中国アニメ事情① 〜日本アニメの輸入〜
みなさん、こんにちは。
中国では2月11日より春節に入りました。日本でいうお正月休みで、正月料理を囲んで家族団欒を過ごしている方も多くいます。こちらの記事は春節についてご紹介した記事です。是非ご一読ください!
さて、今回は中国アニメ事情と題して、いくつかに分けて中国のアニメ産業の話題を調査していきます。今日、アニメと一括りにしても漫画や映画、それに伴うグッズやイベントなど多岐にわたる産業となっています。アニメ事情と題しておりますが、アニメや漫画とあまり分けずに広くアニメ界隈の動きについてご紹介できればと思っています。
中国における日本アニメの普及
日本のアニメが中国でも高い人気を誇ることはよく知られています。以前紹介した花澤香菜さんの中国人気が高いことからわかるように、日本の作品のみならず声優の人気も高く、身近な存在です。
まずは、中国でどのように日本アニメが広がっていったのか見てみましょう。
1981年、はじめての日本アニメ
中国の方々と日本アニメの出会いは、中国中央テレビ(CCTV)が、手塚治虫の「鉄腕アトム」を放送したのがきっかけでした。
日本での初回放送から約20年後のことで、その後、「ジャングル大帝」、「一休さん」、「花の子ルンルン」など続々と輸入を行っています。日本でも数多くのアニメが放映される中、時差はありますが中国でも日本のアニメが見られるようになってきた頃です。しかし、当時テレビの普及率は13%と低く、影響は限定的なものでした。
1980年代後半になると、「ドラえもん」漫画が人民美術出版社から紹介・出版され、手塚治虫や藤子不二雄の作品も次々と紹介されました。 1991年にドラえもんと聖闘士星矢のアニメが放送されましたが、この時は既にテレビの普及率が高く、広く影響を及ぼしました。中国で日本アニメが知られ、人気が広まっていった時期です。
同時期、中国では海賊版コミックの流通が始まり、ドラゴンボール、聖闘士星矢、シティハンター、Dr.スランプ、らんま1/2などのコミックが次々と出版されました。
しかし、一部の正規出版社による出版もありましたが、これらの漫画はほとんどすべて海賊版です。特にドラゴンボールの人気は高く、比例して海賊版も数多く出回りました。
海外漫画作品の規制、実際は・・・
1994年以降、中国は日本や海外の漫画輸入を制限する政策をとったことで、漫画輸入は減少しました。しかし打撃を受けたのは正規の出版社で、海賊版はほとんど影響を受けていなかったようです。
その後、1990年代後半から2000年代にかけて中国の放送局で日本アニメが放送され、美少女戦士セーラームーンやスラムダンク、名探偵コナンが人気を集めました。これらの作品は日本同様、幅広い世代に支持されています。
海賊版時代の終了とネット時代の幕開け
長きにわたり、海賊版が多く出回っていた中国ですが、2000年代に突入してから徐々に改善されていきました。それまで海賊版で出回っていた作品を、正規の出版社が許可を得て出版しはじめたのです。徐々に海賊版は減少し、正規の出版物を手にする機会が増えていきました。
併せて、動画配信のプラットフォームの出現も大きな影響を与えました。中国の動画配信サイト『bilibili』は、日本の制作会社や版権元と正式に契約し、動画サイトで公開しています。
例えば、中国でも人気の「鬼滅の刃」はこのように表示され、有料会員になると全話を視聴することができます。
このbilibiliでは数多くの日本アニメが配信され、人気を集めています。
日本アニメ放送に着目すると、「はたらく細胞」の中国放送決定の話題も欠かせません。中国中央テレビ(CCTV)はアニメ「はたらく細胞」を放送すると発表し、大きな話題を呼びました。国営テレビは一般的にお堅いイメージがあり、日本のアニメを放送するイメージはあまり持たれていないので注目されています。
海外アニメも規制の対象に
しかし、この「はたらく細胞」は異例といえます。中国政府は2004年から国産アニメ育成、保護する目的で海外作品のテレビ放映を制限しています。規制はその後強まり、中国で制作された作品がアニメ放送の7割を下回らないように規制されたり、午後5時から9時のゴールデンタイムには海外アニメの放送を禁じるよう政策を打ち出しています。
とはいえ、ネットは規制対象外であることと、日本同様中国でもテレビ離れ現象が起きており、依然として配信プラットフォームでは日本アニメが多く視聴されています。実際に、bilibiliでの再生回数は、鬼滅の刃が6.2億回、はたらく細胞が2億回と非常に多くなっています。
1980年代から現在にかけて、日本アニメがどのように輸入され、人気を集めてきたかを調査しました。繰り返しにはなりますが、日本アニメの人気は高く配信プラットフォームの発展により、さらに身近なものになっていくでしょう。
しかし、一方で中国は政府による規制も大きな影響を及ぼします。暴力的や性的な表現、差別に当たるような表現は規制が厳しく、「進撃の巨人」や「デスノート」は規制により中国では閲覧できません。また、日本のように映画館で年齢制限を設けることがないため、アニメや漫画を映画化する場合は基本的に全年齢対象であることが重視されます。
先日中国で公開されたハリウッド映画「モンスターハンター」で、アジア系の子どもたちを差別するセリフがあったとして、中国国内で批判が高まり、上映中止となっています。その後、中国政府は上映許可を出していた海外映画について、再検閲を行うと発表しました。先程も紹介したように、鬼滅の刃は中国でも人気があり、当然映画の公開を待つ声も多いですが、「鬼滅の刃無限列車編」は再検閲の影響をうけ、公開が先延ばしとなっています。
日本の漫画やアニメが中国で人気があるのは事実ですが、実際は海外からの輸入規制や、国内アニメ産業を支援する国策の影響もあり、なんでも受け入れられるわけではありません。日本動画協会の「アニメ産業レポート」の報告によると、過去数年の中国へのアニメ輸出が消失し、他の先進国やアジアの確実な市場が攻められているとの報告もあります。
海外勢にとっては中国政府の規制の壁が厚く、乗り越えるのが難しい側面もあるのです。
しかしその結果、現在中国では国内アニメが急成長を遂げています。政府の後押しもあり、作品の質向上やアニメクリエイターの雇用も増加しているようです。
次回のシリーズでは、中国国内で生まれたアニメ作品について調査していきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回もお楽しみに!