二十歳の頃

大好きな人がいた。わたしは留学した先のクラスで彼に会った。瞳が緑の東欧の人だった。クラスに入ってすぐ好きになったわけではなくクラスメイト15人ほどと毎日会う中でどんどん惹かれていった。
初めて親元を長期で離れた留学。自分一人で過ごす感覚は自分の輪郭をくっきりと見せてくれ、コミュニケーションが苦手とは思っていなかった自分を落ち込ませ、うまく自分を他国の人に表現できないもどかしさが辛かった。
一方自分より一回り以上年上のクラスメイトはいつも明るく思ったまま自分を表現していていつも羨ましかった。みんなの人気者だった。私は彼女のようになりたかった。これといって特徴の何もない自分が不安でいざという時に思い切れない自分が嫌だった。相談すると彼女は私に、あなたはまだ若いからこれからどんどん色んな人に出会って変わっていくよといつも励ましてくれた。彼に恋してることも相談したらいつも笑顔で応援してくれた。
いつもはやく彼女のような余裕のある女性になりたかった。憧れの女性が生まれて初めてできた。

彼は不真面目だった、勉強やクラスに対して。たびたび休むし、夜飲みに行って朝起きてこれないという理由らしかった。
今思えばそんな輩はやめとこうと思うけど、当時私はクラスに来ているときのおちゃめな眼差しや時折発言する真っ直ぐな物言いやもう何もかもが好きでどうにかクラスメイト以上に近づきたかった。話しかけて拙い言葉を並べても話が弾まず撃沈して寮に戻ってぐるぐるしていた。そんな関係が少し変わったのが学校主催のクリスマス会、私たちは丸テーブルの横に座れおしゃべりができた。会が終わるころにメリークリスマスと言われ頰にかすかにキスされた。あとに知ったけどほぼ私的な気持ちのない欧米の挨拶だった。ただ私はその日は眠れないほど興奮してその後1週間ほどそのことしか考えられないほど脳内で繰り返していた。新年も明け久しぶりに会え、休み時間に話す友達くらいになれたことに嬉しく感じつつ、更なるステップを登ることをいつも考えてた。
彼とスムーズに話したいから勉強も夜頑張って、会話パターンを妄想しながら励んだ。
先生の家に皆で行く日がありその日は更に彼のことが好きになった。先生の小さな娘さんにも優しくて、笑わせたり、彼女が泣いたりこぼしてもとても面倒見がよかった。授業にこなくても彼は人として優しいと思ってますます好きになった。その後の冬休みの間私は一旦帰国した。必ず戻ってきて彼との恋を叶えようと願いながら。実家で私は自分が着物を着た成人式の

写真をカラーコピーして手紙にそえて彼に送った。

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