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『研修医と指導医のための在宅医療教育マニュアル』【書評】山中克郎 先生
このnote特集では……
『研修医と指導医のための在宅医療教育マニュアル』(浜田久之・長崎大学病院医療教育開発センター/蘆野吉和・山形県庄内保健所 編著)に関する記事を発信していきます。来年の日本在宅医療連合学会大会は長崎で開催されるので、大いに盛り上げていければと思っております。
今回は、諏訪中央病院の山中克郎 先生から頂戴した書評を公開いたします。
ようこそ、浜ちゃんワールドへ
長崎は西洋医学発祥の地です。シーボルトが江戸時代後期(1824年)に開設した「鳴滝塾」で多くの日本人が西洋医学を学びました。長崎大学は2012年に「新・鳴滝塾」を創設し、たくさんの医学生や研修医が大学に残り研鑽を積んでいます。その立役者が浜ちゃん(浜田久之 先生)です。若い人の希望と社会ニーズをつかんで、常に新しい医学教育を実践している点が素晴らしいです。
本書はこれからますます必要とされる在宅医療の入門書です。在宅医療ほど楽しいものはありません。病院とは全く異なる患者さんの姿を訪問診療では見ることができます。初期研修医の教育としても最適です。不思議なことに、家に帰ると患者さんは元気になるのです。入院中は様々な制約がありますが、自宅では患者さんが自由に自分らしく暮らせます。入院しながら最新の医療を受けることだけが幸福なことではありません。大好きな家族に見守られながら、住み慣れた家で自由に最期まで暮らすほうが患者さんにとっては幸せかもしれません。
この本の前半では在宅医療でのCGA(高齢者総合機能評価)を意識した問診法や短時間でのルーチン診察が解説されています。老年医学的視点や精神医学的視点からの「高齢者を診察するときの注意点」は在宅医療に欠かせないポイントです。次に在宅医療でよく経験する、認知症や転倒と骨折、肺炎などの疾患について、具体的治療も含め詳しく解説されていてとても役立ちます。原因が明らかになっていない場合でも、痛みや不眠、関節痛などの症候に真摯に対応する必要があります。具体的な症例がたくさん提示されているので、個々の事例に対する診療の様子を思い描くことができます。訪問診療の現場で指導医に相談できなくても、本書の「在宅先輩の学びと教えのポイント」を読めば、ベテラン指導医から的確なアドバイスを受けることができます。
本書の後半では指導者としてどのように若手医師に在宅医療を教えればいいのかが考察されていて興味深かったです。働き方改革により医師の仕事は大きく変化しました。さらに在宅医療の制度や多職種連携について解説されています。一度は聞いたことのある用語ですが、私を含め具体的な内容を理解している人は少ないのではないでしょうか。チーム医療ではメンバーの仕事内容を理解する努力が欠かせません。職種ごとの仕事内容が詳細に述べられていて勉強になります。
いざ、素晴らしき在宅医療の世界へ。在宅医療を新たに始めようと思っているあなたに最適の書籍です。
諏訪中央病院
山中克郎
◆◆◆書籍のご紹介◆◆◆
「研修医と指導医のための在宅医療教育マニュアル」
浜田久之 / 蘆野吉和 編著
B6変形 484頁
定価(本体5,800円 + 税)
ISBN978-4-498-12012-9
2024年07月発行
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