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【時計ブログ】機械式腕時計のスペックでよく見かける「石数」とは?

機械式腕時計に使われる‘石’というと、多くの場合はケースなどの装飾である宝石をイメージするのではないでしょうか。
腕時計には、文字盤上や外装にダイヤモンドやルビー、サファイアといった宝石が使われており、高級感やステータスを上げてくれるポイントになります。
宝飾は、高級な腕時計にとって見た目の役割という点で重要なものですが、内部にも使われている事をご存知でしょうか。
 
機械式腕時計のカタログやスペック表、ムーブメントの刻印など、ほとんどのモデルには「石数」の表示があります。
それが何を意味し、また石数が多いor少ないモデルでは、どのような違いがあるのでしょうか。一般的にはあまり注目度は高くないと言えますが、石数について知っていれば時計選びの幅が広がるかもしれません。
 
今回は、機械式腕時計に使用される石数ついてお伝えしていきます。



■機械式腕時計の石数とは

ほとんどの機械式ムーブメントには人工のルビーが軸受として使われております。

腕時計のスペックをカタログや資料で見ると「21石」など、石について書いているワードが見受けられます。
一般に時計選びをする際に石数の項目を重要視する方は少なく、何を意味するのかを知らないという方も多いのではないでしょうか。
ムーブメントは、地板と受け板でガンギ車やテンプといった機構を挟み込む設計となっており、各歯車の中心には軸が通っています。石数とは、その軸受に使われている‘石の数’を表します。
軸は歯車の回転や往復運動で摩擦や摩耗をしやすく、それらを最小限に抑えるために、軸が接する部分に軸受となる穴石が設けられており、そこに宝石がはめ込まれるのです。
以前はダイヤモンドが使われることもありましたが、硬すぎて軸受を磨耗させてしまうことから、現在ほとんどの機械式ムーブメントには人工のルビーが軸受として使われており、石数は人工ルビーの数として認識されています。
人工ルビーを使用する理由は、コストの兼ね合いと高い硬度と圧力に耐えうる性質をもっているからです。

■歴史&石数を確認する方法

時計の歴史の中で、初期の頃は石数が現在ほど多くありませんでした。
1930年頃の時計では7石が主流であった為、アンティーク時計をチェックする上で使われている石の数が7石であればクオリティの高い時計と評価できます。
アンティーク時計を遡ってもわかるように最低限必要な数は7石であり、最大でも21石程度でした。それ以上の石数を用いている場合は、‘より贅沢な腕時計’という付加価値を与えていたと言えます。
 
時計に使用されている石数を確認する方法としては、商品カタログなどの資料をご覧いただくのが確実です。しかし、現行モデルではなく、スペック資料を探せない場合は、ムーブメントの刻印を見ることで判断できます。
メーカーによって異なりますが、「21 JEWELS」のように刻印されていることが多いです。


■腕時計に石が必要な理由&石数が多い魅力

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 一般的な3針の機械式腕時計に必要な石数は7石〜21石ですが、複雑機構や装飾を搭載するモデルは軸受けが増えるため、石数が増える傾向です。
石数は、腕時計に搭載されているムーブメントの「複雑さ」を示す指標の一つです。石数が多いということは、通常はそれだけ軸受の数が多く、内部に多くのパーツがあることを意味するのです。
例えば、クロノグラフやカレンダー搭載などの機能があるモデルは、シンプルな3針モデルよりも石数が多いです。また、自動巻の時計に比べて、手巻きの時計は石数が少なくなります。
機能は同じでも、ムーブメントの振動数が低い「ロービートモデル」より、振動数が高い「ハイビートモデル」の方が、石数も多いのが一般的です。
 
石数が多い腕時計の魅力として、腕時計の「見た目」にも関りがあります。
近年シースルーバックが人気となっていることから、裏面から時計内部を見たときに視覚的な美しさをより引き立たせるため、ルビーを多く取り付けることが増えています。よって、パーツの中に多くの光る輝きを見ることができます。
あるブランドでは、主に装飾目的で軸受以外の部分にも石を組み込んだ「石数100」という破格の石を搭載したモデルも発売されました。
「石数が多い=ハイグレード」という時代を象徴する1本だといえるでしょう。
腕時計の石数は、単に軸受の耐久性といった機能面だけでなく、高級感やデザイン性にも影響する要素なのです。
石数は、腕時計の内部構造の複雑さを示す一つの指標であり、またシースルーバックのデザイン性にも影響することので内部の機械を眺めるのも楽しくなります。
石数を見ることで、そのムーブメントがどれくらい凝った作りになっているか、どれくらい装飾に力が入れられているかが分かるので、この機会に是非ご注目してみてください。各ブランドのこだわりも感じることできるでしょう。

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