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高齢者救急ただいま診断中!(3)

高齢者救急ただいま診断中!(3)
[第3回]高齢者の胸痛 担当:安藤裕貴
舩越 拓 Hiraku Funakoshi
東京ベイ・浦安市川医療センター救急集中治療科・IVR科
安藤裕貴 Hirotaka Ando
一宮西病院総合救急部
薬師寺泰匡 Hiromasa Yakushiji
岸和田徳洲会病院救命救急センター
坂本 壮 So Sakamoto
国保旭中央病院救急救命科

救急外来での高齢者に対する実践的なアプローチを解説!
経験や苦悩,エビデンスを踏まえ,より良いマネジメントを目指したポイントを伝えます.


はじめに

 前回の腹痛に引き続き,救急におけるキングオブ主訴である「胸痛」についてアプローチしていきましょう.胸痛は年齢によるファクターが大きなウェイトを占める主訴の一つです.高齢者というだけで,胸痛のなかでも鑑別には飛躍的に重症度の高い疾患があがってきます.たとえば,20歳男性の胸痛と70歳男性の胸痛では,鑑別すべき疾患が大きく違うだけでなく,その内容がより重篤な可能性が高いことを現場では想起しています.また,高齢者だからこそ「胸痛が主訴になり得る疾患」も変化してきます.重症度が高いことが想起される高齢者の胸痛をみたときに,われわれが安全に診療を行うためにはどのように考えればよいのでしょうか.ここでは,高齢者の胸痛の鑑別すべき疾患,鑑別の絞り込み方,に分けてアプローチしたいと思います.

鑑別すべき疾患

 [表1]に高齢者の胸痛で鑑別すべき疾患を並べてみました.これらをまとめると,5 killer chest painと呼ばれる致死的胸痛と,頻度の高い胸痛(common 7),頻度の低い胸痛(rare chest pains)に分けることができます.

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[表1]高齢者の胸痛:鑑別すべき疾患

 これらの疾患を鑑別するには,多くの知識が必要となりますが,高齢者ということにフォーカスすると,ある程度絞り込み方も見えてきます.すべてを網羅するには紙幅が足りないため,ここでは主に5 killer chest painとcommon 7に触れていきたいと思います.

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