コンパクトな望遠レンズを買ったので野鳥が撮れるか試してみた
野鳥、それはカメラ趣味で最も金のかかる分野の一つ。望遠レンズのなかでも「超望遠」と呼ばれるカテゴリのレンズが必要で、フルサイズやAPS-C機でやろうとするとレンズだけで初期投資は最低10万円は見ておかなければならない。たとえば超望遠としては手頃なシグマの150-600なら15万円ほどする。
しかし、マイクロフォーサーズなら手頃な価格で35mm版換算600mmのレンズが手に入ってしまう。それがOM System(旧オリンパス)の75-300mmである。なんとメーカー希望小売価格で4万円を切る驚きの安さ。しかも423gと軽量。マイクロフォーサーズのメリットを最大限に生かしたレンズだ。
カメラを趣味としている以上、一度は野鳥を撮ってみたい。しかし、高いレンズは買う勇気がない。そう思っているうちに手が滑ってこのレンズと防湿庫を購入してしまったので、近所のバードウォッチングポイントに向かい野鳥撮影をしてみた。果たして結果は如何に。
軽さは正義
バックパックに入れて徒歩で向かったが、冗談みたいに軽い。カメラを入れ忘れたか不安になって一度バックパックを確かめたくらいだ。旅行や遠征で使おうと思ったらこれはありがたい。423gという数字は言うほど軽くはないのだが、感触としては12-100よりもかなり軽く感じる。理由はわからない。
手慣らしに昆虫を捕る
以下、キャプションには焦点距離が書いてあるがマイクロフォーサーズなので35mm版換算では2倍して読み替えてほしい。
まずは手慣らしに、というか花に蝶が止まっているのを見かけたので撮ってみる。トリミングしてはいるものの、元の画でもけっこう大きく撮れてはいる。安い望遠レンズあるあるなのだが、ボケが綺麗ではない。特に後ボケが変な滲み方をしていて、プロレンズや単焦点の綺麗なボケに慣れていると少々厳しく感じる。noteでのアップロードサイズだとそこまで気にはならないが、大きなディスプレイで見るとけっこう気になるレベルだ。
開放では若干甘い感じがするがF11くらいまで絞るとバリッと解像して、蝶の手触りまで分かりそうな感じがする。4万円の超望遠ズームレンズなら十分すぎる描写性能だ。
野鳥を撮るのは大変
公園内を散策するが野鳥が見つからない。鳥の巣はあるし、声も聞こえるのだけど撮影できる範囲に現れない。もしかして野鳥撮影は機材もさることながら探すのも大変なのでは……と思っていると無事発見できた。
おそらくはヒヨドリ。トリミングはしていない。丁度日の当たるところにいてくれたので良い一枚が撮れた。
等倍で見ても合焦しているところに関しては羽毛が綺麗に解像している。4万円でこれが撮れるのかと思うと非常にテンションが上がる。
ただ、暗いレンズなので日陰になるとなかなか厳しい。奇跡的に止まっていたのはこれくらいで、あとはどれも手ブレか被写体ブレでブレていた。
E-M1Ⅱは本体に手ブレ補正があるが、さすがに35mm版換算で600mmともなるとレンズ側にも手ブレ補正がないと歩留まりがだいぶ落ちる。1/640秒くらいのシャッタースピードは稼ぎたいのだが、そうなるとISO感度を上げざるをえなくなり、レンズの暗さに足を引っ張られる。
このレンズの悪いところを書こうとすればいくらでも出てきそうなのだが、超望遠でこの価格ということを踏まえると「じゃあ高くて重いレンズを使え」ということになる。あくまでこのレンズは機動性と焦点距離に全振りして、他のものは捨てているレンズなのだ。
ヤマガラやシジュウカラを捉える
手前の枝のせいで惜しい感じにはなっているが、ヤマガラのような小さい鳥もトリミングすればなんとかなる。正直換算800mmは必要な鳥だと思っていたので、600mmでも条件が良ければ撮れるというのは驚きだ。
シジュウカラもなんとか撮ることができた。
で、75-300は野鳥に使えるの?
ヤマガラやシジュウカラサイズの鳥を大きく写すなら正直換算1000mmは欲しいところだが、マイクロフォーサーズでもそのレベルとなると予算は青天井となる。具体的に言うとOM-D 150-400+テレコンがそれで、中古車が買えるレベルになる。
換算800mmで良いならパナの100-400という選択肢もあるが、10万円近くするので手軽には買いにくいし、1kg近くあるので気軽に持ち運ぶには重い。
そんなわけで、安くて持ち運びやすいという点を突き詰めるなら75-300での野鳥撮影はアリだと思う。軽いので日帰りの低山なんかにも持って行けそうだ。
ただ性能は価格なりで、手ブレ補正はないし開放F値も低いので写真の歩留まりはだいぶ悪くなる。ボケも綺麗ではない。しかし軽さは正義で、「撮影をメインにしないけど望遠は欲しい」みたいなシチュエーションでは最高のレンズになる。デーゲームの野球場なんかでも使えそうだ。
野鳥を撮ってみた感想
思った以上に野鳥を探すのは大変である。声がするから簡単に見つかると思いきやそうでもない。近くに来ても逆光だったり、位置的に顔が見えなかったりと、自然を相手にすることの手強さを感じる撮り物だった。
加えて、望遠レンズを扱うのも難しい。ファインダーを覗くと木々のどこを見ているか分からなくなるので、だからカメラ用のドットサイトがあるのだと納得した。不慣れだと枝に止まったところを肉眼で捉えてもカメラが追いつかない、そういうことが多く熟練の技が必要なのだな……と感じた。
とはいえ、大変だからこそきちんと撮れると気持ちが良い。またやりたいかというと、たぶんやらないだろうけど。