20円貸して
昼休憩にペットボトルのコーヒーを買って、午後に飲み干すのがルーティンだった。
いつものように自販機の前に立ち、財布を開けると小銭が20円足りず、お札も大きい額しかなかった。
自席に戻り、仲の良い主婦さんに20円を貸してくれないかと交渉すると、20円はないけど50円玉ならあるということだったので、貸してもらうことになった。
その際、主婦さんと
僕「明日の朝返したら、周りのみんなが何事!?って爆笑するやろうね」
主婦「させてやろうぜ」
と2人で悪い顔で企んだ。
翌朝。
みんながいることを確認し、少しゆっくりめに
「ありがとう」と返し、主婦さんも受け取った。
そして反応を楽しむべく、周囲を見渡した。
各々が各々と馬鹿笑いしながら会話していたので、誰も僕らのことを見ていなかった。
それからしばらくして現金払いから、バーコード決済に支払い方法を変えた。
もう同じ笑いを企てることもなくなり、なんだか寂しい気持ちにもなった。