【広島スタジアム問題】資料を読まない人のために、「中央公園の今後の活用に係る有識者会議」で議論されたことを解説するので読んで下さい
①はじめに
スタジアム関連の情報があまり表に出てこない夏でしたが、去る8月29日に「中央公園の今後の活用に係る有識者会議」というものが開催されました。
念のため中央公園とはどこを指し示すのかをご紹介しておきます(本会議で配付された資料を拝借しています)。この緑色のエリアのこと。
ご覧の通り、南は旧広島市民球場跡跡地、北東は広島城、そして北の中央公園広場はサッカースタジアム建設予定地となっている広大な公園です。
つまり、中央公園について議論するときはスタジアムの話も必ず含まれるということ。素晴らしいスタジアムを作るためには周辺施設との連携は必須ですし、将来的な建替構想も含めてきちんと知っておく必要があるでしょう。
というわけで今回は「中央公園の今後の活用に係る有識者会議」で議論されたこと、今後の会議で議論されるであろうことを解説します。
今回使う略称一覧
・「中央公園の今後の活用に係る有識者会議」⇒「本会議」
・「旧広島市民球場跡地委員会」⇒「跡地委員会」
・「サッカースタジアム検討協議会」⇒「スタジアム協議会」
・「旧広島市民球場跡地」⇒「跡地」
・「旧広島市民球場跡地の活用について(最終報告)⇒「最終報告」
・「基町・紙屋町エリア まちづくりビジョン[提言]」⇒「提言」
・「基町・紙屋町エリア まちづくりビジョン[別冊]」⇒「別冊」
---
②本会議において議論されたこと
本会議の議事録はまだ公開されていませんが、配付資料(資料6 会議の進め方(想定))を見る限りでは次の4段階で話が進められたようです。
(A)会議の設置目的の確認
(B)これまでの議論経過の確認
(C)基町・紙屋町エリア将来像研究会からの提言の紹介(後述します)
(D)意見交換
(A)の会議の目的は開催要項に記載されています。
第1条
中央公園の今後の活用について、有識者からの意見を幅広く聴くため、中央公園の今後の活用に係る有識者会議(以下「会議」という。)を開催する。
第2条
会議において、次に掲げる事項についての意見聴取及び情報交換を行う。
⑴ 中央公園の今後の活用に係る基本的な方針に関すること。
⑵ その他中央公園の活用に関すること。
まぁそうでしょうねという内容なので解説するまでもないので省略。
②これまでの議論経過(跡地委員会)
続いてこれまでの議論経過について。本会議で取り上げているのは、主に旧広島市民球場跡地委員会(2011年~2013年)の成果物とその後作成したイメージパース、そしてサッカースタジアム建設基本方針です。
余談(1)
松井市政(2011年~)は秋葉市政(1999年~2011年)を否定する形でスタートしました。
したがって、従来の中央公園に関する議論はごっそり白紙となっています。
ここで松井市政以後の議論しか登場しないのはそれが原因です。
余談(2)
松井市政において、上記以外にも中央公園に関する議論はありました。一例を挙げておきます。
・広島市都市計画マスタープラン
・旧広島市民球場跡地及び周辺地区のあり方庁内検討会議
・原爆ドーム及び平和記念公園周辺建築物等美観形成要綱
・サッカースタジアム検討協議会
これらの議論は前述の資料に取り込まれていると考えられたのかもしれません。
後者に関しては以前解説したので割愛させていただきます。
では、旧広島市民球場跡地委員会においてどのような議論がされたのか…というのを解説すると大変な量になるので端的に成果物をチェックすることでお茶を濁したいと思います。
その成果物を一つにまとめたのが上記画像です(資料4 旧市民球場跡地の活用の方向性)。このように広島市は旧広島市民球場跡地の活用方法は文化芸術機能+緑地広場機能であるとして検討をしてきました。
---
以下はもう少し詳しい話を聞きたいという人だけ読んでください。結論以外興味がなければ③新要素=基町・紙屋町まちづくりビジョンまで飛ばして。
---
跡地委員会は跡地の活用について議論する会議だったのですが、跡地だけ議論する前にまず中央公園の活用を考えないと意味がないということで作成されたのが「中央公園の今後の活用に係る検討状況(中間報告)」です。
余談(3)
旧広島市民球場跡地委員会はサッカースタジアム検討協議会と同くらい混迷していた。
例えば、委員会で議論しても収拾がつかないということで検討グループを作ったり。
検討グループには全委員が参加していないので委員会でそんな話は聞いてないとなったり。
欠席した委員が次回意見を提案するけどその議論は終わっててスルーされたり。
「議論が元に戻ってしまった」といった意見が出てきたり。
原因は色々あると思うが、最大の原因は22名もの委員を任命してしまったこと。
そして、それぞれが独自の公園感を持っていて、しかも妥協できる性質ではなかったことだと思う。
スポーツ機能を提案した岡野委員のように論理的な思考ができる人だけではなかったのも難しかった。
その中で提示された中央公園全体の活用イメージが下図。
このように、当時から中央公園広場の東側はスポーツゾーンとして考えられていたようです。この背景は復習できなかったので今度勉強しておきます。
次に登場するのが「旧広島市民球場跡地の活用について(最終報告)」。
意見が集約しきれなかったため4案6パターンのイメージが公開されました(最終報告P1)。すなわち、跡地にふさわしい機能とされたのは「文化芸術機能」、「スポーツ複合型機能」、「緑地広場機能」の3つ。
しかし、スポーツ複合型機能についてはサッカースタジアム検討協議会での「議論を経た上でなければその具体像を確定することが困難な状況にある」という理由(最終報告P2)で導入対象から除外。
以上の跡地委員会での議論を踏まえて広島市が作成したのが「旧市民球場跡地の空間づくりのイメージ(平成27年1月)」です。
跡地委員会でふさわしい機能とされた「スポーツ複合型機能」は上記理由でなかったこととした上で、文化芸術+緑地広場のイメージを固めました。
本来のスケジュールでは2015年に基本設計など行い、2019年から利用開始予定でしたが、スタジアム協議会において跡地が建設候補地の一つとされたことで事実上凍結。跡地活用の議論はここで止まっていました。
---
ここまでが少しだけ詳しい話。
---
③新要素=基町・紙屋町まちづくりビジョン
本会議において「基町・紙屋町まちづくりビジョン」という提言が新しく登場しました。これは基町・紙屋町エリア将来像研究会が作成したもの。では、基町・紙屋町エリア将来像研究会とはどんな組織かというと、次のメンバーで構成されているそうです。
・NTTアーバンソリューションズ㈱ …基町クレドの管理運営者
・㈱そごう・西武 …広島そごうの管理運営者
・㈱広島バスセンター …バスセンターの管理運営者
・大成建設㈱ …事務局
・日本郵政不動産㈱ …オブザーバー、メルパルクの管理運営者
このように、周辺商業施設の関係者が集まった団体だと言えるでしょう(大成建設が事務局として参画している理由は不明)。
彼らの主張は概ねこの1枚に集約されているようです。中央公園とその周辺が活性化することで自分たちにも利益があるからしっかり検討してねと。
紙屋町交差点の再整備はさておき、中央公園広場と南部を接続するペデストリアンデッキの整備なども提言しており(提言P8)、図も多くて分かりやすいので資料としては大変面白い内容です。
別冊にはこれまでの広島市の都市計画年表もあり、大変参考になる資料となっていますので暇なときに読んだ方がいいと思います。
④終わりに(今後のスケジュール)
以上のような資料を利用しながら本会議では議論を進めた模様です。実際にどういった意見交換をしたかについては議事録を待つ必要があります。議事録が公開されて面白そうな内容であればまた取り上げたいと思います。
さて、最後に当会議の今後のスケジュールをご紹介します。
第2回は11月末頃の開催が予定されており、議題は次の3つを予定。
(1)旧市民球場跡地の民間活力の導入可能性調査に関する状況報告、意見交換
(2)サッカースタジアム等の検討状況の確認
(3)中央公園の今後の活用に係る基本方針(素案)について意見交換
ここでサッカースタジアム当の検討状況が登場しますので、我々にとっても現在地を確認する意味では有益なのではないでしょうか。
また、第2回ですぐに素案が出てきている点も留意が必要です。有識者会議という体でやっていますが、2回目で基本方針の素案なんて作れるはずがありませんから、おそらくある程度原案が作成されているのでしょう。
これまでの議論を集約した上で、それ以降に出てきた新しい要素(主にサッカースタジアム)を加えつつ、問題点を整理するというような形になるのではないかと勝手に予想しています。
そして、第3回は年が明けて1月頃とされています。
(1)中央公園の今後の活用に係る基本方針(案)について意見交換
議題は上記1本ですからここで基本方針を概ね確定させて、年度末までに公表という運びになるのでしょう。
いずれにしても当会議は公開が原則とされていますからお時間の許す方は傍聴されてはいかがでしょうか。さすがにサッカースタジアム検討協議会や旧広島市民球場跡地委員会ほど酷いことはないとは思いますが、監視と関心は大事なことだと思いますから。
おわり。