アトレティコ、19-20シーズンの話をしよう。
長い、とても長いシーズンが終わった。毎年5月には長いシーズンが終わり、選手たちは最後のホイッスルが吹かれた瞬間に疲労を隠すことなくピッチに倒れ込む。
喜びと悲しみのコントラスト。ある者はCLやEL出場権を獲得して涙し、ある者は残留を勝ち取って喜ぶ。ある者は出場権を逃し、そして降格する者もいる。
クラブを去る者もいる。今季はアドゥリス(Aビルバオ)やブルーノ(ビジャレアル)、カソルラ(ビジャレアル)が去る。
我らがアトレティコ・マドリーにも、新たな挑戦のために去りし者がいる。
去る者、愛すべき”モノ”
我らが愛すべきヘルマン”モノ”ブルゴスがクラブを去る。長髪にキャップ姿でゴールマウスを守ってきたロックンローラーは、決して上手いキーパーではなかったが、人々に愛される魅力を持ち合わせていた。
”チョロ”シメオネが、マドリードに帰還すると同時に右腕として常に一緒にいた。ELを獲ったときも、リーガ制覇したときも、マドリードダービーで勝利したときも、一緒に喜びを分かち合う光景を何度も見てきた。
そして、落胆している選手たちに最も近くで寄り添い、支えたのも彼だった。
モノは監督としてのキャリアをスタートさせるためにクラブを去る。惜しみない拍手と感謝を。
来る者、愛すべき”カピタン”
いくつかのメディアやファンはモノが去り、後釜にネルソン・ビバスが就くと考えている。そして、ビバスの席には誰が座るかと言えば”カピタン”ガビだろう。
リクエストがあったので少しだけアトレティOBの復帰について書きたい。
ガビはチアゴと同様に監督ライセンスを取得するために、アトレティのコーチとして復帰するだろう。だが、ガビがアトレティコのトップチームの監督に将来就任するのかは未知数。チョロが去った直後に就任するのは反対だ。
ガビを監督として経験を積ませるのならば、カンテラの指導からスタートさせるのはどうだろうか?と、個人的には思っている。
監督として復帰する可能性が極めて高いのはチアゴだ。現在ポルトガル代表のユースチームのアシスタントをしている。
彼がどこでクラブチームの監督キャリアをスタートさせるのか注目したいが、いきなりアトレティを任せるほどフロントもバカではない。
それだけシメオネ後のアトレティの舵取りは繊細で難しい。
一方、フアンフランのフロント入りも話としてはある。これについては大賛成だ。
彼の手腕がどのようなものかは未知数だが、コーチをするタイプではないだろうから適任だろう。
そしてトーレスだ。彼は結局、戻ってくるのだろうか?戻るだろうがコーチや監督として帰還するのか、フロント入りするのか。
少し前に監督ライセンスを取るような話を耳にしたが、テクニカルエリアで第二の人生をスタートさせるのだろうか。
話を戻して、ガビの帰還による影響を受けるのは良くも悪くもコケぐらいだろう。かつて「コケにピボーテは出来ない」と語り、コケのメンタルをズタズタにしたが、コケのキャプテンシーに影響を与えてくれることを期待している。
5人の選手について語ろう
今季のアトレティにおける重要人物は5人いる。
コケ、コスタ、ジョレンテ、フェリペ、ジョアオ・フェリックス。まずはジョアオから。
ジョアオ・フェリックスはリーガ初挑戦&アトレティ初年度での成績としては期待以上だ。恐らくこれを読んでいる方は「期待以上?ありえない!」と思っていることだろうが、そもそも私の考えるジョアオの期待値がものすごく低かった。
プレシーズンで大活躍、シーズン序盤の3ヵ月が上々だったのは出来過ぎていたと思う。
怪我で1か月ぐらい離脱したあとは調子を落としたが、初年度ではこんなもんだろう。しかし、期待は持てる選手であることは疑いようがなく、来季こそ本番だ。来季のハードルは極めて高くなることを覚悟して、プレイしてほしい。
今季の評価は65点/100点満点。
ジエゴ・コスタはシーズンのほとんどが不調だった。
手術をして今季の復帰は難しいと思われたが、リーグ中断によってコンディションを整える時間が出来たことが幸いした。リーグ再開後の活躍は素晴らしく、CFとしてのジエゴ・コスタが帰ってきたと感じさせる活躍だ。
しかし、年俸額が割高であることは否めない。特にこの時勢においては契約見直しをフロントにはお願いしたいものだ。
今季の評価は60点(再開前は25点)。
フェリペはシーズン通してのMVPだ。
これについては7/20夜のツイキャスで話す予定だが、彼ほど優れたセントラルを獲得できたことは、幸せなことだ。すべてのコンペティションにおいて影響を与えたと思う。
彼はプロになって一度も怪我をしたことがなかったが、先日初めて怪我をしたことは少し気がかりだ。過密日程が原因なのか、トレーニングが原因なのか…
今季の評価は95点。
マルコス・ジョレンテについては先日書いた記事を参照してほしい。
■純白のシャツを汚す覚悟はあるか~マルコス・ジョレンテの覚醒~
今季の評価は80点(再開前は70点)。
最後にコケについて語りたい。
カピタンになって最初の1年がもうすぐ終わろうとしている。彼はガビやゴディンといった偉大なカピタンの後を継いで、精いっぱいカピタンとしての仕事を全うしたと思う。
かつて、私はコケをプレーンヨーグルトに例えたことがある。彼はクラブのプレースタイルを体現する存在で、彼の基本的なスタイルの上に個性というトッピングをした選手たちがチームを支えている、という意味だ。
しかし、今季のコケはまた少し変化を迎えたように思う。上手く言語化できるようになったら、また記事にしたい。
かつて、ガビに「コケにピボーテは出来ない」と言われた。その真意は「コケに『ピボーテの守備』は出来ない」なのだが、私も同意する。彼はピボーテの守備をすべきではない。
コケはインテリオールにおける守備をするときこそ、輝きを放つ。
リーガ制覇したシーズンのコケを思い出すと、彼は右から左、左から右へと常に動き回って守備に貢献し、トランジションの起点にもなっていた。
ピボーテの守備とは、マークの受け渡しやカバーリングなどの静の動きが必要だが、それはコケの本質に合っていない。
動の動きができるインテリオールでのコケを、来季はたくさん観れたら嬉しい。
(動/静の動きという表現は少し誤解を与える表現かもしれないが、ピボーテは動かない訳ではなくニュアンスとしては、中盤全体をCBのポジションと見たときにリベロが動、クラシカルなスイーパーは静というイメージ。今ではCBの定義もハイブリッドが主流で、リベロも死語だがそこはご愛嬌ということで…)
コケは最終節の試合で456試合出場を達成し、ロヒブランコスの歴代出場記録の4位タイとなった。これからも記録が伸び、アデラルドの553試合という偉大な記録を抜き去ることを期待している。
今季の評価は70点。
3位という順位は奇跡的
戦力の維新が必要だった今季は臥薪嘗胆(がしんしょうたん、将来の成功を期して苦労に耐えるという意味)の1年となると思っていた。最終的な順位はEL圏であれば御の字、最悪の場合はそれすら危ういだろう…と予想していた。
12月の苦しい時期はやはり最悪のシナリオは過ったし、リーグが中断した段階ではこれ以上勝ち点を落とせない状況だった。
私は奇跡という言葉が嫌いだ。奇跡とは努力を踏みにじる言葉として、時に使われることがあるからだ。レスターがプレミアを制覇したときがいい例だろう。彼らは努力の末に優勝という栄冠を手に入れたのだ。
だがそれでも、この3位という順位には奇跡という言葉を使わざるを得ない。
よく戦ったアトレティコスに拍手を送りたい。
さあ、次はライプツィヒだ
LaLigaは閉幕したが、3週間ほどの期間を経てチャンピオンズリーグが戻ってくる。
相手は若き知将ナーゲルスマン率いるライプツィヒ。決して簡単な相手ではなく、どのような試合になるのか想像もつかない。
しかし泥臭く、狡猾にチャンスを伺い、最後には赤と白のマントに身を包んだマタドールが若き雄牛の首に剣を突き立ててくれることだろう。
Aúpa Atleti!