【通年企画】50音ノベルゲームレビューCLANNAD
作品データ
作品名:CLANNAD
ブランド:Key
発売日:2004/4/28
企画:麻枝准
原画:樋上いたる
ライター:麻枝准,魁,涼元悠一,丘野塔也(シナリオアシスタンス),藤井知貴(シナリオアシスタンス)
BGM作曲:折戸伸司,戸越まごめ,麻枝准
声優:中原麻衣,広橋涼,能登麻美子,野中藍,桑島法子
評価データ
C(キャラクター要素)3点
キャラデザの癖が強い!と言いたいところだがこれでもだいぶましになったのである。レジェンドオブ友人キャラである春原陽平を生み出した功績はもっと称えられてもいい。R(関係性要素)4点
エロがないためどのように結ばれるか、そして恋人になるまで関係性というのが大きくピックアップされている。また周辺人物のルートも用意することで各人の関係性の描写に注力している。S(世界観要素)4点
一見普通の世界観と時折挿入される別の幻想世界のリンクが非常に魅力的。G(脚本・展開要素)3点
各ルートの展開と語られる内容を複合していくと見えてくる別の側面などが魅力的。ただ要所で若干無理矢理感の強い展開が存在する。H(エロ)0点
物語の構成上エロシーンが存在してはいけないヒロインが多数存在する。ただ1シーンだけどうしても存在して欲しいと強く思ったヒロインが存在する。E(演出力)3点
音楽面の強さは相変わらず、この音楽の使い方が非常に上手い。選択肢を含む多くの要素による分岐方法なども存在するが、動的な演出は少ない。
戯言
ということで今回はCLANNADです。同人誌を書くうえで、最初の2冊に収録を決めていた10作品と同時に最終巻に収録することを決めていた作品であり、故に語るのはもう少し後ということが決められているのがこの作品です。そういう経緯もあってどこかで語りたいという思いもあったので今回の企画を行うと決めたかなり最初の段階で枠が埋まりました。
自分にとってはノベルゲーム、というより二次元産業にここまでどっぷりとつかる羽目になった作品で、ここからすべてが始まっています。ということでかなり思い入れの深い作品なので色々と語っていきたいと思いますのでお付き合いよろしくお願いします!
さて本作、有名ではありますが実際のところゲームをプレイしたことがある人はどれほどいるのでしょうか。多くの人がアニメで見たことがあるというレベルではないでしょうか。アニメでさえ4クールという今考えると狂気じみたクール数ですが、ゲームも非常に長いです。どのくらい長いかって?エロスケでプレイ時間の中央値が50時間となっています。実際プレイしてみるとまあ長い長い、ルート自体も学園編と呼ばれる一番最初に公開されているシナリオだけで10ルート、そしてそこに古河渚のルートのその後を描くアフターストーリーという構成になっており本編を追うだけでかなり長いです。更に複雑な分岐によって見れる野球ルートや風子参上シナリオ、ジェット斎藤などなど……まあ頭のおかしいほど分岐します。というか柊勝平ルートに至っては選択肢の組み合わせをひたすら試していかないとそもそも出てきさえしません。そりゃかぎなどでネタにされるわ。
こんな経緯もあるので開発期間は物凄く長く、KanonからAIRが1年で出ているにもかかわらず、AIRからCLANNADは4年かかっています。大学入学してから卒業したころに発売されたということになります。この業界はこの手の延期を平然とやらかしますが、こういう風にしてみると異常性を感じざる得ません。Keyの開発期間を潤沢にという傾向はここから始まってます。そんなこんなでとんでもないボリュームの今作、上記の悲しい存在以外にも消えてしまった要素も沢山あるのでその辺をベースにして色々語っていきたいと思います。
本作の始まりは坂の下の渚との出会い、ここでメインヒロインである古河渚と出会い、物語が始まっていきます。それぞれの人々と出会い、向き合っていく。その中で関係性を深めていく中でその悩みや過去にふれ、さらに深い関係になっていくのが大筋です。そのためすべてがエロゲではよくある恋人になってから進んで行く物語というわけではなく、一部のルートでは最後まで付き合うことがなく終わり、場合によっては付き合った後に別れて復縁するというエンディングになっているルートさえ存在します。この辺は全年齢であるからこそという要素だと思いますね。そしてエロゲじゃないからこそルートの幅も様々、友人枠の春原ルートは勿論、お世話になった先生のルートなどなどかなり幅広いです。上記の彼もそんな枠であり、本来なら別の役割も用意されていたようなのですがそちらは諸事象で消去、故に存在があいまいなものになってしまったのです。哀れ勝平。そしてルート内の分岐も異常で例えば渚と仲が良い状態で他ヒロインに進めばそのヒロインとのルートの中で登場しますし、別のヒロインと仲が良ければそのヒロインが登場します。そして好感度が全員低ければそこでヒロインではなく男キャラが登場したりもします。これらの多くの分岐の中で物語が進行していくわけなので当然異常な分岐数になっており、こちらはアニメでは一切表現できていません。アニメでは多くのヒロインと向き合いつつ渚ルートを進む必要があるので渚の孤独感が全然ない!という批判が生まれるほど、実際渚ルートに進む場合は一ノ瀬ことみとあそこまで仲良くなることはありませんし、藤林杏や坂上智代とも仲良くなることなく物語が進むことさえあります。このどの人物にどれほど向き合っていくかというのは本作においても大切な要素であったのでこの分岐は必然だったのかもしれません。
そんな異常なまでの分岐を越えてすべてのルートを終えた後にようやく始まるのがアフターストーリー、ここからが今作の本番です。この作品を表現する言葉に「CLANNNADは人生」という言葉がありますが、それはここから始まる非常に長い物語を指して言われたと言えるでしょう。ここで語られるのは古河渚と主人公の人生の物語、上手くいくことも上手くいかないことも含めて沢山の出来事の中で2人が恋人から夫婦になっていく物語が展開されます。学生時代怠惰に過ごしてきた主人公が自立し、恋人と同棲して結婚して養っていく物語、その中で少しずつ変わっていくしていく2人と街の姿を見せつけられることになります。かつては他人なんてどうでもいいと思っていた主人公が渚と出会い、大切で守りたいと思う存在を見つけ、幸せを感じていく。いらないと思って何もかも変わって欲しいと自暴自棄に思っていたはずなのにいつの間にか失うことを恐れることになっていきます。
その結果が渚の死であり、育児放棄から始まる長い物語です。
一番大切だったはずのものを失って、絶望の中で生きる中で本当は生まれていた別の大切なものと関係性の修復の物語、これはアニメ版を見た方もご存じの物語です。アニメでも高い評価を得ているこのシナリオはゲーム版でも健在、アニメ版でその流れを知っていても大泣きしました。ゲームではそもそもこのシナリオにたどり着くまでにたくさんの幸せな姿を見せられており、何故か渚との物語だけ幸せに続いていませんでした。だからこそその違いが悲しくて、虚しくて辛く、そして別の幸せを見つけることができた瞬間は更に色鮮やかになっていました。ただこの物語さえも幸せには終わりません。娘との別離でこの物語は閉じられます。
さてこの作品のテーマは何なんでしょうか。一部の人は家族の物語だと言います。確かにアフターストーリーで語られるのは親子や両親との関係性が描かれ続けています。ですが全体で見てみると家族だけでなく、友人や先生との関係性の物語が描かれ続けています。そのたくさんの形の関係性を見つめ、知っていくことで集まっていく光の玉を集めることでようやく渚を救うことができるような構成になっています。そして順当にすべてのヒロインと向き合うことができているならば、最後の光の玉が手に入るのは作中で最も偉大な父親との物語です。それを手に入れることでようやく渚を救うことができる、そんな「人との繋がり」がテーマになった作品なのです。
だから別にいきなり奇跡が起こって渚が生き返ったわけじゃないんですよ。攻略なしだとアフターストーリーさえ出すのに物凄い時間がかかるでしょうし光の玉も全然集まらない、挙句の果てに嫁も娘も死んだ状態からまだ足りねえとか言われてようやく救うことができます。これがとんでもないプレイ時間の原因です。そんな経緯なので最後の選択まで辿り着くことができて小さなてのひらが流れたときに流す涙は感動の涙とようやく終わったという安堵の涙ともいわれることさえあります。
こちらはKEY 10th MEMORIAL FESにて流れた映像のCLANNADパートで流れた物です。この作品の本質ってどこにあるのだろうと思うところがありますが、私はここにある言葉にあると思っています。時の流れと共に人も町も変わっていく、その変化を人との関係の中で受け止めて成長していく物語がCLANNADと思っています。光の玉や幻想世界など考察して理解してみると見えてくるものも沢山ありますが、まずは怠惰なクズが人との関わりの中で親になっていく姿を追いかけてみてください。そしてアニメだけのあなたもゲームでやってみると印象が変わります!長い作品ですがぜひよろしくお願いします!
ということで「く」の作品はCLANNADでした。アニメも非常に高い評価を受けていますが、ゲームも間違いなく傑作です。初めて出会ったときに絶望の淵にいた自分を奮い立たせ、そしてこっちの世界に引きずり込んだ作品として未だに唯一の無二の作品です。この位置だけは一生変わらないんでしょうね……この記事を書くために再プレイして久々に泣きました。小さなてのひらは10年後も涙腺に来ました。ゲーム版をプレイしたのもちょうど10年ほど前なのでさらに感慨深いです。
そんな作品ですがこの記事を見ている人にだけ教える特ダネです!
現在CLANNADを含む多くのKey作品(具体的に言うとリトバス,Rewrite,智代アフター)はPCでのDL版が英語翻訳版が存在しません。嘘だと思いましたか?ガチです(2023/3/11)。Steamで一応存在していますがそちらは日本語はありません。ということでPCでこれらの作品をプレイするにはパッケージでの購入が不可欠!……実際CLANNADのフルボイス版を買おうとしてなかった時は青ざめました。PC版でないといけない理由は少ないですが、DNMLという古の文化が存在し、そこにある二次創作が結構出来が良かったりするのでそちらをプレイするには必要になってきますのでご注意ください。
さて次回ですが「け」です。そう、「け」なのです。なぜこんなに強調するか気になる方はエロスケで調べてみてください。決めるの大変でした。とはいえ以前から気になっていた作品をプレイするいい機会になったので良かったと思います。そんな感じで次回もよろしくお願いします。
Next Hint!
この国で生きていける読者って何人くらいいるんだろうか。
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