでもらいたいです。そのうち値下がりするかもしれませんし。
OPはねえ!演出微妙!誤字はたくさん!という商業製品としてどうなんだと思わせる沢山の要素がある作品ですが、ここに込められたものは本当に見事なものです。エロゲだからこそ、恋愛が含まれる物語だからこそ描けた物語をぜひお楽しみください。
ということで「か」の作品でした。今年中には収録予定ではありますが、随分と語っていなかった作品だったので結構思い出しながらの記事となります。それでも妃ルートだけはやり直すことなく鮮明に思い出すことができましたけどね!直前にやった作品が自分にとっての魂の作品だったせいで当時は見劣りして見えた気がしますが、振り返ってみると大切な作品でした。
そして次は「き」の作品、こちらは完全に置きに行きました。いや……まあ1つくらいはね?うん……しゃーない!
ということで次回をお楽しみに!
Next Hint!
デッデッデーデデッデッデーデデーデーデーデーデーデー
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