ダブルハーベストを読んで02:AIの最終価値
ダブルハーベストという本について、CHAPTERごとに少しずつまとめています。今回はCHAPTER2として、AIによって実現できるさまざまな最終価値についてまとめてみます
<CHAPTER1はこちら>
AIビジネスのフェーズ
AIによって実現できる最終価値を整理する前に、現在のAIビジネスのフェーズを簡単にご紹介。数年前まではAIを使うかどうかを議論する段階でしたが、いまはAIを使ってどんなビジネスを構築するかを決める段階に来ているとのこと。
2017年:対話ボット・画像・自動化・ロボティクス・サイバーセキュリティなどの機能の話しが中心
2020年:ヘルスケア・ファイナンス・物流・小売・政府・メディア・教育などの市場セグメントでの活用方法が中心
こんな形で、従来はAIの機能に焦点があてられていましたが、最近は市場セグメントでの具体的な活用事例が増えてきたなと個人的にも思います。そこで、同書ではAIが発揮する最終価値を5つに整理しています。
AIが発揮している5つの価値(最終価値)
1. 売上増大
2. コスト削減
3. リスク・損失予測
4. UX向上
5. R&D加速
このCHAPTERではAIの最終価値の具体例をあげて、AIによって実現できることを具体的にイメージできるようになっています。以下、同書に掲載されている例を簡単にまとめました。少し長くなってしまいましたので、興味のあるところを同書で詳しく読んでもらえるのが一番いいかと思います。
売上増大
売上増大の代表例は3つ。
・レコメンデーション
・顧客エンゲージメント
・セールス強化
レコメンデーションは、Amazonをイメージしてもらえたら分かりやすいかと思います。
顧客エンゲージメントは、お客様との信頼関係づくりの自動化。顧客のカスタマージャーニー)それぞれの段階。
セールス強化は、AIによる営業部門の支援・強化のこと。ここの一番手は、やっぱりSalesforce。
コスト削減
コスト削減の代表例は、4つ。
・RPA(完全自動化)
・知的自動化+人的検査
・専門家のための知的ツール
・診断
RPAは、業務効率化のために完全自動化。繰り返し作業をオートメーション化する技術。
知的自動化+人的検査は、自動化の最大の敵であるエラーを人でカバーすること。たとえば、AI-OCRで会社ごとに仕様が異なる非定型の書類で発生するエラーを、BPOを活用して人が補正するなど。
専門家のための知的ツールは、専門家が本来しなくてもいいような繰り返し作業を補完するサービスのこと。例えば、弁護士が契約書の用語定義を毎回確認するような面倒な作業を、用語定義をポップアップで表示することで検索する作業を削減する。エキスパート・イン・ザ・ループの典型的な事例。
診断は、画像診断によって異常値が出た場合に専門家にアラート出すようなサービス。
リスク・損失予測
リスク・損失予測の代表例は、5つ。
・故障防止
・リアルタイム検知
・資産管理
・信用スコア
・コンプライアンス
故障防止は、工場などの故障リスクの予測。
リアルタイム検知は、クレジットカードの不正利用の検知など。普段は日本でしか使われていないカードがいきなりカンボジアで使われたら、自動でストップがかかるなど。
資産管理は、フィンテック系のロボアドバイザーなど。
信用スコアは、個人の信用情報をスコア化したもの。よく知られた事例としては、「芝麻信用(セサミクレジット)」。
コンプライアンスは、日々変化する国ごとのレギュレーションに対応するようなサービス。
UX向上
UX向上の代表例は、3つ。
・チャットボット・オンボーディング
・カスタマーサポート
・パーソナライズ
チャットボット・オンボーディングは、 チュートリアルや顧客がサービスを離脱しないようにするプロセスなどで活用されているサービス。
カスタマーサポートは、WEBサイトなどのサポート窓口がチャットボットになっているようなサービス。
パーソナライズは、顧客ごとに対応方法を変えるようなサービス。顔認識技術を活用し、リアル店舗に入店した顧客の購買履歴からアプローチ方法を変更したりすること。
R&D加速
R&D加速の事例は、2つ。
・ナレッジ・ディスカバリー
・シミュレーション・デジタルツイン
ナレッジ・ディスカバリーは、過去に蓄積された知見・ノウハウを検索できるようにすること。
シミュレーション・デジタルツインは、さまざまな実験をバーチャルできるようにすることや仮想空間上にリアル世界と同じシミュレーション環境をつくること。
AIの最終価値を実現するポイントは「機能」と「データ」の掛け算
このような形で自分たちが実現したいAIの最終価値が見えてきたら、次はどの機能とデータを組み合わせたら実現できるかを考えます。
ただし、最終価値を決めつけて可能性を限定しがちなのが注意点。最終的に実現したいことに対して、直接的な価値をAIで実現することにとらわれるのではなく、ボトルネックをAIで解消することのほうが効果的なこともある。
データ・イズ・キングからループ・イズ・キングへ
ディープラーニング を一躍有名にしたのは、猫の画像認識。ディープラーニングが出た当初は数千枚の猫の画像が必要だったが、いまは数枚でも精度が出る。主な理由は2つの技術的ブレイクスルーがあったから。
1つめは、本物っぽい画像をつくる技術「GAN」。これで大量のデータが不要になる。
2つめは、トランスファーラーニング。これはある領域Xで学習済みのAIを違う領域Yにスライドさせ、学習効率を上げる技術。これによって、さらに必要な学習データが圧縮される。
このGANやトランスファーラーニングの普及で、データを大量に持っているだけでは差別化できない世界に。大事なのは、データの量ではなく、常に新しいデータを生み出し続けるループ構造をつくるフェーズに突入した。
CHAPTER2の最後に
CHAPTER1とCHAPTER2は、本書の前提知識の整理という要素が強かったです。CHAPTER3以降が本書の根幹になるようなテーマが入ってきます。また整理できたら公開しますので、よろしければご覧ください。