Dr. 伊東のがん患者の感染症ただいま診断中!(3)
Dr. 伊東のがん患者の感染症ただいま診断中!(3)
[第3回]液性免疫不全を認識せよ!
伊東直哉 Naoya Ito
マヒドン大学熱帯医学部
古谷賢人 Kento Furuya
伊豆赤十字病院
この連載では,感染症内科医のDr.伊東と総合診療医のDr.古谷との対話形式で,ジェネラリストがしばしば遭遇する固形腫瘍患者の感染症を中心に学びます.
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Dr.伊東のOne Point Advice
●液性免疫は免疫グロブリンや補体を中心とした免疫系.
●脾摘によって液性免疫不全をきたす.
●液性免疫不全では莢膜を有する肺炎球菌,Haemophilus influenzae type b,髄膜炎菌,などといった微生物への感染が問題となる.
●脾摘後重症感染症は,発症すると十分な治療にもかかわらず致死的な経過をたどる可能性があるため予防が大切.
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はじめに
古谷 せ,先生の所属が何か怪しい施設になっています!!
伊東 よく気付いたね.僕,仕事辞めて今バンコクに留学しているんだ.別に怪しい施設ではないよ…….
古谷 え!? 先生のところ,まだお子さん小さいですし,どうやって生計を立てているのですか?
伊東 無収入になってしまったから,貯金を切り崩して生活しているよ.『J−COSMO』の原稿料だけが頼りだからくれぐれもよろしく頼むね.
古谷 伊東家のためにも全国の読者の皆さん! ぜひよろしくお願いしたいっす!
伊東 では,前回の好中球減少に引き続いて,今回は液性免疫不全の話をするね.まずは,症例から見てもらおう.
症例
70歳,男性.来院前日までは普段通り.来院当日の12時間前に発熱を自覚.来院の2時間前に全身に紫斑が出現.受け答えが悪いため家人が救急車を要請し,搬送となった.5 年前に他院で膵臓がんに対して膵頭十二指腸切除術と脾摘がされている(肺炎球菌ワクチンは接種せず).意識レベル:JCS10,血圧60/40 mmHg,脈拍120回/分,体温36.7℃,呼吸30 回/分.身体所見上,体幹部を主体に紫斑を認めた.
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