サンフレッチェ広島 歴代外国籍選手列伝 全盛期・過渡期(2012年~2019年)編
前回の続き。
・黎明期 Jリーグ創設前の東洋工業時代(~1992年)
・創世記 Jリーグ参入。初のJ2降格まで(~2002年)
・成長期 小野監督・ペトロヴィッチ監督体制(~2011年)
・全盛期 森保監督体制(~2017年)
・過渡期 森保監督退任後、現在まで(~2019年)
今回は全盛期~過渡期を書いていきます。
※表記について
名前(国籍/所属期間/リーグ戦出場試合数/同ゴール数)という書き方。
ちなみに、J1とJ2は区分せず、合算していますので悪しからず。2019年シーズンの成績は加味していません。
※記入順について
加入年に書くスタイルでやっています。今回は記憶が多少定かなので前回よりちょっとだけ詳しく書きます。ちょっとだけよ。
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①2012年シーズン(J1リーグ優勝)
ペトロヴィッチ監督が退任し、クラブ生え抜きの森保一氏が監督に就任。前年の投資過多を反省して外国籍選手の獲得は韓国路線に変更されました。
DFファン・ソッコ(韓国/2012年~2014年/56試合3ゴール)
韓国ガチャ第一弾にしてその後の韓国路線に夢を見てしまった元凶。主戦場は右ストッパーだが、守備固めとして左WBに投入されるパターンも(特に初年度は)多め。スピードと高さに優れ、ミドルシュートもたまに決める(磐田戦が印象的)良い選手だったが、怪我が多く、塩谷司とかいうフィジカルにポイントを極振りした選手もいて出場機会は限られていた。
ロンドン五輪に滑り込み参戦し、運良く3位となって兵役を免除されたため価値が高騰(したんじゃないかな)。そこで高く売れれば良かったのに結局契約満了(おそらく移籍金0)で鹿島に出してしまう辺りが商売下手。広州恒大を経て今は清水で頑張っています。
MFイ・デホン(韓国/2012年~2013年/0試合0ゴール)
その名前から「伝説巨神」と呼ばれていたかどうかは定かではない。リーグ戦は1試合も出ていないが、2013年のACLでは1トップで出場し、そこそこのポストプレーを見せていた。
C契約ガチャでもある。ただし、C契約は3年間までしか認められず(4年目からはA契約ないしB契約に移行する必要あり)、外国籍選手はC契約でなくなったら3名枠の制限がかかるので3年以内に結果を出す必要がある。しかし、攻撃的なポジションには佐藤寿人、石原直樹、森崎浩司、高萩洋次郎と名だたる名手が揃っており、それは叶わず。長崎、栃木を経て帰国したそうだけど頑張ってるかなぁ。
②2013年シーズン(J1リーグ優勝、天皇杯準優勝)
初のリーグ優勝を果たし、翌年のACL出場が決定!したのだがクラブは減資をするなど財政緊縮が続いていたため韓国路線継続へ。
DFパク・ヒョンジン(韓国/2013年~2014年/21試合1ゴール)
大卒ガチャ第二弾。いきなり広島の名手・服部公太が長年付けていた17番を背負うなど開幕前から期待値マシマシ。実際に左足のキックは17番を継ぐに足るだけの実力を持ち合わせていた。記憶に残るプレーは2013年のアウェイFC東京戦。アディショナルタイムのラストプレーでゴール前のFKを綺麗に沈め、その年のJリーグ優勝に大きく貢献した。というかそのゴールが唯一か。
一方で左足クロス以外の武器が存在せず、当時の広島はWBが単騎突破してクロスを上げることが求められていたため、そういった強みのないヒョンジンが起用される機会は多くはなかった。その後、栃木、長崎、岡山を経て韓国に帰国したらしい。なお、岡山時代にはCKを直接決めてたりする。
MFキム・ジョンソク(韓国/2013年/0試合0ゴール)
ジョンソクの経歴は少し変わっていて、高校卒業後、1年ほど就職浪人をしており、入団時点で19歳。C契約の外国籍選手が3名枠制限を回避する要件は「プロC契約でかつ、当該登録年度の2月1日の前日における年齢が20歳未満の選手」と定められており、早生まれのジョンソク(誕生日が1/3)にとって、チャンスが1年しかないという厳しい条件があった。なんで獲ったの。
クラブは転売できたらいいなーと思って(テヘペロと捕らぬ狸の皮算用的な発言をしており、可哀想な扱いになってしまった。まぁ、就職浪人だったし、その後熊本、山口、刈谷と渡り歩くところまで世話してるので許して。刈谷退団後は韓国に帰っているようだが頑張ってるのだろうか。
③2014年シーズン(J1リーグ8位、ナビスコ準優勝)
まさかのリーグ連覇を果たしたものの財政再建計画は折り返し地点の3年目。というわけで若手を大量獲得した一方で韓国路線3年目となった。
DFビョン・ジュンボン(韓国/2014年~2015年/0試合0ゴール)
大卒ガチャ最終章。加入前の映像を見た時は塩谷のロングフィードと水本のクレバーな守備を兼ね備えた総合力の高いDFという印象だったが、天皇杯などの試合を見た限りではとにかく自信を失っていた。ミスしても良いという気持ちで堂々とプレーするって才能の一つなんでしょうね。その後、清水、金沢と渡り歩いて甲府で頑張っている模様。
④2015年シーズン(J1リーグ優勝)
石原直樹と高萩洋次郎という名手が一気に抜かれたことで前線に危機感を持ったサンフレッチェ。久しぶりの即戦力補強に動く。
FWドウグラス(ブラジル/2015年/33試合21ゴール)
鮮烈な印象を残して去って行った優勝請負人。花火みたい。それまで在籍していた京都、徳島ではパッとしない印象だったが、シャドーに抜擢されて覚醒。石原直樹が抜けて不足していた推進力を前面に押し出し、ゴールを量産。印象的なのはアウェイ甲府戦だけど映像は見当たらず残念。33試合で21ゴールをたたき出し、大久保嘉人の23ゴールに次いで2位となった。
ドウグラスについて語るなら、やはりトンベンセとの戦いについて触れざるを得ない。トンベンセは選手の保有権を一部持ってあっちこっちに選手を売り込み、転売で儲けているようなところ。ドウグラスもそこの所属で、しかも徳島が保有権の一部を買い取ってたからさぁ大変。お金のない広島は何とか値切って買い取ろうとするが、トンベンセも徳島も高く売りたくて仕方がないので、交渉は決裂。無念ながら中東へと売り飛ばされた。
話は大きく変わるが、ドウグラスといえばうどん。選手コラボメニューでもうどんを選択し、日本の食べ物で一番好きなのはうどんだと豪語するほど。これを聞きつけたらしい広島のローカルTV局が優勝特番でうどんを用意するというサプライズもあった(素うどんだった気がする)。現在は清水で頑張っているので、是非うどんを食べさせてあげて欲しい。
⑤2016年シーズン(J1リーグ6位)
久しぶりのリーグ制覇に沸いた広島。しかし、ドウグラスが抜けた穴は如何ともしがたく、積極的な補強を実行した。
MFキム・ボムヨン(韓国/2016年/2試合0ゴール)
久しぶりの韓国籍選手。山形で圧倒的な走力を見せる左SBとして活躍していたのを見てオファー。ミキッチがべた褒めしてた記憶もある。実際に運動量とヘディングは圧倒的だったが、それ以外の大半がポジションを奪うには不足しており、出場機会は限られた。ACL向けにフィジカル系を補強したかったのかしら。よくわかんない。
キャラクターは明るく、「キムボムヨン」で検索したら予測に「ダンス」が出るような選手。半年で清水にレンタル放出することになってしまい、なんか申し訳なかった。現在は韓国のクラブでプレーしているらしい。頑張れ。
FWピーター・ウタカ(ナイジェリア/2016年/33試合19ゴール)
元ナイジェリア代表。北京国安時代に広島とはACLで2度対戦している。それもあってか2016年にドウグラスの後釜として獲得。当初はシャドーで起用されていたが、次第にトップ起用されるようになった。常に全速力で走るタイプではないのでサボりがちと勘違いされそうだが、ピンチになりそうな穴を見つければ全力ダッシュでカバーしてくれる(ex.ACLホーム山東魯能戦)。走るべき時と走らなくていい時を見極められるクレバーな選手。
もちろんゴールゲッターとしても優秀で、33試合19ゴールを記録。レアンドロと並んで得点王となった(広島の選手としては2人目)。彼の真骨頂は柔らかいボールタッチと、誰もいないスペースを見つけてフリーでシュートを打つ嗅覚。スルーパスも芸術的で総合力の高さを見せつけた。
ウタカといえばおでん。選手コラボメニューでも当然のようにおでんを選択し、実に美味しそうに食べている。FC東京、デンマークのクラブ、徳島を経て現在は甲府で活躍中。近いし、久しぶりの静岡おでんを楽しんで欲しい。
FWアンデルソン・ロペス(ブラジル/2016年~2017年/39試合12ゴール)
浅野拓磨のアーセナル移籍を受けての緊急補強。主にシャドーで起用された。若くて(加入当時22歳)左足のシュートは強烈。出場時間当たりのゴール数も決して少なくはない…のだが、目立つ欠点があまりにも多く、降格危機に陥ったチームの状況もあって頭を抱えざるを得なかった。ただ、初出場の試合で嘔吐してしまったり、日本食と相性が悪く食事がまともにできないと嘆いたり、環境適応が上手くいかなかったのは同情しかないのだけど。
確かにゴールは決めるのだが、守備面の問題やボールの落下地点予測ができないこと、相手と味方の位置関係が分からなかったり、攻守に連動できないなど収支の合わないプレーが続いた。2017年終盤にヨンソン監督が突如1トップで起用。これによって守備面の問題をゴールから一番遠い位置に追いやり、ファールを誘うことでチームの助けとなるプレーができた。この英断で最終的に残留できたのだと確信してる。
残留争いにどっぷりつかったのは彼だけの問題ではないのだが、実はドウグラスに続くトンベンセ案件であり、前述の韓国ガチャで転売をもくろんでいたこともあってその起用に不審の目が向けられたのは致し方ないことだろう。現在は怪我をしているが、札幌でついに覚醒しそうでありペトロヴィッチ監督の手腕ってすげーとなっている。
⑥2017年シーズン(J1リーグ15位)
昨年後半の失速を反省して臨んだシーズンだったがまさかの大誤算。降格の危機に瀕し、監督も代わり、緊急補強も実施する羽目に陥った。
MFフェリペ・シウバ(ブラジル/2017年~2018年/25試合2ゴール)
OBウェズレイが太鼓判を押したMFで、浅野拓磨の移籍により空いた10番を背負った。突出したものはないが、ドリブル、シュート、パスと総合力は高く、おそらくチームが当初想定していた1トップ2シャドーが上手く機能していればもっと活躍できたのでは…と思うのだが、残念ながらチームは降格の危機に瀕し、ヨンソン監督が採用した4バックの左SH、トップ下では上手くハマらなかった。それでも終盤チームを救う活躍をしてくれたのだけど。
2018年シーズンも大半を4-4-2で戦うことになり、彼の個性とチーム事情がマッチしなかった。降格危機でチームの方向性ががらっと変わってしまった以上、仕方がないし結果を残せなかったので2年でさよならとなった。
FWパトリック(ブラジル/2017年~/48試合24ゴール)
ミスター重機関車。加入の話題が出た時に2014年のナビスコ杯(現在のルヴァン杯)でのトラウマを思い出した広島サポは少なくないはず。先制して中を固める広島に対して、パトリックに向けて大外から宇佐美貴史と遠藤保仁が放り込む形に耐えきれず悪夢の逆転負け。
そんなパトリックだが、2016年に十字靱帯を損傷する大怪我をしたため2017年の夏にガンバ大阪を退団。降格の危機に瀕していた広島が争奪戦を制して獲得に成功。膝の痛みを抱えながらのプレーだったものの、残留に大きく貢献した。2018年は「パトリック依存症」と揶揄されるほどの活躍(33試合20ゴール)をするなどチームの支柱となった。
今年は始動が遅れたこともあってレギュラーの座を確保できていないものの、本来の特徴である相手DFをなぎ倒すパワフルなドリブルや、打点の高すぎるヘディングからのゴールを見せてもらいたい。
FWネイサン・バーンズ(オーストラリア/2017年/0試合0ゴール)
元オーストラリア代表で、FC東京などで活躍したFW。パトリックと同じく降格のピンチを打開すべく獲得したものの1試合も使わないまま終わってしまった。練習を見た限りではそもそもサイドハーフのプレーは苦手そうで、なんで獲得したのだ…状態になっていた。すまんかった。
⑦2018年シーズン(J1リーグ2位)
辛くも残留を勝ち取った昨年。城福監督を招聘して現実路線にシフトし、FWへのテコ入れを行った。
FWティーラシン(タイ/2018年/32試合6ゴール)
タイの英雄。アジア戦略の一環として獲得した面もあったのだろうけど、英雄というのは伊達ではなかった。開幕戦でいきなりゴールを決めると、パトリックの相方としてコンスタントに試合に出場。フリーになるのがとても上手く、ストライカーらしいゴールも決めてくれた。
残念ながら派遣元のムアントンさんが色よい返事をしてくれなかったため慰留に失敗。1年で広島を去ることになった。しかし、彼の活躍によってエディオンスタジアムでもタイの国旗を振る集団が訪れ、タイの官公庁がブース出店するなど新しい可能性を見せてくれた。サンキュームイ!
FWベサルト・ベリーシャ(コソボ/2018年~/6試合0ゴール)
ブリスベンでは69試合44ゴール、メルボルンでは102試合62ゴールと訳分からんことをやっている実績ある選手。余談だが、アルバニアとコソボの国籍を持つ元アルバニア代表FWだったが、コソボがUEFA・FIFA加入できたことでコソボ代表を選択し、代表デビューもしている。ドラえもーん!パトリック依存症をどうにかしたいよ-!と嘆いたら強化部が夏場に完全で獲得してきてくれた。現在のところ第二のバーンズ案件となっている。
セカンドトップっぽい役回りをしているが、たぶん純粋にストライカーやらせた方がいいと思う。ただ、パトリック中心の2018年はそうはい神崎だったし、今年は1トップ2シャドーになったので、個性とチーム戦術の不一致が起きてしまっていて申し訳ない。オーストラリア時代は結構荒れてたらしいが広島ではそんなことはなくて安心してる。鎧姿になっててびっくりした。
⑧2019年シーズン(J1リーグ??位)
昨年後半は記録的な大失速。フォーメーションも1-3-6-1に回帰したため右WBの補強は最優先事項。ティーラシンの抜けたFWと合わせて久しぶりの大補強となった。
DFエミル・サロモンソン(スウェーデン/2019年~/??)
元スウェーデン代表。ヤン・ヨンソン、フォンデルブルグ以来となる3人目のスウェーデン国籍。ヨンソン監督が獲得を熱望した選手らしく、彼が清水の監督に就任したタイミングで引っ張ってくるのはなんかごめんね?しかもその清水相手にゴラッソ決めるんだから持ってる男である。
右WBが主戦場なのでミキッチと比較されがち。スピードではミキッチに軍配が上がるだろうが(エミルは自分へのスルーパスとかはしない)、エミルはなんかごり押しで突破してしまう。上下動も厭わない献身さも持ち合わせているし、身長があるので安定感のあるワイドとなっている。現在は負傷離脱中なので早く治して帰ってきて欲しい。
FWドウグラス・ヴィエイラ(ブラジル/2019年~/??)
パトリックがいないと大変なことになるからバックアップを見繕って!ということで東京ヴェルディから強奪した長身FW。たぶんみんな想定外だったと思うのだけど、1トップにドハマりした。ヘディングが大変上手く、アバウトなロングボールを的確に味方に落とせる。足下も巧みでなんか謎のキープ力を披露。かといって持ちすぎることもなく、守備もちゃんとやってくれる。なんだこのハイスペックFW。
ちょいちょい気になるのはさりげなくダーティーなプレーをすることが多いこと。ただ、あんまりカードとか貰わないから(ヴェルディ時代も有給0)やり方が上手いのだと思う。湘南戦の2点目なんかも微妙なラインをついている。ストヤノフ以来のマリーシアが上手い選手と私の中で話題に。あと、佐々木翔と同じくらい顔の横幅が細いのでササショー2号と勝手に呼んでる(流行ってはいない)。
MFハイネル(ブラジル/2019年~/??)
3月に遅れてやってきたブラジリアン。遅れた理由はなんか契約でごたごたしたから。契約に時間がかかった割には体が作れてなかったがどういうことだ。え?トンベンセからレンタル移籍?またあいつらかよ…。
今のところ右WBとシャドーで起用されているが、いずれも狂犬といって差し支えない暴走っぷりを見せている。これでボランチでプレーしてたという説明があったからびっくりである。本気と書いてマジ?ただ、強化部長が事前に説明していた「浅野拓磨並のスピード」は湘南戦でお披露目できたのではないか。あいにくその湘南戦で負傷交代してしまったので心配だが、攻撃の選択肢になるといいな。
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というわけでサンフレッチェ広島の歴代外国籍選手列伝は以上です!黎明期と創世期は誰かお願いします!前回はこっち。