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【コラム】マーメイドはひとりで躍る④

③はこちら

https://note.com/chronostasis_ac/n/n6f05abd3e755

携帯電話が、鳴ることはなかった。最終面接を受けてから1週間と3日が経ったその日、私は「御社」と縁がなかったことを悟った。

別に落ちたことは仕方ないと思える。面接でも、堂々と振る舞えたし、そもそも最終まで残れたことが儲けもんだから後悔はない。それでも、モヤモヤしたものが頭ん中でぐーるぐるとメリーゴーランドのように回る。
(「残念ですが、あなたは不合格です」の一言だけでも寄こしてほしいんだけどな。まるで「今度暇なときにご飯でもどう?」と誘った途端、突然音信不通になったあのコみたいな仕打ちをしなくてもいいじゃない・・・いや、知らんけども。)

とりあえず、友人にLINEで結果報告をしよう。

「結局、『御社』落ちちゃったわ、無念」

1時間後、御社とは違って、すぐに通知音が鳴った。

「そっか、まあ相性だろうね。むしろマーメイドにもっと合うとこ探せるやん、探してこ」


メッセージに目を通すやいなや、モヤモヤは、どっかへ消えてった。こんな時に、こうやって励ましてくれる人がいるなんて、本当にありがたいことだよなあ。やっぱり、人間は決してひとりでは生きていけないんだなと痛感した。だからこそ、ひとりで何かを成し遂げようと奮闘する人は本当にすごいんだと思う。ましてや、ひとりでステージに立って、3分間で大人数を笑わせるなんて。

先日、ひとり芸の日本一を競う「R-1グランプリ」の決勝戦が行われた。今大会は、出場資格が芸歴10年以内と刷新され、MC陣や審査員、演出にテーマ曲などすべてが生まれ変わった。見事、王者となったのは、いまや若手女ピン芸人の代表格ともいえる、「ゆりやんレトリィバァ」。5度目の出場で勝ち取った悲願だった。

率直な感想として、僕としては結構楽しめた。まあ、お笑いが好きだから、当たり前と言えば当たり前か。実は、敗者復活も全ネタ見たけれど、一時と比べたらネタのレベルも上がってきてると思う。いや偉そうに語んな。

一方、お茶の間の評価はというと、どうも芳しくない様子。「審査員のコメントが聞きたかった」「尺短すぎる」など、うなずける意見も多々。最も目立ったのは「全組おもしろくない」という嘆きだった。

実際、おもしろいかおもしろくないかなんて、その人の感性によるものが大きいわけで、このことについて議論を交わすのは、きっと野暮だろう。なにせ、「おもしろい」の基準は人それぞれだし、好みによるから。たとえば、キレイなお笑いが好きな人からしたら、ゆりやんとかZAZYをなかなかおもしろいと思えないってのも重々わかる。

ただひとつ、僕が言いたいことがあるとすれば、「それって、おもしろいものを見ようと思って見てる?」ってこと。

ここ数年の流れを見てて思うこと。多くの人が「お笑いの賞レースはレベル低い」「R-1おもしろくない」って先入観を持ちすぎじゃないか。一旦、冷静になってみてほしい。そもそもお笑いって、笑わせる芸人と、笑いに来るお客さんの相互作用によってはじめて成り立つものではないだろうか。

突然ですが、ここで診断テストをひとつだけ。アナタはいま、ある芸人のネタを見ました。正直ひとつも笑えません。ネタの完成度も低い。その時の感想に近いものはどっち?


①「いやなんだこいつ、おもしろくねえな」って笑いながら嘆く
②「いやなんだこいつ、おもしろくねえな」って腹が立ちながら嘆く


①を選んだアナタ、賞レースを楽しめる素質があります。10月のキングオブコントをお楽しみに。


②を選んだアナタ、はっきり言うと、賞レースを見ることに向いてません。でも安心してください。お笑いを楽しむ素質はまだあります。好きな芸人の単独ライブにだけ足を運びましょう。そうすれば、mihimaru GT以上に、『気分上々↑↑↑』になりますから。


おいおい、「野暮だろう」なんて言っておいてお笑いの話してんじゃないよまったく。ちなみに、この嘆きは①なのでご安心を。さて、明日はまた別の「御社」と面接がある。

「落ち着いていきや~~~」チャンピオンからのことばを胸に、今日は早めに寝るとしよう。


執筆・マーメイド侍

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