バルーンさん「花瓶に触れた」歌詞解釈
歌詞が、小説みたいで好きなので、解釈してみたいと思う。
「深夜三時半を回って 空が傾き始めた頃 」
月が傾く、日が傾くとはよく言うが、空が傾くと言う表現は珍しく思える(私が不勉強かもしれない)。前者2つはそれぞれ夜の終わり、昼の終わりを意味するので、深夜において「空が傾く」とは、夜明けが近く、空が明るみ始めていることだろうか。3時半を回って空が明るくなりだすのは昼間の一番長い夏至付近である。つまり、季節は6月ごろだろう。
「落ちた玩具 足で転がした きっとゴミの日に消えるだろう」
ここは正直よく分からなかった。
「明日は大事な日にしたいから 家に帰り眠りにつくよ 」
ここで、語り手には帰る家があること、深夜3時半に家以外のところ(恐らく次に出る「君」の家?)にいることが分かる。
「君の頬に残る 恋の色 気付かないふりを続けてる」
語り手は「君」の好意に気づいているが、気づかないふりをし続けている。
「堂々巡りの会話 終わらない様に靴を履いて 」
堂々巡りとは、思考や議論が同じところをぐるぐるして進まないことだ。語り手と「君」は、何度も同じような会話をしている。語り手は、その会話が終わることがないよう、靴を履いて帰ろうとしている。
「曖昧な距離は今日だって ぼやけて変わらないし」
語り手は「君」との曖昧な距離に不満を持っているように見える。
「帰りたいと思った 君は手を握った
その振動は確かに 花瓶に触れた」
前述の状況から、語り手は 家に帰りたいと思ったと推測できる。「君」はそんな語り手の手を握る。一方的に相手の手を握るのは、引き留めたいときか、注目して話を聞いてほしいときだろう。「その振動」とは「君」が手を握ったことだと考えられる。行動を起こしたのは「君」であり、「その」とは相手のことを指す言葉だからだ。
「その振動」が「君」が手を握ったことだとすると、「花瓶」は握られた、つまり触れられた対象である語り手となる。振動が花瓶に伝わると、花瓶が落ちて割れることが連想できる。語り手は、壊れやすい繊細な自身の心を落ちたら割れてしまう花瓶になぞらえたのではないだろうか。
「笑えない話しは 出来ればしたくないんだ 」
手を握られた語り手は、「君」が話を聞いてほしがっていると悟り、それでも笑えない話しは出来ればしたくないと拒んでいる。
「いつも通りなら ここで」
「ここで」の後は聴き手の想像に任せているが、「曖昧な距離は〜変わらないし」からいつも通りならここではぐらかされたり冗談だなどと言われて関係が曖昧なままだったのではないかと考える。
「ドアを塞いで また隠し事 別にいいさ 知りたくもない 」
1番の歌詞では語り手は帰る家がある。かわって2番の歌詞で「君」は「ドアを塞いでまた隠し事」をしている。語り手に帰る家があるのなら語り手が帰ったあとに「隠し事」をするか、そもそも家に入れなければいいのに、わざわざドアを塞いでいるため、語り手と「君」は一緒に住んでいると推測できる。
「確かに塗り替えた 爪の色 気付かないふりを続けてる」
塗り替えた爪の色に気づくほど指先を見れるかつそれが気になる関係である。1番の歌詞で頬に残る恋の色に気付かないふりをし「君」を拒んでいた語り手とは逆に「君」へのあからさまな執着が見える。
「柳眉倒豎(りゅうびとうじゅ)の君に 焦らないように下を向いて
心配なのは今だって 言葉は途切れたまま」
「柳眉倒豎」とは、美しい女性が怒る様子のことだ。現在一般的に爪を塗るのは女性であることとこの言葉から、「君」は女性であると解釈できる。「言葉は途切れたまま」から、焦らないように話をしようと試みたが上手くいかなかったことが伺える。
「比べたいと思った 違(たが)いの想いを全部
その願望は間近に 浮かんで消えた
飾らないでそんな 酷く声は潤んで
わからないかなあ」
ここでも1番とは異なり「君」へのあからさまな執着が見える。つまり、語り手は相手の想いが自分の想いと同じか知りたいという感情がある。1番の後、語り手は「君」と恋人になったのではないだろうか。しかし、語り手に対して怒っている「君」は隠し事をし、爪を塗り替え、「飾らないで」と言われているように(語り手的には目に見えて)おめかしをしている。そんな「君」に対して語り手は自信をなくし、相手の想いを知るのを諦め、「飾らないで」と「声を潤ませて」つまり涙声で懇願している。「わからないかなあ」では、諦めつつも自分の想いをわかってほしいと思っている。
「ぽつり 今日が終わるようだ 同じようで 違う今日だ
こんな関係続けるのは 馬鹿馬鹿しい でも」
「ぽつり」は例えばひとり残されたときなどに使う。語り手はひとりだとも解釈できる。「今日が終わる」ということは真夜中近くだと推測できる。「同じようで〜今日だ」では真夜中近くひとりでいることが続いているが、語り手は今日はいつもと何かが違うと感じていると考えられる。語り手はつらい「君」との関係を続けるのは馬鹿馬鹿しいと思っている。「でも」の後は聴き手の解釈に任せているが、馬鹿馬鹿しい、つまり終わらせてもいいのに手放したくないのではないだろうか。
「伝えたい想いが言えずに時間が経った
また歯痒い温度が募るけれど
ただいまって言って 汚れた靴を見ないで
いつも通りなら」
「君」への想いが言えないまま時間が経ち、「歯痒い温度が募る」というのは今も「君」を想い続けている。ここで「ただいま」を言うのは「飾って」いて「ぽつり」と語り手を残していた「君」で、汚れた靴を見ないのは語り手ではないだろうか。
「帰りたいと思った 君は手を握った
その振動は確かに 花瓶に触れた
笑えない話しは 出来ればしたくないんだ
いつも通りなら ここで」
1番のサビと全く同じ歌詞だが、2番を経て最初とは少し意味が異なるように思う。2番の歌詞で語り手と「君」は一緒に住んでいると考えられるため、ここの「帰りたい」は物理的な家ではなさそうだ。また、語り手は2番で「君」を想っていることがわかるので、「君」からの好意が得られていた1番の歌詞の時期に帰りたいと思っているのではないだろうか。ここで「君」は1番と同じように手を握る。直後、「笑えない話は出来ればしたくない」と語り手は拒んでいる。ここでの「笑えない話」とは2番の歌詞を踏まえると別れ話ではないかと考えられる。1番と2番では状況が違うため、「いつも通りならここで」の後は帰ったあとのルーティーンがあったのではないだろうか。ラスサビでは「ここで」を3回繰り返し強調していることから、「いつも通り」が続くことを期待し願っていると推察できる。
「落ちた玩具〜消えるだろう」と「汚れた靴」についてはよくわからなかったので、何か考えがある方は教えてくださると嬉しいです。
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